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「廃業するまで徹底的にやる」「死ねクソボケ」──。

SNSで同業者から攻撃を受けて、売り上げも信用も失った。相手を特定して責任を問いたい。だが、弁護士に依頼すれば費用がかかる。

そんな状況で、発信者情報開示の手続きから損害賠償請求の裁判まで、すべて自分一人でやり遂げた男性がいる。

頼ったのは、インターネットで公開されている弁護士の解説などだった。途中、相手の勤務先を訴えて敗訴するという思わぬ展開もあったが、結果的に実費約5万円で「30万円」の賠償を勝ち取った。

それでも、男性は「失った売り上げや信頼がすぐに戻るわけではありません」と話す。

●「廃業するまで徹底的にやる」同業者からの攻撃

「売り上げが一気に減ってしまいました。相手は業界の中で影響力のある人だったので、お客さんも『この人と関わると面倒だ』『自分も何か言われるんじゃないか』って離れてしまったのだと思います」

中国茶を販売している一般社団法人「エンシェント・ティー」代表の宇津野仁史さん(34)は、そう振り返る。

相手がXで宇津野さんにからみ始めてきたのは、2024年の年明けごろだった。

「最初は『こいつはお茶の味をよくわかっていない』という程度の書き込みでしたが、だんだん過激になってきて、『廃業するまで徹底的にやる』『死ねクソボケ』などと言われるようになりました。

誤解されているかもしれないと思って、私のほうから相手を認めるような投稿をしたこともありましたが、全然ダメで、そのあたりから『これは許せない』と思い始めました」

●法的手続きへの「苦手意識」がなかった理由

店の信用に直結する事態だったが、宇津野さんは弁護士に依頼はせず、自ら相手を突き止めることにした。

背景には、過去の経験があった。

以前、友人に貸したお金を返してもらえず、差し押さえなどの法的手続きを自分で進めたことがあったという。

もともと幼い頃から読書が好きで、文書の読み書きが得意だった。こうした経験もあり、弁護士をつけずに裁判を闘う「本人訴訟」に挑むことにした。

弁護士のHPを頼りに「裁判資料」を作成

頼りにしたのは、インターネット上の情報だった。特に、ネットトラブルに詳しい神田知宏弁護士が発信する解説を重宝したという。

神田弁護士のサイトでは、ネット上で誹謗中傷を受けた際の削除請求や発信者情報開示請求、慰謝料請求など、法的措置の進め方が一般の人にもわかりやすく解説されている。

宇津野さんは、こうした情報を参考に訴状などを作成し、一つひとつ手続きを進めていった。

●開示された住所は相手の職場…予期せぬ敗訴

しかし、手続きは順調に進んだわけではない。思わぬ壁にもぶつかった。

発信者情報開示の手続きを進め、開示されたIPアドレスから接続先をたどったところ、出てきたのは個人の住所ではなく、法人の住所だった。

宇津野さんによると、相手は職場から貸与されていた業務用のSIMカードを使って、Xに書き込んでいたことが判明したという。

そこで、ひとまず法人を相手に裁判を起こした。しかし、法人側から「従業員が勝手にやったことだ」と反論され、宇津野さんは敗訴した。

●実費5万円で勝ち取った「30万円」と教訓

それでも宇津野さんは諦めなかった。

今度は本人を被告として、200万円の損害賠償を求めて提訴した。

東京地裁は2026年6月、被告の投稿が「原告の社会的評価を低下させるもので、名誉毀損に当たる」と認定。被告に対して、慰謝料など30万円と遅延損害金を支払うよう命じた。

開示請求に動き出してから約1年半。印紙代などにかかった実費は約5万円だったという。

弁護士に依頼せず、自らの手で賠償判決を勝ち取った。それでも、宇津野さんに笑顔はない。

裁判で勝ったことで、誹謗中傷をやめさせる効果はあったと思います。ですが、失った売り上げや信頼がすぐに戻るわけではありません」

最後に宇津野さんがうったえたのは、SNSを使ううえでごく当たり前といえることだった。

「匿名だからといって、自分が言われて嫌なことは書き込むべきではないんです。当たり前のことですが、自分が嫌だと思うことを相手にしない。それをネット上でも守ってほしい。

でないと、誰かの人生を終わらせてしまうこともあります。たった一言で、数十万円払うことになるかもしれない。そういったことをちゃんと考えたうえで、投稿してほしいと思います」

*この記事は読者からの情報提供をもとに取材・作成しました