【浜田 敬子】特養は満室…要介護3の父「月40万円の入院費」の請求書に絶句して始まった「施設探し」
家事育児に仕事に忙しくしている働き盛りの人が、両親がほぼ同時に体調を崩し、突然介護をすることになったら--。
1年の間に両親がふたりとも入院し、突然そういう状況に直面したのが、ジャーナリストの浜田敬子さんだ。あっという間に父は「要介護3」に、そして父が倒れたときに地域包括支援センターに連絡し、てきぱきと手配をしていた母にも変化が現れ、最初は「要支援」すぐに「要介護」となった。
内閣府が発表した「令和7年版高齢社会白書(全体版)」によると、日本の65歳以上の認知症高齢者は、2022年時点で443.2万人(有病率12.3%)と推計され、2040年には584.2万人(同14.9%)へ増加する見込みだという。少子高齢化により高齢者そのものの人口が増えるのだから、「介護」は誰にとっても身近なものとなる。しかし介護には先立つものも大切だ。介護離職をせずに介護と向き合うにはどうしたらいいのか。
浜田さんがそんな両親の体調の変化に気づいたのは、2026年現在大学生となったお子さんがまだ高校生のときだった。浜田さんの実体験とともにどのようにすればいいのかを探る連載「働き盛りの介護と罪悪感」第1回では、20年近く前になる新聞社時代にご両親に育児のサポートを受けた話から、父親が熱中症で倒れ、その介護がはじまった母も倒れたことを伝えた。
第2回は、介護環境が大きく動いた2025年秋のこと。父が要介護3に認定され、サポートも得るようになった中で、トイレに行けないことが大きな影響を与えたことを綴った。気丈だった母も要支援2と認定されていた。
第3回では自立して家事もしていた母の認知機能の衰えが明らかになったことを伝えた。母は必要な量以上の宅食や買い物にお金を使っていて、通帳に残っていた金額は想像した以上に心許なかった。
第4回は浜田さんが見た「施設入居」の入り口を伝える。
父の入院で月40万円の請求
昨年秋に怒涛のダブル介護状態に陥った我が家。自力でトイレに行けなくなった父を緊急避難的に入院させ、その間に介護体制を整えることになった。体力的にも引き続き母に在宅で父の介護を任せることはもう限界を超えていた。そしてその母も急速に認知機能が衰えていたことを前回までに書いた。
父は11月末に近所の病院に一時避難的に入院させてもらえたが、その時、あまり人付き合いが得意ではない父は個室の方が良いだろうと個室を選択した。だが12月末までの1カ月の入院費用を見て、私と弟は黙り込んでしまった。請求書の額は40万円を超えていたのだ。ここには検査代やリハビリ代、食事代なども含まれている。
あまりに高いので高額療養費制度が使えないかと思ってChatGPTに相談したりしたが、すでに適用されていた。大きな額は差額室料だったのだ。とにかく慌てて父が入れるところを、と探したので、こんなに長い期間入院させることになるとは思っておらず個室のままにしていたのだ。このペースでの支出が続けば両親の貯金はあっという間に無くなってしまう……。すぐに個室から2人部屋に移してもらった。
金銭的な事情だけではない。当たり前だが病院にいれば、「入院患者」として扱われる。父はトイレに自力で行けないだけでどこかが悪いわけでもない。病院では1日1回のリハビリの機会は設けてもらったが、あとは寝ているだけ。食事も1人で病院食を食べる。時々様子を見に行くと、日に日に父の表情が乏しくなっていくことが気がかりだった。そして訪ねるたびに、いつ家に帰れるのか、早く帰りたいと泣かれるのもつらかった。病院側が悪いわけではない。病気を治療する場所で、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を売り物にする施設とはそもそも目的が違うのだから。
施設をどう選んだらいいのか
そうした様々な事情もあり、早く施設に移さなければ、という気持ちばかりが焦った。とはいえ、いざとなったら施設をどう選んだらいいのか。私が以前働いていた出版社では「高齢者施設の選び方」をテーマにしたムック本なども出していたが、10年前、正直私は全く関心を持っていなかった。完全に他人事だったのだ。そしていざ自分ごとになった時に、いったいどうやって探したらいいのか、見当もつかなかった。
一言で高齢者施設と言っても、その種類は多岐にわたり、要介護状態などによって入れる施設は変わってくる。私の父のように要介護認定3の高齢者が入居する施設としては、一般的なのが特養と呼ばれる特別養護老人ホームと民間企業が運営する有料老人ホームだ。
特養は原則要介護認定3以上で自宅での生活が難しい人が、食事や入浴、排泄などの介護も受けながら長期間暮らせる施設だ。社会福祉法人などが運営主体となっていることが多く、有料老人ホームよりも費用は格段に安い。私はケアマネさんとも相談して世田谷区の特養、希望する施設3つに申込書を出した。しかし、聞いてはいたが、世田谷区は激戦で、到底すぐに入ることはできない。申し込んでから半年以上経った今も、入れるという連絡はまだない。
となると、現実的なのは民間の有料老人ホームだった。最初はいくつか知っている企業に問い合わせをして資料を請求して、と思っていたが、そんな時間はなかった。とにかくすぐにでも父が入れるところを探さなくては。私が頼ったのは友人が経営している会社、チェンジウェーブグループだった。通常は企業向けに従業員への福利厚生サービスとして、働きながら親の介護をする両立支援サービスを提供している。その時点では個人向けサービスはなかったが、今後個人向けも展開していく予定とのことで、テスト的に利用させてくれることになった。
「いい施設」とは何か
私は以前サービスが立ち上がったばかりの頃、モニターとして親の介護についてオンライン相談を体験させてもらっていた。介護福祉士などの資格を持ったプロフェッショナルな相談員たちに話を聞いてもらえるだけでも安心した。当時はまだ父親が熱中症で倒れて自宅から出られなくなり在宅介護が始まったばかりで、これからどういうことが起きるのか、私がやるべきことは何かということを相談、ケアマネと会ったときに相談すべきことなどを指南してもらった。
介護に直面して困ることは、親によって、家族によって事情が違う、ということである。ある人にとっては「いい施設」だったとしても、親の要介護度や経済事情などが違えば選択肢には入らない。施設選びをしていた当初、何人かの友人にどうやって施設を選んだのかを聞いてみて、早々にそのことを悟った。であれば、多くのケースを見ているプロに相談した方が良い。
友人に相談したところ、すぐに改めて相談員とのオンラインミーティングをセットしてくれた。12月半ばになっていたと思う。ミーティングには私だけでなく弟にも参加してもらった。介護などケアはどうしても女性に偏りがちになるが、父と母のダブル介護を考えると先は長い。私だけが背負ってしまうと、早晩仕事との両立に行き詰まることは目に見えた。弟にも同じように関わってもらうためには最初が肝心だと思った。
◇後編「月額10万円以上の差に諦め…要介護3の父の「施設捜し」で思い知らされたこと」では、実際に見学にいって施設を決めるまでに感じたことを伝えます。
