「逆らえばスタンガン」「排泄はビニール袋」《新潟・少女監禁事件》なぜ同居する母親は“息子の異常行動”を止めなかったのか(平成12年の事件)
〈新潟県の民家から「9年間行方不明だった少女」が発見…《父親とは63歳差》引きこもり男性(37)を“誘拐犯”に変えた「特殊な家庭環境」(平成12年の事件)〉から続く
2000年、9年2カ月にわたり少女を自宅に監禁していた佐藤宣行。高齢の父と甘やかす母のもとで我がまま放題に育ち、会社を退職後に「怪物」へと変貌していった男は、9歳の少女を誘拐し、自宅2階のベッドの上に縛り付けた。
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少女が反抗すれば殴りつけ、ときにはスタンガンで服従させることも。同居していた母親は、なぜ長年の監禁劇に気づかなかったのか? 現地を取材した著者が目撃した、歪んだ母子関係と「監禁部屋」の残酷な実態とは……。
ノンフィクション作家の八木澤高明氏の文庫新刊『殺め家』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目)

写真はイメージ ©getty
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自宅2階に少女を監禁
彼が28歳の時、母親が買い与えることができないものを手に入れようと犯行に走った。
佐藤が目をつけたのは幼い少女だった。
1990年11月13日、長岡市内の田園地帯で下校途中の少女(当時9歳)を見つけ、ナイフを突き出し、脅し、車のトランクへ入れて、自宅へと連れ去ったのだった。
自宅の2階の部屋に少女を監禁し、セミダブルのベッドから動くことを許さず、少女が自分の命令に従わないものなら、殴りつけ、時にはスタンガンを当てるなどして、少女を完全に服従させたのだった。彼女はベッドの上で食事を取り、排泄も佐藤が用意したビニール袋にすることを強いられた。
佐藤と一緒に暮らしていた母親は、一般的な感覚として、少女の存在に気がついていたと考えるのが普通だろう。私は一つ屋根の下、少女と暮らしていた彼女に話を聞いてみたかった。
なぜ母親は「少女の監禁」に気づけなかったのか?
佐藤の母親と接触できたのは、事件が発生してから、数カ月が過ぎた頃のことだった。
家の前で張り込みを続けていると、近所の人の目につかない早朝4時に彼女は家の近くにあるコンビニに出かけた。
息子が犯罪者として逮捕され、心細さもあったのだろうか、コンビニを出てきたところで話しかけてみると、意外なことに家に招いてくれたのだった。
私が接触した当時、呼吸不全のため彼女は酸素吸入器が手放せない状況で、鼻からチューブが伸びていた。その姿を見て、息子が犯罪者となったのは、彼女にも責任の一端はあったが、憐憫の情を覚えずにはいられなかった。
それにしても、なぜ少女が2階にいることに気がつかなかったのか。
「宣行は、ずっと前から2階に上がるのを嫌がってね。だから私は10年以上、上がったこともなかったのよ」
普段顔を合わすことはなかったのだろうか?
「そうだね。食事は階段のところに置いといたのを宣行が取りに来て、お風呂は月に一回ぐらい入っていたかな」
「トイレはどうしていたんですか?」
「汚いといって、下のトイレは使わなかったね。2階にはトイレがないから、ビニール袋で用を足していたみたいだね」
彼女の発言から窺えるのは、佐藤の異様な生活ぶりであった。
監禁部屋に足を踏み入れると…
彼女の案内で、少女が監禁されていた2階に上がった。
母親は10年以上にわたって2階に足を踏み入れたことはなく、事件発覚後に久しぶりに足を踏み入れたのだった。
階段を上がると、廊下の床の表面が剥げているのが見えた。排泄物が入ったビニール袋が置かれていたため、腐ってしまったのだ。
「あの子には可哀想なことをしたねぇ」
ドアを開けると、天井に吊るされたシャンデリアとセミダブルのベッドが目に入ってきた。ベッドのまわりの底板も剥がれている。
被害者の少女はこのセミダブルのベッドの上だけで、いびつな生活を送り続けていた。
ベッドの傍には、ブラウン管のテレビが置かれ、棚にはベータビデオで録画された歌番組などが日付ごとに整理されていた。
佐藤は世間と隔絶された部屋に己の世界を作り上げていた。
この部屋を見て、母親はどんな印象を持ったのだろうか。
「あの子には可哀想なことをしたねぇ」
彼女はどこか他人事のように呟いたのだった。
もう少し、母親が毅然とした態度を息子に対して取っていれば、事件は防ぐことができただろう。
その後、犯人は…
2003年7月、懲役14年の実刑判決が確定し、事件発覚から10年ほどが過ぎて、母親は亡くなった。
その佐藤も刑期を終え、出所したものの、しばらくして亡くなった。
事件の起きた家は未だに取り壊されることなく、彼の地に建っている。
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「佐藤のお父さんはお爺さんみたいだ」ーー加害者男性と父親の「特殊な」関係とは……。【関連記事】新潟県の民家から「9年間行方不明だった少女」が発見…《父親とは63歳差》引きこもり男性(37)を“誘拐犯”に変えた「特殊な家庭環境」(平成12年の事件)へ続く
(八木澤 高明,高木 瑞穂/Webオリジナル(外部転載))
