白内障で色の見え方はどう変わる?手術後の変化も解説
白内障は、目の中でレンズの役割をする水晶体が濁る病気です。進行すると視界がかすむだけでなく、色がくすんで見える、白いものが黄色っぽく見えるなど、色の見え方にも変化が生じます。
しかし、白内障はゆっくり進行するため、本人が色の変化に気付かないことも少なくありません。白内障手術を受けた後、周囲の色が急に鮮やかになり、手術前との違いを初めて実感する方もいます。
この記事は、白内障によって色の見え方が変わる理由や受診の目安、治療方法、手術後に生じる色の変化を解説します。
監修医師:
栗原 大智(医師)
2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
白内障による色の見え方の変化とは

白内障が進行すると、色が黄色っぽく見えたり、全体的にくすんで見えたりすることがあります。色の区別が難しくなり、日常生活に影響する場合もあります。ここでは、白内障による色の見え方と、そのほかの症状を解説します。
色が黄色っぽく見えることがある
白内障では、水晶体が濁るだけでなく、黄色や茶色に変化することがあります。そのため、目に入る光のうち青色系の光が通りにくくなり、白い壁や衣服などが黄色みを帯びて見える場合があります。
また、青色と紫色、黒色と紺色など、似た色の違いを見分けにくくなることもあります。色が全体的に暗く、鮮やかさを失ったように感じる方もいます。料理の焼き加減や化粧の色、衣服の組み合わせなど、日常生活に影響する場合もあるでしょう。
ただし、白内障は左右の目で同じように進行するとは限りません。片目ずつ確認すると、片方の目だけ黄色く見える、色の鮮やかさが異なると気付くことがあります。見え方に左右差がある場合は、片目ずつ物を見て確認することも大切です。
色の見え方以外に現れる症状
白内障の代表的な症状は、視界のかすみや視力低下です。霧やすりガラスを通しているように見え、メガネの度数を変更しても十分に見えにくさが改善しないことがあります。
水晶体の濁りによって光が目の中で散乱すると、屋外や夜間に強いまぶしさを感じたり、照明や車のヘッドライトの周囲に光の輪が見えたりすることもあります。暗い場所では見えにくい一方、明るい場所でもまぶしさのために見えづらくなる場合があります。
ほかにも、片目で見ても物が二重や三重に見える単眼性複視や、近視の進行、メガネの度数が頻繁に変わるなどの症状がみられます。白内障は通常、痛みや充血を伴わず、ゆっくり進行することが特徴です。
白内障で色の見え方が変わる理由

白内障による色の変化には、水晶体の濁りと加齢による黄変が関係しています。特に青色系の光が網膜まで届きにくくなることで、色のバランスが変化します。ここでは、色の見え方が変化する仕組みを解説します。
水晶体の濁りによって光が通りにくくなる
水晶体は、角膜から入った光を屈折させ、網膜にピントを合わせる透明な組織です。白内障では、水晶体を構成するたんぱく質などが変化して濁りが生じ、光が通りにくくなります。
濁った水晶体を光が通過すると、光の一部が吸収されたり、目の中で散乱したりします。その結果、網膜に届く光の量が減り、色が暗く、くすんで見えるようになります。色の違いを見分けるために必要なコントラストも低下するため、似た色の区別が難しくなる場合があります。
白内障の濁り方や位置には個人差があります。水晶体の中央部が濁る核白内障や、後方に濁りが生じる後嚢下白内障など、白内障の種類によって、かすみやまぶしさ、色の見えにくさの程度も異なります。
加齢によって水晶体が黄色く変化する
透明な水晶体も、年齢とともに徐々に黄色みを帯びていきます。加齢性白内障が進行すると、水晶体の中心部分が黄色から褐色へ変化し、特に青色系の短い波長の光が通りにくくなります。
青色の光が網膜へ届きにくくなると、白色がクリーム色や黄色に見えたり、青や紫が暗く見えたりすることがあります。水晶体の黄変が強い場合は、視界全体に黄色や茶色のフィルターをかけたような見え方になることもあります。
このような変化は、単に視力検査の数値が低下するだけでは評価しにくいものです。視力が保たれていても、色の鮮やかさやコントラスト、暗い場所での見え方が低下し、生活上の不便を感じる場合があります。
色の見え方の変化に気付きにくい理由
白内障は、一般的に数年かけてゆっくり進行します。急に視界の色が変わるわけではないため、脳が徐々に変化した見え方へ適応し、本人が異常に気付きにくくなります。
また、多くの場合は両目の白内障が同時期に進行します。左右の目でほぼ同じように色が変化すると、比較する対象がなくなるため、黄色みや鮮やかさの低下を自覚しにくくなります。家族から、照明を以前より明るくするようになった、服の色を間違えるようになったと指摘されて気付く場合もあります。
片目の手術を先に受けると、手術した目では白や青が明るく見え、手術前の目では黄色く暗く見えることがあります。この左右差によって、それまで気付かなかった色の変化を初めて認識する方も少なくありません。
白内障による色の見え方が気になるときの受診サイン

色の見え方の変化は、白内障以外の目の病気でも生じます。急な変化や左右差がある場合は、網膜や視神経の病気が隠れている可能性もあります。ここでは、眼科を受診した方がよい症状と、検査で確認する内容を解説します。
色の見え方や視界に変化を感じたとき
白い物が黄色っぽく見える、色が以前よりくすんで見える、青と紫などを区別しにくいと感じた場合は、眼科で検査を受けましょう。視界のかすみやまぶしさ、夜間の見えにくさを伴う場合は、白内障が進行している可能性があります。
ただし、片目だけで急に色が薄く見える、赤色が暗く感じるなどの変化は、視神経や網膜の病気でも起こります。視力低下や視野の欠け、目を動かしたときの痛みを伴う場合は、白内障と決めつけず、早めの受診が必要です。
また、物がゆがむ、見ようとする中心部分が暗い、片目だけ像の大きさが違うといった症状は、加齢黄斑変性や黄斑上膜などでもみられます。急に現れた症状や左右差が強い場合は、放置しないようにしましょう。
眼科での検査でわかること
眼科では、まず視力検査や屈折検査を行い、メガネでどの程度まで視力を矯正できるかを確認します。細隙灯顕微鏡検査では、水晶体の濁りの位置や程度、白内障の種類などを詳しく観察します。
眼圧検査や眼底検査も行い、緑内障、黄斑疾患、糖尿病網膜症など、見え方に影響するほかの病気がないかを確認します。必要に応じて、網膜の断層像を撮影する光干渉断層計検査や、コントラスト感度、色覚に関する検査を行うこともあります。
白内障の濁りがあっても、見えにくさの主な原因が網膜や視神経にある場合は、白内障手術だけでは十分な改善が得られません。手術を検討する際は、白内障の程度だけでなく、目全体の状態を確認することが重要です。
白内障による色の見え方を治療する方法

白内障の治療方針は、濁りの程度だけではなく、生活への影響をもとに判断します。色の見分けにくさやまぶしさが仕事や運転に影響する場合は、手術を検討することがあります。ここでは、初期の対応と手術を検討する目安について解説します。
初期は経過観察や点眼治療を行う
白内障があっても、視力や色の見え方への影響が軽く、日常生活に支障がなければ、定期的な検査を受けながら経過をみることがあります。メガネの度数を調整することで、見えにくさを補える場合もあります。
初期の白内障は、進行を抑える目的で点眼薬が処方されることがあります。ただし、点眼薬によって一度濁った水晶体を透明に戻したり、黄色く変化した見え方をもとに戻したりすることはできません。点眼を続けていても、白内障が徐々に進行する場合があります。
経過観察中は、視力だけでなく、まぶしさや色の区別、夜間運転、読書などへの影響も確認します。見え方の変化を自覚した場合は、次回の定期検査を待たずに受診してもよいでしょう。
日常生活に支障がある場合は手術を検討する
白内障によって運転や仕事、読書、料理などに支障が生じた場合は、手術を検討します。視力検査の数値が良好でも、強いまぶしさやコントラストの低下、色の見分けにくさが生活へ影響していれば、手術の対象となる場合があります。
白内障手術では、濁った水晶体を超音波などで細かく砕いて取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入します。濁りと黄変した水晶体を取り除くことで、かすみやまぶしさだけでなく、色の見え方の改善も期待できます。
手術の時期は、年齢だけで決めるものではありません。本人が感じている不便の程度、仕事や運転の必要性、反対側の目の状態、全身の病気などを踏まえて判断します。
白内障の手術後の色の見え方

白内障手術後は、手術前より色が明るく鮮やかに見えることがあります。一方で、手術直後は青みやまぶしさを強く感じ、見え方に違和感が生じる場合もあります。ここでは、手術後の色の変化と慣れるまでの経過について解説します。
手術後は色が鮮やかに見えることがある
白内障手術では、黄色や茶色に濁った水晶体を取り除き、透明な眼内レンズを挿入します。水晶体によって遮られていた光が網膜へ届きやすくなるため、色が明るく鮮やかに見えるようになることがあります。
白い壁や衣類が以前より白く見え、青空や植物の緑が鮮明になったと感じる方もいます。一方、照明やテレビの画面が必要以上に明るく感じたり、色が強過ぎるように感じたりする場合もあります。
片目ずつ手術を行う場合は、手術を受けた目と受けていない目で色の見え方に大きな差が生じることがあります。手術した目では白や青が明るく見え、反対側では黄色や茶色がかったように見えるのが代表的です。
青く感じる青視症
白内障手術後、一時的に周囲が青みがかって見えることがあります。この状態は青視症と呼ばれます。白内障によって黄色く変化した水晶体が青色系の光を遮っていたところに、透明な眼内レンズが入ることが主な理由です。
手術後は、手術前より多くの青色光が網膜へ届くため、白い物が青白く見えたり、照明が青みを帯びて感じられたりします。特に、片目だけ手術を受けた時期には、左右の色の差が目立ちやすくなります。
多くの場合、目や脳が新しい色の見え方へ順応するにつれて、青みは徐々に気にならなくなります。ただし、急激な視力低下、視野の異常、強い眼痛などを伴う場合は、通常の青視症とは限らないため、早めに眼科へ相談しましょう。
手術後の見え方に慣れるまでの期間の目安
白内障手術後の色の見え方に慣れるまでの期間には個人差があります。数日から数週間で気にならなくなる方もいれば、数ヶ月かけて徐々に慣れる方もいます。
長期間にわたって白内障が進行していた方や、水晶体の黄色みが強かった方は、手術前後の色の差が大きくなるため、慣れるまで時間がかかることがあります。また、片目だけ手術を受けた状態では、左右から異なる色の情報が入るため、違和感が続きやすい傾向があります。
色の鮮やかさや青みが徐々に軽減している場合は、経過をみられることが一般的です。しかし、見え方が悪化している、片目だけ色が極端に薄い、物がゆがむ、視野が欠けるなどの症状がある場合は、網膜や視神経の病気も考えられるため、眼科を受診しましょう。
まとめ

白内障が進行すると、水晶体の濁りや黄変によって青色系の光が通りにくくなり、白い物が黄色っぽく見えたり、色が暗くくすんで見えたりすることがあります。変化はゆっくり進むため、本人が気付いていないことも少なくありません。
見え方が生活に与える影響が軽い場合は、点眼治療や定期検査で経過をみます。一方、視界のかすみやまぶしさ、色の見分けにくさによって、運転や仕事などに支障がある場合は白内障手術を検討します。
手術後は色が明るく鮮やかに見え、一時的に青みを強く感じることがあります。多くは時間とともに慣れていきますが、急な視力低下や視野の異常、強い左右差がある場合は、ほかの病気が隠れていないか眼科で確認しましょう。
参考文献
『白内障』(日本眼科学会)
『白内障手術』(日本眼科学会)
『白内障手術を受ける方へ 知っておきたい白内障術後のケア』(日本眼科医会)
『かすむ(霧視)』(日本眼科学会)
『だんだんと見にくい(緩徐な視力低下)』(日本眼科学会)

