何を信じる? 「見る」ことの本質を問い直すトニー・アウスラー展、東京で開催

米国を代表するメディアアーティスト、トニー・アウスラーさんの展覧会「トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま~魔術、メディア、アート~」が、虎ノ門ヒルズのTOKYO NODE(東京都港区)で開かれている。映像や音、光、言葉を組み合わせたインスタレーションなどを通じ、「見ること」と「信じること」の本質を改めて問い直している。
アウスラーさんは1957年生まれ。映像を立体物や建築空間に投影する表現スタイルを切り開いた作家として高く評価されている。展覧会には、80年代に手がけた初期作品から新作まで49点が並ぶ。
「スペキュラー」は暗闇の中に浮かぶ大小さまざまな「目」のインスタレーション。鑑賞者はまばたきする巨大な目の群れに囲まれ、「見ること」と「見られること」が共存する状況を体験する。おびただしい視覚情報や交流サイト(SNS)の存在、日常の中に無数のカメラがある監視社会のような現状を暗闇の中で浮き彫りにし、その中にいる鑑賞者も批評する。
家庭の小さな部屋を再現したような「プライベート」は、天井から床にかけて男女の服がつなげてつるされ、顔に映像を投映されて横たわる人形が何かをつぶやいている。さらに、鑑賞する人はカメラで撮影され、作品の中や会場の外で映像が流される。壁には「肖像権使用同意書」と称した特大の布が貼られている。自分のイメージは誰のものなのか、個人のアイデンティティーはいかに技術や管理の対象になるかを問いかけている。
2016年に死去したロックスター、デビッド・ボウイらとの共作「空(くう)」は、高さ約2・5メートルの楕円(だえん)状の立体にボウイの顔が投影され、音楽と詩的なテキストが融合した作品。映像は1999年~2000年に撮影されたもので、一つの完成したインスタレーションとして本展で世界初公開されている。
最後を飾るのは「キメラ」。会場の天井高15メートルのドーム空間を生かした作品で、壁に植物や森、工場などの映像を投映。床には未知の生命体のような立体作品が置かれ、ずっと話しかけてくる。現実と想像、科学と神話が交錯する生態系を形成している。
いずれの作品も何が本当で何を信じるか、自分の目で見極める意味や重要性を内包している。アウスラーさんは「芸術は鑑賞者が参加できる場所であり、それにより完成されるもの。鑑賞者がストーリーを完成させていく体験がこの展覧会でも実現できれば」と話した。
9月27日まで。一般2400円ほか。無休。問い合わせはTOKYO NODEインフォメーション、電話03(6433)8200。
