丹沢蒸溜所、ウイスキーの原酒を自社蒸留 「ひと目で気に入ってしまった」水にこだわり 3年後の出荷に向け熟成

西丹沢の山あいに、芳潤なモルトの香りが漂う。2024年にオープンした「丹沢蒸溜所」(神奈川県山北町中川)。英国スコットランド産の原酒を仕込んでブレンデッドウイスキーを製造してきたが、今年から念願だった原酒の自社蒸留に乗り出した。水へのこだわりと口当たりの良さへの飽くなき追求。3年後の出荷に向け、逸品は深山幽谷の地で静かに熟成を続けている。
丹沢湖の上流をさかのぼり、樹齢2千年と伝わる箒(ほうき)杉を間近に見る場所に丹沢蒸溜所はある。運営する「ゼロイチウイスキー」(東京都大田区)の橋口守社長(45)は立地の理由に雄大な自然の恵みを強調する。「水を求めていろいろな所を見に行ったけど、ここの水がものすごくきれいで。ひと目で気に入ってしまった」。地下34メートルからくみ上げる名水が妙味を引き立てる。
スコットランドから取り寄せたモルトウイスキーやグレーンウイスキーの原酒をブレンド。独自に編み出した炭ろ過製法で、まろやかで癖のない味わいに仕上げている。
「各社個性的なウイスキーが多いが、好き嫌いは分かれる。短時間でアルコールのとげとげしさを丸くできないかと試行錯誤を繰り返した」と橋口社長。石でろ過したり、超音波を当てたり、凍らせたりしたこともあった。たどり着いた答えが紀州備長炭だったという。
年間の生産量は4万本ほど。目指すのは食中酒としての価値創造だ。「ウイスキーは食後に楽しむものという認識だと思う。でも、食文化が洋食化していく中で、食事に合わせて飲まれるものがあってもいいんじゃないか」。癖がなく、誰もが飲みやすい味わいを目指す理由はそこにある。
いわば特徴を出さないことが特長。さらに、「毎回続けられるものではないかもしれないが、多くの人に飲んでもらいたい」と価格面での「飲みやすさ」も考慮して店頭では5500円(700ミリリットル)で販売している。
