健康を維持するために、最初に鍛えるべき体の部位はどこか。アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長の高林孝光さんは「身体の土台であるかかとに適切な刺激を与えることが大切。自宅や通勤中にもできる簡単なトレーニングがある」という――。(第2回)

※本稿は、高林孝光『しゃがめない人は不健康になる――日本人の9割は正しくしゃがめない』(自由国民社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Six_Characters
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Six_Characters

■「最強のかかと」を作る2つのポイント

かかと周りの部位を強化して、さらに強靭なかかとを作るための基礎的なトレーニングを紹介します。

かかとの骨が強くなることで、怪我や不調、将来の健康リスクも改善されます。そのために必要なのが、適切な外部刺激です。これらを実践することで、かかとに効果的な外部刺激が与えられ、かかとの骨を中心に丈夫になっていきます。

実際にトレーニングを始めると気づかされますが、大前提として、まっすぐに立てない人がたくさんいます。まっすぐに立つと、体重はかかとにまっすぐかかります。それが理想的な姿勢であり、骨格のあり方でもあります。まず身体がまっすぐ立つことによって、かかとに正しい重さがかかることが大事なのです。

つまり言い換えれば、「かかとトレーニング」とは、かかとで全体重を支えられるようになるためのトレーニングでもあります。

「最強のかかと」を作るために必要な外部刺激は、大別すると「2つ」だけです。

(1)肩叩きのようにトントンと叩くタイプの瞬間的な刺激
(2)指圧のようにギュッと押すタイプの持続的な刺激

この2つの性質の違いをまずは覚えてください。

■数時間立ちっぱなしでも耐えられる

では、かかとへの叩き刺激と圧力刺激では何が違うのでしょうか。トントンと叩くタイプの外部刺激は、移動したときに耐えられるかかとを作っています。歩いたり、足踏みしたりする場面で、一瞬一瞬かかとに刺激が入る。そうした「瞬間的な衝撃に強いかかと」を鍛えるのです。

一方、ギュッと押すタイプのかかと圧は、同じ姿勢で体重がずっとかかったときに耐えられるかかとを作っています。立ちっぱなし、座りっぱなしなど、同じ姿勢をしたまま、かかとにずっと圧がかかるシーンはとても多いものです。

「ずっと何時間も刺激が入っても耐えられるかかと」を作るのが、圧力刺激の役割です。筋肉にも瞬発力に関わる筋肉(速筋)と持久力に関わる筋肉(遅筋)があるように、この2つの外部刺激を効果的に取り入れることによって「最強のかかと」が鍛えられます。

この記事では、前半で叩き刺激を与える「かかと刺激トレーニング」を1つ、後半で圧力刺激を与える「かかと圧ストレッチ」を1つ、それぞれ紹介します。立っても座っても動いても傷めないかかとを作るために、両方をバランスよく実践していきましょう。

■かかとに刺激が入る「正しい姿勢」

まずは叩くタイプの外部刺激をかかとに与えるためのトレーニングを行います。

【かかとウォーキング】

普段の「歩き方」が「健康的な歩き方」へと劇的に改善!
通学通勤に真っ先に取り入れたいトレーニング!

出所=『しゃがめない人は不健康になる――日本人の9割は正しくしゃがめない』(自由国民社)

【手順】
(1)両足を肩幅に開いて壁の前に立ち、お尻、肩甲骨、かかとを壁につける
(2)(1)の正しい立ち方をキープしたまま両足を一歩前に出す
(3)両足のつま先を上げ、背伸びして最大3秒キープする
(4)つま先を下ろし、全身の力を緩める。これを5回くり返す
(5)つま先を上げてかかとだけで5歩前進し、5歩後退する

(ポイント!)
普段の生活で取り入れる場合は、(4)までの準備体操をしたうえで最初の1歩目から30歩程度を、つま先を上げてかかとだけで歩きましょう。そうすれば自然と「正しい姿勢」になり、かかとに刺激が入る歩き方になります。

まずは正しい姿勢で立てるようになるための準備運動のようなトレーニングです。現代人の多くは、猫背や骨盤の傾きによって、正しい姿勢で立てていません。体が前かがみになったり、横に傾いたりすることで、かかとに体重が正しくかからず、かかとへの刺激が不十分な状態で日常を過ごしています。

■すねの筋肉を鍛えて転倒・けがを防ぐ

かかとウォーキングは、まず壁を使って正しい立ち方を体に覚えさせることから始まります。身体がまっすぐに立つことで、かかとに正しく体重がかかり、かかとが全体重をしっかりと支えられる状態を作り出すのです。これがかかとトレーニングの出発点です。

「正しくしゃがめない人」のほとんどが、前脛骨筋(脛(すね)の筋肉)という筋肉が衰えています。前脛骨筋は、しゃがんだときに後ろに倒れないように前に踏ん張る役割を担っている筋肉だからです。

さらに前脛骨筋が衰えると、足首が硬くなり、つま先が上がりにくくなって、床の段差などにつまずきやすくなります。よくつまずく人は、つま先が上がらない人です。つま先が上がるようになって転倒を避けられれば、寝たきりになる人も減ります。

最初はかかとに刺激を与えるのが痛いと感じる場合もあります。そうした方は、靴を履いて普段のウォーキングでかかと歩きを練習してみてください。靴がクッションの役割を果たし、怪我なく負担なく、かかとへの刺激を着実に与えることができます。

■足もとの筋力アップで基礎代謝もアップ

買い物や通勤通学のときに実践すれば、日常生活の中で自然にトレーニングができます。現代の日本人は、座っている時間が世界一長いといわれています。お尻の大臀筋(大殿筋)は、股関節を15度以上後ろに動かしたときに働きます。

お尻が垂れてきた人は、つま先を上げて後ろ歩きをすることで、ヒップアップにもなります。かかとウォーキングをすることによって、きれいな足もきれいなヒップラインも作れるのです。人間の筋力の70%は脚〜足にあります。

使っていなかった前脛骨筋の筋力がアップするだけでも、基礎代謝が上がり、やせやすい身体になります。筋肉が増えて体重が減れば、膝や股関節、足首への負担が軽減され、変形性膝関節症や変形性股関節症などの症状改善も期待できます。

【ポイント】
床の硬さによって、やりやすさが変わることがあります。床が硬くて痛いという人は、座布団やマット、布団の上で行うと、痛みや負担なく実践できます。柔らかいところでないとできない人は、それだけ「かかと弱者」である証拠です。普段かかとを使っていなくて固まっている状態なので、早めに実践して、かかとを強化していきましょう。

■座ってできる「かかと圧ストレッチ」

次に、持続的な圧力をかけるタイプの外部刺激をかかとに与えるためのストレッチを紹介します。

【かかと骨盤起こしストレッチ】

ハムストリングスが収縮して骨盤後傾した骨盤が再度整うことで、しゃがむ動作ががぜんできるようになる! かかとが浮かない練習にも最適な基本のストレッチ。

出所=『しゃがめない人は不健康になる――日本人の9割は正しくしゃがめない』(自由国民社)

【手順】
(1)椅子に浅めに座り両足を肩幅に広げてそろえる。かかとは浮かさずにひざは90度になるようにする
(2)お腹と太ももをくっつけるように上体(背中)を前に倒していく。そのとき、太ももの下に両手を回して握り、お腹と太ももが離れないようにキープする
(3)両足を抱えたままお尻を椅子から浮かせてひざをできるだけ伸ばし10秒キープする。足はつけたままにし、かかとは浮かさないように注意する

(ポイント!)
事前に立位体前屈を行い、手のひらが床にピタッとつくか確認をしてからストレッチをしてみましょう。ストレッチ後に再度、立位体前屈を行うと柔軟性向上の効果も実感できるのでおすすめです。

■姿勢が悪い人は太もも裏の筋肉が「弱点」

現代人は座っている時間が長く、太ももの後ろの筋肉であるハムストリングスを使わない生活を送っています。その結果、ハムストリングスが硬く短くなり、骨盤が後ろに倒れる「骨盤後傾」の状態になっている人がとても多いのです。

写真=iStock.com/Davizro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Davizro

骨盤が後ろに倒れてしまうと、しゃがむときに後ろに転んでしまったり、倒れそうになったり、そもそもしゃがむことができなくなります。このストレッチは、骨盤をまず立てることから始め、正しくしゃがめる身体を作るために考案しました。

高林孝光『しゃがめない人は不健康になる――日本人の9割は正しくしゃがめない』(自由国民社)

ポイントは、かかとを浮かさないことです。座った状態で、かかとを浮かせてしまうと、身体の柔軟性が全く向上しません。かかとに刺激を入れたまま上体を倒して、お腹と太ももをくっつけ、お尻を上げます。お尻を上げたときに、かかとが床についていないと、正しくお尻を上げられません。つま先立ちでずっと歩くと疲れますよね。

それと同じで、かかとをついて膝を伸ばすことで、安定性のある姿勢を取ることができます。かかとをついているからこそ、しっかりとしたストレッチのポーズが取れるのです。このストレッチのポーズを取るために、かかとの刺激が欠かせないストレッチになっています。

■「正しくしゃがめる人」に大変身

このストレッチの素晴らしい点は、座っている状態ではかかとに体重分しか刺激がかかりませんが、お尻を上げることで、かかとにさらに体重が乗り、より強い持続的な圧力刺激が入ることです。ハムストリングスも伸びながら、かかとに重さによる刺激が入る。かかとを丈夫にしながら、太もものハムストリングスも伸びるストレッチなのです。

立ちながら下にある物を取ったり拾ったりするとき、かかとが浮いてしまうと不安定になって転んだりして転倒し、怪我をする危険があります。ちゃんとかかとをついて立ちながら、しゃがんで下の物を取れるように、かかとをちゃんとつけるようなストレッチになっています。

骨盤が後傾したり前傾してしまうと、体重がかかとにまっすぐかからなくなります。骨盤を真っすぐ立てることで、最終的にはかかとに真っすぐ刺激が入るようになります。骨盤の位置をコントロールしながら、かかとに持続的な圧をかけていく、これが骨盤起こしストレッチの真髄です。

【ポイント】
事前に立位体前屈を行うと、より柔軟性向上の効果が出るのでおすすめです。かかとを浮かさないように注意しながら、自分のペースで無理なく続けましょう。

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高林 孝光(たかばやし・たかみつ)
アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長、柔道整復師
治療家(鍼灸師・柔道整復師)として延べ10万人以上を施術。バレーボールのJOCジュニアオリンピックカップ東京代表トレーナー、車椅子ソフトボール日本代表のチーフトレーナーを務めるなど、悩みをかかえるアスリートたちを治療。日本テレビ系列『ヒルナンデス!』では、肩こりの特集で全国の6人の治療家の1人に選ばれる。テレビ東京系列『追跡LIVE! SPORTSウォッチャー』では、アスリートのケガにくわしい専門家として解説。フジテレビ系列『ホンマでっか!?TV』では、運動機能評論家として紹介されるなどメディア出演多数。
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(アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長、柔道整復師 高林 孝光)