「セロトニンが不足」すると現れる症状はご存知ですか?医師が徹底解説!
セロトニンが不足すると現れる症状とは?メディカルドック監修医がセロトニンの働きなどを解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「セロトニンが不足」すると現れる症状はご存知ですか?顔つきの変化も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
村上 友太(医師)
医師、医学博士。
福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長、東京予防クリニック院長を歴任。現在は神宮前統合医療クリニックなどで脳機能向上、認知症予防を中心に診療している。
【資格・所属】
日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本抗加齢医学会専門医
日本健康経営専門医
「セロトニン」とは?

セロトニンは、脳内で情報のやり取りを行う「神経伝達物質」の一つです。気分や不安、睡眠、食欲、痛みの感じ方などに関わるため、一般的に「幸せホルモン」と呼ばれることもあります。
ただし、医学的には、セロトニンは「幸せを作る物質」という単純なものではありません。私たちの心身の状態は、セロトニンだけでなく、ドパミン、ノルアドレナリン、GABA、グルタミン酸など多くの神経系や、ホルモン、生活習慣、ストレス、遺伝など複数の要因が組み合わさって決まります。
そのため、「セロトニンが不足すると必ずうつ病になる」といった単純な因果関係ではなく、セロトニンの働き(シグナル)のバランスが崩れることが、不調に関与する可能性がある、という理解が現実に近いと思われます。
セロトニンはどこから分泌されるの?

「脳の物質」というイメージが強いセロトニンですが、実は体内では腸(消化管)で作られる量が圧倒的に多いことが知られています。体内のセロトニンの多くは腸で合成され、血液中では血小板が取り込んで保持します。脳内に存在するセロトニンは全体の一部(およそ1~2%程度)とされます。
・腸のセロトニン:消化管の運動(蠕動)などに関与
・血液(血小板)のセロトニン:血管や止血などに関与
・脳のセロトニン:気分・不安・睡眠・痛みなどの調節に関与(脳幹の縫線核などが重要)
ここで大切なのは、腸で作られたセロトニンそのものは、脳へ直接届かないという点です。脳には「血液脳関門」があり、セロトニンは基本的に通過できません。つまり、精神の安定などに関わる脳内のセロトニンは、脳内で合成される必要があるということです。
セロトニンの働き

セロトニンは心だけでなく、体の機能維持にも深く関わっています。代表的な5つの働きを解説します。
感情を安定させる(メンタルバランス)
セロトニンは、気分の落ち込みや不安、イライラなどの感情の波に関わる神経ネットワークの調整に関与します。セロトニンの働きが整っていると、感情が極端に振れにくくなり、気持ちの切り替えがしやすくなることがあります。
ストレスへの抵抗力を高める
ストレス反応には、扁桃体など情動に関わる脳領域が関与します。セロトニンはこれらの活動の調整に関わるため、働きが乱れると不安が強くなったり、緊張が抜けにくくなったりすることがあります。
睡眠リズムを整える(メラトニンの材料)
セロトニンは、睡眠ホルモンとして知られるメラトニンの材料(前駆体)です。日中の光環境や生活リズムが乱れると、睡眠の質やリズムに影響が出ることがあります。
姿勢・活動性に関わる
「背すじが伸びない」「動くのがおっくう」などの変化は、セロトニン単独というより、睡眠不足・抑うつ・ストレス・体力低下など複数要因の結果として現れやすい症状です。セロトニンは覚醒や意欲に関わる神経系とも関連するため、バランスが崩れると「元気が出ない感じ」につながることがあります。
痛みを調整する(鎮痛作用)
脳には痛みを調整する「下行性疼痛調節系」があり、セロトニンはこの調節に関与します。ただし、重要なのは、セロトニンは状況や部位、受容体によって痛みを抑える方向にも、増強する方向にも働き得る点です。慢性痛ではこの調節バランスが崩れていることもあります。
セロトニンが不足すると現れる症状

「セロトニン不足」という言葉は便利ですが、実際にはセロトニンの量そのものより、「働き(シグナル)のバランス」が乱れている状態を指して語られることが多いです。
そのうえで、現れやすい症状を「心」「体」「見た目」に分けて紹介します。
心の症状:イライラ・不安・意欲低下
・理由もなく不安になる、落ち着かない
・些細なことでイライラする、怒りっぽくなる
・何をしても楽しくない、やる気が出ない
・集中力が落ち、ミスが増える・先延ばしが増える
これらはセロトニンだけが原因とは限りませんが、睡眠不足やストレスが続くと悪化しやすい症状です。
体の症状:不眠・原因がはっきりしない不調
・寝つきが悪い/途中で目が覚める/朝早く目覚める
・日中の眠気、だるさ
・頭痛や肩こり、胃腸の不調などが続く
こうした症状は自律神経の乱れやストレス、うつ・不安、生活習慣などでも起こります。検査で大きな異常がないのに不調が続く場合は、心身両面から評価することが大切です。
見た目の症状:疲れて見える・表情が硬い
「セロトニン不足で顔がこうなる」と断定できる所見はありません。ただし、睡眠不足・疲労・ストレス・抑うつ状態が続くと、次のように“そう見える”ことがあります。
・表情がこわばる、笑顔が出にくい
・目つきが鋭く見える/逆にぼんやりして見える
・姿勢が丸くなり、元気がなさそうに見える
もし、片側の顔が下がる、急なろれつ不良、片目が開きにくい、二重に見える、手足のしびれなどが伴う場合は、脳卒中や神経疾患など緊急性があることもあるため、早めに医療機関へ相談してください。
「セロトニンの不足」についてよくある質問
ここまでセロトニンの不足について紹介しました。ここでは「セロトニンの不足」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

セロトニンをたくさん出す方法はありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
一気に増やす魔法はありませんが、「朝の光」と「リズム運動」が最強のスイッチです。朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びましょう(15分~30分)。そして、「歩く」「階段を使う」「よく噛んで食べる」といったリズム運動を意識してください。ガムを噛むだけでも脳への刺激になります。これを毎日続けることで、脳のセロトニン神経が鍛えられます。
セロトニンを増やす食べ物について教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
セロトニンの材料となる「トリプトファン」、合成を助ける「ビタミンB6」、そして脳への取り込みを助ける「炭水化物」の3つをバランスよく摂ることが大切です。これらを効率よく含んでいるのがバナナです。また、朝食に「ご飯(炭水化物)+納豆・味噌汁(大豆製品:トリプトファン)+焼き魚(ビタミンB6)」という和食メニューを摂ることは、理にかなった最強のセロトニン食と言えます。
セロトニンが不足しているかどうかのセルフチェック法を教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
以下の項目に当てはまるものが多いほど、セロトニン不足の可能性が高いと考えられます。
・朝起きたとき疲労感が強く、すっきり目覚められない。
・夜型生活になりやすく、昼夜逆転ぎみである。
・日中に日光を浴びる時間が極端に少ない。
・運動習慣がなく、ほとんど体を動かさない。
・イライラしやすく、ちょっとしたことで怒りがちになる。
・集中力が続かず、物事に注意が向けられない。
・疲れやすく、常に体がだるい感じがする。
該当項目が多い方は、生活習慣の改善(朝の光、運動、食事など)をぜひ試してみてください。
まとめ
セロトニンは、気分・不安・睡眠・痛みなどに関わる重要な神経伝達物質です。ただし「セロトニン不足=病気」と単純に決まるわけではなく、生活リズム、ストレス、睡眠、栄養、体質など複数要因の影響で働き(バランス)が乱れることで不調が出やすくなります。
不調を感じたら、まずは「起床時刻を固定する」「朝の光を取り入れる」「日中に少しでも歩く」「タンパク質を含む食事を整える」といった基本から始めてみてください。それでも改善しない、または日常生活に支障が出るほどつらい場合は、一人で抱え込まず、精神科・心療内科・睡眠外来などで専門的な評価を受けましょう。
「セロトニン」と関連する病気
「セロトニン」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
精神科・心療内科の病気
うつ病睡眠障害パニック障害不安障害
セロトニンの不足や過剰は、心の安定や睡眠、自律神経のコントロールに大きな影響を及ぼします。
「セロトニン」と関連する症状
「セロトニン」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
朝すっきりと起きられない
理由もなく不安やイライラを感じる
姿勢が悪くなり、猫背気味である
表情が乏しい
まぶたが重いと言われる
痛みを感じやすくなった
休日は家から出ず、太陽を浴びない
これらはセロトニン不足をセルフチェックできる方法の一つです。多く当てはまる場合にはセロトニン不足の可能性があるので、まずは生活リズムを整えてみてください。それでも改善しない場合や、身体的な症状が強い場合は、早めに専門医に相談することをお勧めします。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット セロトニン
有田秀穂. セロトニン欠乏脳
熊本大学. 統合失調症や双極性障害の男性患者ではセロトニン関連遺伝子のDNAメチル化状態が変化
Differences between males and females in rates of serotonin synthesis in human brain. PNAS. 1997

