ログリーの本社が入居するビル

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広告配信プラットフォーム運営のログリーは、メディア「転職アンテナ」を運営するmoto株式会社を600万円で売却することを20日に決定した。ログリーは2021年にmotoを取得。発表された買収額は7億円で、業績に応じて最大3億円を追加で支払う「アーンアウト」の契約も結んでいた。だが、この一連の買収劇には、M&Aに関する教訓がいくつも詰まっている。

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転職アンテナは、ビジネス書籍「転職と副業のかけ算」などの著者である戸塚俊介氏が運営するメディアだった。戸塚氏は当時、Twitter(X)のフォロワーが10万を超える人気インフルエンサーで、motoの2020年9月期の営業利益は約8000万円だった。

一方、ログリーは広告単価の下落などの影響で、2020年3月期の営業利益が前年同期比で約6割減少するなど、収益性に陰りが見え始めていた。ログリーはそんな中、motoの買収を決める。

戸塚氏は2021年当時、noteで売却条件を7億円とアーンアウト最大3億円、合計で最大10億円と説明していた。アーンアウトとは、M&Aが成立した後の一定期間内に決められた業績目標を達成すると、買い手が売り手に追加の対価を支払うもの。すなわち、買収後の成長を促すインセンティブだ。

しかし、2022年3月期に「転職アンテナ」のSEOパフォーマンスが悪化。motoの売上高は計画比で5割以上も下がった。結果、ログリーはmotoの「のれん(ブランド力などの価値)」を減損損失として計上した。

さらに経営責任を明確にするため、ログリー取締役COOだった池永彰文氏は辞任。motoの代表取締役の月額報酬を50%減額するなどの処分を行った。

シナジー生まれず「記事作り」の日々

ここから浮かび上がってくるのは、SEOに過度に依存した事業構造、不十分なインセンティブ設計、本格化しなかったシナジーの効果創出など、複数の問題だ。

まず、「転職アンテナ」はいわゆるSEOメディアで、Google検索以外の流入がほとんどなかった。2025年に入っても、事業の立て直し策は「記事を増産する」というものだった。

また、ログリーの買収額は7億円とアーンアウト3億円、最大10億円というものだが、「転職アンテナ」は戸塚氏が看板になっているメディアだ。SEOに依存しているとはいえ、戸塚氏の影響力を使えば、メディアの成長方法は他にもあったのではないか。

例えば、Twitterを使った拡散効果は期待できそうな流入経路の一つだが、戸塚氏は自身が運用するTwitterは買収契約に入っていなかったと、noteで明言している。

アーンアウトは失敗したときの損失を抑える仕組みというより、成功した場合に売り手へ追加報酬を払う仕組みだ。7億円という大部分の対価が先に確定していたのなら、業績をさらに伸ばすため戸塚氏が自身の影響力や資産を最大限活用するインセンティブとして、十分に機能したのか疑問は残る。

ログリーとmotoのシナジー効果が薄かった点も気がかりだ。買収時、ログリーは「LOGLY lift」というサービスと組み合わせ、新規事業創出につなげるという構想があった。つまり、ログリーは収益メディアを買ったというよりも、その顧客基盤を手にしたという思惑があったのだ。

2024年にはmotoと連携し、転職支援業界向け広告配信サービス「lift Plus 転職」の提供を開始している。しかし、最終的には「転職アンテナ」の記事増産に長い時間をかけることになった。ログリーが買収時に期待したシナジー効果は創出できなかった。

ただ、根本的な問題は、7億円という買収額を決定したプロセスにありそうだ。大胆な投資をするM&Aの難しさが露呈する結果となった。

戸塚氏は2024年6月にmotoの代表取締役を辞任。現在は2019年10月に立ち上げたHIRED株式会社の代表取締役として、「AdAntenna」「エージェントの窓口」を展開している。

文/不破聡 内外タイムス