コーヒーで認知症防止できるって本当? 適量・時間・NGな飲み方を世界的研究結果から解説

「コーヒーを飲むと認知症が防げる」--最近そんなニュースを目にした人も多いのではないでしょうか。実際に、世界的に権威のある医学雑誌『JAMA』で、コーヒーや紅茶を習慣的に飲む人は認知症のリスクが低いという大規模な研究結果が報告されています。

ただし、飲む量や時間帯、飲み方、さらには甘い飲み物との付き合い方によって、その恩恵は変わるようです。コーヒーは本当に脳によいのか、どう飲めばいいのか。舛森(ますもり)先生に詳しくお話を伺いました。

監修医師:
舛森 悠(YouTube医療大学)

2019年旭川医科大学卒業後、札幌にて初期研修をおこない、函館稜北病院総合診療科へ。北海道内の3次救急を担う救命救急センターなどを経て、現在は千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学共同専攻 博士課程にて研究に従事。並行して北海道での地域医療に貢献し、登録者96万人を誇る「YouTube医療大学」を運営。一般社団法人とまりぎケア代表理事、総合診療専門医、新家庭医療専門医、認知症予防専門医、医師会認定産業医。

≫【知らないと危険】そのコーヒーの飲み方…認知症のリスクです。【医師解説】ハーバード大で判明した避けるべき飲み物とは?

コーヒーが「脳の掃除係」と呼ばれる理由

編集部

そもそも、なぜコーヒーが脳によいと言われているのでしょうか?

舛森先生

排水管をイメージしてみてください。毎日少しずつ汚れが溜まりますよね。実は脳にも「グリンパティックシステム」と呼ばれる排水システムがあります。主に睡眠中に働き、脳脊髄液(のうせきずいえき)という液体が、日中脳内に溜まった老廃物を洗い流してくれます。

編集部

その老廃物が、認知症と関係しているのですか?

舛森先生

はい。代表がアミロイドβというタンパク質で、アルツハイマー型認知症の人の脳に異常に溜まっています。動物実験のレベルではありますが、コーヒーに含まれるカフェインがアミロイドβの蓄積を抑える可能性が示唆されています。

さらにコーヒーにはクロロゲン酸やポリフェノールも含まれ、これらの成分が炎症や血管の老化を抑えます。排水管で言えば、カフェインは流れを速くするポンプ、ポリフェノールは内側をコーティングして汚れを防ぐ洗剤、というイメージです。ただしこれは仮説で、人間の脳で直接確かめられたわけではありません。

コーヒーで認知症リスクが18%低下:13万人の調査結果

編集部

人間を対象にした研究では、どんな結果が出ているのですか?

舛森先生

2026年の研究では、カフェイン入りコーヒーを長期摂取した人の認知機能低下および認知症発症リスクについて、約13万人を最長43年にわたって追跡しました。その結果、追跡調査中に1万1033例が認知症を発症していました。

年齢や喫煙歴・BMIなど一人ひとりの背景を調整した多変量調整分析では、カフェイン入りコーヒーの摂取量別で4グループに分けると、最も多いグループは最も少ないグループより認知症リスクが約18%低かったのです。さらに、最も少ないグループを基準に各グループを比べると、2番目のグループでは差がなく、3番目と4番目でほぼ同じ水準まで下がる--つまり、ある程度飲めばそこから先は頭打ちという結果でした。

編集部

大きな差ですね。

舛森先生

ええ。さらに「物忘れが増えた」という自覚がある人の割合も相対的に15%ほど少なく、認知テストのスコアも高く、両群の差は認知機能の約0.6年分の低下に相当する大きさでした。

編集部

ぜひとも取り入れたいところですが、コーヒーが苦手な人は恩恵を受けられないのでしょうか?

舛森先生

ご安心ください。同じ研究で紅茶の効果についても調査されています。紅茶は摂取量別に3グループに分けられ、最も多いグループは最も少ないグループに比べて認知症リスクが約14%低いことが示されました。認知テストの数値では、コーヒーより紅茶のほうが良好でした。紅茶のテアニンというアミノ酸が、リラックス効果を高め、集中を整えることが期待されています。

編集部

紅茶派の人も安心ですね。ただ、ひとつの研究だけで判断してよいものでしょうか?

舛森先生

もっともな疑問です。実は2024年には、これまでの38件の研究・のべ約75万人分のデータをまとめて解析した報告も出ています。

そこでは、紅茶では有意なリスク低下がみられた一方、コーヒーは最も多い群と少ない群の比較でははっきりした差が出ませんでした(いずれも結果の確実性は低いと評価されています)。興味深いのは関係の「形」です。このメタ解析の用量反応分析では、紅茶は飲む量が増えるほどリスクが下がる線形的な関係、コーヒーは1日1~3杯あたりで最もリスクが低くなる非線形の関係でした。コーヒーについては「飲むほどよい」ではなく、適量に谷があるという結果です。

「デカフェ」でも同じ効果は得られる?

編集部

カフェインが気になる人向けの「デカフェ」でも、同じ効果は期待できますか?

舛森先生

率直に言うと、今回のデータではデカフェで同様の結果は得られていません。デカフェをよく飲む群でも、認知症リスクの明らかな低下は認められませんでした。

ただ、デカフェを選ぶ人には不眠や動悸(どうき)など、もともと体調に問題を抱えた人が多いと考えられますから、その背景が結果に影響している可能性もあります。

デカフェにも抗酸化物質は含まれますから飲む意味がないわけではありませんが、飲めるならカフェイン入りのほうがデータ上は有利、ということですね。

適量は「1日2~3杯」、ベストタイミングは「午前中」

編集部

効果があるなら、たくさん飲んだほうがいいのでしょうか?

舛森先生

そう思うのも自然なことですが、違います。先ほど述べた2026年の研究でリスクが最も低かったと示されたのは、コーヒーで1日2~3杯、紅茶で1~2杯という量であり、それ以上は効果が頭打ちでした。血圧の薬も倍飲めば倍効くわけではなく、一定量を超えると副作用ばかり増えるのと同じで、飲みすぎて眠れなくなっては元も子もありません。

編集部

飲む時間帯も関係するのですか?

舛森先生

重要です。これは認知症でなく死亡リスクを見た研究ですが、米国の成人約4万人を約10年追跡した2025年の研究では、朝だけコーヒーを飲む人は飲まない人より死亡リスクが約16%低く、1日中飲む人では飲まない人との差がありませんでした。

鍵は「概日リズム」、すなわち体内時計です。午後や夜のカフェイン摂取はメラトニンという睡眠ホルモンを乱し、血圧や酸化ストレスを高めてしまいます。だからこそ、コーヒータイムは朝食後からお昼までに済ませるのが理想です。

認知症リスクを高める「甘い飲み物」の正体

編集部

逆に、避けたほうがいい飲み物はありますか?

舛森先生

あります。砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料と脳卒中、認知症の関係を調査した2017年の米国の研究では、脳卒中は約3000人、認知症は約1500人を、それぞれ10年ほど追跡しました。すると、人工甘味料入りの飲み物を毎日飲む群は、ほとんど飲まない群に比べて、脳梗塞のリスクが約2.96倍、認知症全体では約2.47倍、アルツハイマー型認知症では約2.89倍という関連がみられました。ただし発症した人数自体が少なく(10年間で虚血性脳卒中82例、認知症81例)、推定の幅が広い点には注意が必要です。

ちなみに同じ研究では、砂糖入りの飲み物でははっきりした関連は示されませんでしたが、砂糖入り飲料は血糖値とインスリン値の急激な上昇を引き起こしさまざまな病気の要因となりますから、「砂糖なら安心」ということではありません。

編集部

甘い飲み物が認知症にまで関わるとは意外でした。その後、新しい研究は出ているのですか?

舛森先生

はい。2025年には、ブラジルの成人約1万3000人を8年間追跡した研究が報告されました。低カロリー・無カロリー甘味料(人工甘味料と糖アルコール)の摂取量が最も多い群(ダイエット飲料およそ1缶分、1日約191mg)は、最も少ない群に比べて全般的な認知機能(記憶や思考力)の低下速度が約62%速く、 この低下速度の差を年数に換算すると「加齢による認知機能の低下およそ1.6年分」に相当すると見積もられました。しかも、その影響は60歳未満で目立っていたのです。

対象となった甘味料は、アセスルファムK、アスパルテーム、サッカリン、タガトースと、糖アルコールのエリスリトール、ソルビトール、キシリトールの計7種類です。このうちタガトースを除く6種類で、認知機能の低下との関連がみられました。

編集部

若い世代ほど気をつけたほうがよさそうですね。

舛森先生

そうですね。これも観察研究で「甘味料が認知症の原因」と断定できるわけではありませんが、年代を問わず、甘い飲み物を「足す」より「引く」ほうが理にかなっている、とは言えそうです。「ダイエット」「ゼロ」系の飲料は糖分がないから安心と思われがちですが、低カロリー・無カロリーの甘味料は認知症リスクと関連する可能性があることを知っておいてください。

大切なのは「引き算」で、甘味料入りの飲み物を無糖のコーヒーや紅茶に置き換える。サプリを足すより、今の飲み物を見直すほうがずっと現実的です。

明日からできる! 飲み方の3つのポイント

編集部

コーヒーや紅茶の飲み方のポイントを教えてください。

舛森先生

3つあります。

1つ目は砂糖や甘味料を入れないこと。ブラックがベストですが、苦手なら少量のミルクや豆乳をプラスしても構いません。

2つ目は少し冷ましてから飲むこと。熱々のコーヒーや紅茶は食道をやけどさせ、食道がんのリスクを上げる可能性があります。実際、2025年に発表された英国の約45万人を平均約12年追跡した研究では、飲み物を「とても熱い」状態で飲むと答えた人は、飲まない人やぬるめで飲む人に比べて食道扁平上皮がんのリスクが約2.5~5.6倍高く、杯数が多いほどリスクも上がっていました(食道腺がんでは、はっきりした関連はみられませんでした)。

なお、この「とても熱い」は本人の申告によるもので、温度を測定したものではありません。温度そのものについては、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関も、65℃を超える非常に熱い飲み物を「おそらく発がん性がある」と位置づけています。鍵は飲み物の種類ではなく「温度」なので、コーヒーや紅茶そのものを避ける必要はありません。ホットなら1~2分置くか、アイスにするのも手です。

3つ目は午前中に飲み切ること。午後にかかるときは、私はデカフェに切り替えることもあります。

編集部

「インスタントでもいいの?」とよく聞かれますが、いかがですか?

舛森先生

現段階の答えを述べると「飲まないよりはるかによい」です。ただ自分で淹れるよりクロロゲン酸やポリフェノール、カフェインは少なくなりがちです。毎朝の習慣があるなら十分価値がありますし、余裕があればドリップに、くらいで構いません。完璧を目指さず、自分のペースで続けることが大切です。

舛森先生からのメッセージ

認知症は、対策できる要因に取り組むことで、予防したり発症を先延ばしできたりする部分があるとわかってきました。2024年に医学雑誌『Lancet』の専門家委員会は、14の要因へ対策を行えば認知症のおよそ45%は予防・遅延できる可能性があると報告し、その主な要因の一つに「社会的なつながりの少なさ(孤立)」を挙げています。社会とのつながりはとても重要です。友人とカフェで飲む紅茶、休憩室で同僚と飲むコーヒー。誰かと一緒に過ごす時間こそ、カフェインだけでは測れない、有効な脳のメンテナンスかもしれません。

本稿で紹介したポイントを全部一度に実行する必要はありません。缶コーヒーをブラックに変える、午後のカフェインを控える……どれか一つからで十分です。そして、飲むこと自体以上に、それを誰かと一緒に飲む時間が脳を守ってくれているのかもしれません。一杯を囲むひとときを大切にしながら、無理のない範囲で続けてみてください。気になることがあれば、どうぞお気軽にかかりつけの先生にもご相談くださいね。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。ここで紹介した研究の多くは「関連」を示す観察研究であり、因果関係を断定するものではありません。気になる症状がある人や持病で通院中・服薬中の人は、自己判断で生活習慣を変える前に、必ずかかりつけの医療機関や専門医にご相談ください。

主な参考文献

1. Zhang Y, et al. Coffee and Tea Intake, Dementia Risk, and Cognitive Function. JAMA. 2026.(約13万人・最長43年追跡)

2. Li F, et al. Tea, coffee, and caffeine intake and risk of dementia and Alzheimer’s disease: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Food & Function. 2024;15(16):8330-8344.(38コホート・約75万人)

3. Wang X, et al. Coffee drinking timing and mortality in US adults. European Heart Journal. 2025;46(8):749-759.

4. Pase MP, et al. Sugar- and Artificially Sweetened Beverages and the Risks of Incident Stroke and Dementia. Stroke. 2017;48(5):1139-1146.

5. Gonçalves NG, et al. Association Between Consumption of Low- and No-Calorie Artificial Sweeteners and Cognitive Decline. Neurology. 2025;105(7):e214023.

6. Inoue-Choi M, et al. Hot beverage intake and oesophageal cancer in the UK Biobank: prospective cohort study. British Journal of Cancer. 2025;132(7):652-659.

7. Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. The Lancet. 2024;404(10452):572-628.