近年、トヨタ車の新しい顔つきが話題になることが多くなった。「ハンマーヘッドデザイン」と呼ばれるヘッドライトを核にしたフロントマスクは、現行のプリウスを中心にクラウンスポーツやRAV4、bZ4X、アクアなど続々と増えている。

【写真で見る】「とんでもなくダサい」のか…? トヨタの肝いり「ハンマーヘッドデザイン」を搭載したクラウンやプリウスなどをじっくり見る

 このハンマーヘッドデザインをネットで検索すると、予測検索や関連する質問などで「ダサい」というワードが出現する。「どれも同じに見える」と車種ごとの差異がなくなることに落胆する声や「とんでもなくダサい」と酷評する声もあるようだ。万人受けする大衆車ブランドの最右翼であるトヨタだが、このヘッドライトデザインを気に入らない人も少なくないのである。

 トヨタはなぜ、そんな賛否両論のあるハンマーヘッドデザインの採用車種を増やしているのか。背景には、近年の自動車メーカーが実践する「ブランド戦略」が大きく影響している。


2021年、バッテリーEV戦略説明会での一幕。近未来的なデザインのクルマが並び、豊田章男氏は誇らしげにアピールした(トヨタ公式YouTubeより)

プリウスへの採用が話題のきっかけに?

 多くの人がハンマーヘッドデザインについて意識を巡らす大きなきっかけとなったのは、現行の60系プリウスに採用されたことだろう。

 プリウスは世界初の量産ハイブリッドカーとして登場以来、様々なトレンドを生み出してきた。いつの時代もプリウスはクールなクルマとして、存在感を発揮してきた車種だ。そして今ではハイブリッドが一般的になり他車種へと広がったことで、現行モデルのプリウスでは燃費追求だけでなく近未来感のあるスポーティなクルマとしての魅力が加えられている。

 先代の50系プリウスは攻めすぎて、ちょっとクセがあり過ぎのスタイリングになってしまった印象もあったが、現行のプリウスは軌道修正どころか、思い切りスポーティに振り切ってきた。大きく寝かせられたフロントウインドウ、全体的に低く抑揚の少ないシルエットはまるでスポーツカーのようだが、そのデザインの核とも言えるのがハンマーヘッドデザインのヘッドライトなのである。

 思い起こせば2021年、トヨタのバッテリーEV戦略説明会で豊田章男社長(当時)の背後に開発中のEVたちを並べて一気にお披露目した時には、すでにハンマーヘッドデザインを採用したクルマがいくつも並べられていた。けれどもその時には個々のモデルについて解説することはなかったため、デザインコンセプトも触れずじまいであった。

 そして2022年にプリウスが発表され、その大胆なスタイリングと共に特徴的なヘッドライトであるハンマーヘッドデザインが紹介されたのである。

トヨタ以外でも続々と採用が進む「コの字型」デザイン

 ハンマーヘッドデザインとは、ヘッドライトとスモールランプ(デイタイムランニングランプを含む)を連続させた「コの字」型とすることで、薄いヘッドランプを特徴的に魅せるもの。ハンマーヘッドシャーク(シュモクザメ)の頭を上からみた形状をモチーフにしていて、フロントマスクを印象的なモノとして、ブランドイメージをより周知させることを狙っているのだ。

 街を走るクルマたちを見ると、ヘッドライトユニット内でスモールランプをコの字型に点灯させるデザインを採用しているブランドや車種は、意外と多い。スバル、ルノー、アウディなどが代表的だが、それぞれに微妙なデザインの違いをみせている。

 トヨタの場合、ハンマーヘッドとは名乗るものの、実際には多くの車種では下側の角は丸められて弓のような形状とすることで、他社とは差別化を図っている。

 ハンマー繋がりで言えば、ボルボは北欧神話に登場する雷神トールが使っていたハンマーをモチーフとしたデイタイムランプをライトユニットに組み込んでいる。このトールハンマー・ヘッドライトは、ハンマーを横にしたようなデザインで、点灯時にボルボであることを強くアピールする。

 トヨタのハンマーヘッドデザインも、同様の効果を狙ったものだ。ボルボと比べ車種バリエーションが幅広く、車格や形状なども大きく異なる車種展開のため、車種に合わせてモチーフを変化させて応用している。SUVなどフロントマスクが分厚い車種では、無骨さを強調するためにも弓型ではなくコの字になっていたり、複眼的に上下2本に分かれていたりと、必ずしも統一されたデザインではなく、あくまでコンセプトを統一しているに過ぎない。

 アクアやbZ4Xのようにマイナーチェンジによって採用されるケースでは、制約も多いためプリウスやクラウンほど車体にマッチしているとは言い切れないモノもある。しかし採用車種が増えるほどトヨタの新しい顔として認知度が高まっていくのだから、これも戦略としては正しいのだ。

 それにしても、“80点主義”を標ぼうしてきたトヨタが、なぜここにきて賛否両論かつ辛辣な批判も受けるようなデザインを強く推進しているのか。次の記事では、デザインによって浮沈してきた歴代のクルマなども見ながら、この点を深掘りしていく。

プリウスだけでなく「憧れの高級車」クラウンにまで導入で疑問の声も…トヨタ「ハンマーヘッドデザイン」に見る“80点主義”の終焉〉へ続く

(高根 英幸)