《性行為の同意書を書け》5〜6枚書かされ、実家の住所も…「女性を襲うことに興味があった」拘禁刑22年判決の山下高志被告(45)が被害女性に強いた“口封じ”
〈捕まらない方法あります〉〈メチャクチャに犯しましょう〉--ネット掲示板で不同意性交の"実行役"を募り、応募してきた2人の男とともに複数の女性を襲ったとして、不同意性交等致傷罪、逮捕監禁致傷罪等に問われた山下高志被告(45)。7月8日、神戸地裁(中川綾子裁判長)は拘禁刑22年(求刑・拘禁刑25年)を言い渡した。
【写真を見る】送検される山下被告。証人として出廷した相馬崇司受刑者のFacebook写真。拘禁刑17年が確定している
大阪府の事件で山下被告は、共犯者の相馬崇司受刑者(拘禁刑17年判決確定)、中国籍の渡辺哲理こと李博倫受刑者(同12年)とともにBさん宅の玄関前で襲いかかり、ガムテープで拘束した上で性的暴行を加え、その様子を撮影。
被害者に「同意書」を書かせ、実家の住所まで聞き出した口封じの手口など、一連の裁判を傍聴した裁判ライターの普通氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
共犯者が語った"カシラ"の指示
前編では、大阪の事件で被害者となったBさん視点で犯行の醜悪さを説明していたが、相馬受刑者、李受刑者の視点でも事件を一部振り返る。事件の大枠の流れは、Bさん、相馬受刑者、李受刑者で共通している。
犯行中も、相馬受刑者や李受刑者への行為の指示は山下被告が行った。他にも山下被告はカメラを回したり、自身も行為に加わった。山下被告は「キスしかしていない」「(性的行為は自身の)腹が邪魔でできなかった」などと弁解しているが、行為をしていたという相馬受刑者、李受刑者の供述が一致していることや、動画の内容とそぐわないため判決ではその主張は採用されていない。
山下被告は「(犯行後の告発を防ぐ)マインドコントロールするためには膣内射精が必要」などとして2人に指示していたが、3人とも射精には至らなかったという。李に関しては「レイプ動画のように叫んだり、喘ぐと思ったが、無言で抵抗もなく興奮しなかったので射精をしなかった」といった供述も残していた。
書かされた5〜6枚の「同意書」
Bさんの供述に戻る。
犯行途中から「死んでないか?」と言われるほど、心を無にして時が過ぎるのを待っていたBさん。行為が終わったと思うとカシラ(山下被告)が「持ってこい」と相馬受刑者と李受刑者に何かを指示し、Bさんに「口開けろ」と言って、錠剤を水で飲まされた。行為中の言動から「アフターピル」であると思った。
その後、口にガムテープを貼られ、浴室に連れられシャワーを浴びせられた。さらに陰部に指を挿入され洗われた。
そしてリビングに戻ると、ペンを握らされて「性行為の同意書を書け」と言われた。5〜6枚指示されるがままに書き、名前と生年月日も書いた。さらには身分証の写真を撮られ、実家の場所も言わされた。伝えた実家の住所をネット検索され、家の外観や車種を確認させられた。そして「このことを言ったら家族ごと殺すぞ。動画もばら撒くからな」と言われ、ただ頷くしかできなかった。
そのような中、玄関ドアが開く音がして、Cさんが帰ってきた。
電話越しで「家族ごと殺す」
Cさんは証人として法廷で証言した。
家に入ると一瞬にしてその異様さに気付いた。玄関先の花瓶が倒れ、靴は散乱していた。そして玄関から見える部屋の奥に、裸で縛られているBさんの姿と全裸の男2人が見えた。いきなりのことでどんな状況か把握などできない。混乱するCさんのもとに2人の男は突進してきた。
その場面の相馬受刑者、李受刑者の供述である。
突然の男の帰宅に驚く被告人ら。相馬受刑者が山下被告、李受刑者のほうを向くと、山下被告が李受刑者の耳元に顔を近付けて何かを言っているのを見た。そして、相馬受刑者に向かって、無言で顎をCさんの方へ向けたので、襲えという指示だと把握した。
同じタイミングで李受刑者は山下被告を向くと、耳元で「行けよ」といった趣旨のことを言われ背中を押された。相馬受刑者と李受刑者でCさんのもとに向かっていった。
Cさんの証言に戻る。
何もわからないまま、男らに突進され仰向けに倒され、その上に乗られて身動きが取れなくなってしまう。1人は包丁を持っていた。2人に襲われている最中、2人とは違う1人の男が部屋を飛び出して逃走した。Cさんは当時それが誰かはわからなかったが、山下被告である。
押し倒されたものの、しばらく動きがなかった。Cさんは危機的状況ながらも、連携が取れていないなどと感じたという。そんな中、1人が「ボス」などと呼ぶ人間と電話をしはじめ、Cさんの耳に受話器を当てた。
電話の相手は「お前調子に乗ってるらしいな」「通報したら家族ごと殺すから」などと言われ了承した。電話の男は、抑えつけている2人と何かを話すと、Cさんの身分証を撮影したり、撤収作業を始めるなど急にテキパキ動き出した。その様子から、その電話口の人間の指示がないと動けない2人だと感じたという。
そのCさんの想像通り、相馬受刑者と李受刑者の供述によると、山下被告から撤収の指示を受け、現場を逃走したという。その逃走する車内で、山下被告はCさんを電話で脅したことなどを2人に告げたという。
事件後、帰ってこない日常
事件後も交際を続けているBさんとCさん。事件後のBさんの様子をCさんが証言台で説明する。
もともと陽気であったというBさん。しかし、事件のあとの様子を「ずっと暗いまま」と表現する。楽しいことをしていても、急に事件を思い出して、声を上げて泣き出して、Cさんを事件に巻き込んだとして謝ってくるのだという。Bさんは事件のことは誰にも言えず、感情は全てCさんが受け止めている。
エレベーターは事件を思い出すため乗ることができず、警備会社を呼べるボタンを持っているがCさんがいないと一人で外出ができない状態が続いている。
最後にCさんが思いをぶつける。
「レイプは心の殺人なんで、日常はもう帰ってこない。身体は戻っても心は戻らない。一瞬の快楽か知らんけど、こっちは一生背負うことをわかってほしい」
「この刑が軽かったら誰でもする。僕たちみたいな思いをする人は出てほしくない。見せしめに、そういう発想の人が生まれないような罪を希望します」
法廷で流した"謎の涙"
山下被告は、被告人質問の場で犯行の経緯について供述する。声が小さく、所々涙声になりながら供述する山下被告。その涙は被害者らに対する反省と説明した。
掲示板で〈一緒にレイプをする人を募集〉などと書き込み、その手法を伝授してきたとされているが、すべてネットでの情報を蓄積してきたもので、起訴された事件以外は起こしていないと主張する。これまで何件も成功させてきたというのも、自身を大きく見せようとする性格だという。
確かに裁判で明らかになった情報だけ見ても、計画や共犯者らの連携に杜撰さが垣間見え、犯行が初めてであるという主張には頷けるものがあった。しかし、たとえ杜撰なものであったとしても、起こした結果が取返しのつかないものであることは、各被害者の供述からも明らかであった。
Cさんを逮捕監禁した場面について聞かれると「僕は何もしていません」「怖くなって車に逃げた」などとして、何も指示をしていないと繰り返した。
その、ただただ否定する姿は、現場から一目散に逃げだした姿ともリンクするものではあった。しかし、Cさん、相馬受刑者、李受刑者の3人が山下被告を貶める理由などあるはずもなく、その場は怖くなって逃げだした山下被告が、安全な場から虚勢を張って脅迫や指示出しをする様子がありありと想像できた。
「真摯に罪に向き合っていない」
判決では、山下被告が否認した主張をことごとく退けた。そして、「共犯者に罪をなすりつけ不合理な弁解に終始し、真摯に罪に向き合っているとは"到底(注:声を大きくして読み上げていた)"言えない」と、その姿勢を厳しく非難した。
また、兵庫県の事件で一部の行為が未遂で終わったが、その僅か2週間後に、より周到な準備をして大阪府の事件を起こすなど非道な犯行である。共犯者も主体的に関与しているが、山下被告は卑劣な計画、準備を進め、指示を出すなど犯行を主導した人物として、共犯者よりも刑事責任は重いとし、同種の事件よりも相当に重い部類であると、拘禁刑22年の理由を判示した。
涙目になりながら、被告人席でその判決の理由を聞いていた山下被告。
犯行のきっかけは「女性を襲うことに興味があった」などという、短絡的という言葉では表現しきれない軽率なものであった。その軽率すぎる動機と、起こした被害結果の甚大さに、ただただやるせなさを感じる裁判であった。
(了。前編から読む)
◆取材・文/普通(裁判ライター)

