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国土交通省の『令和5年度マンション総合調査』によると、別の管理会社へ変更したマンションは24.5%にのぼり、およそ4棟に1棟に達しています。これまでは組合側から変更するケースが中心でしたが、近年は人手不足などを背景に、管理会社側から「撤退」を通告されるケースが急増しています。本記事では、「捨てられるマンション」の末路と今後の管理組合に求められる対応について、マンション管理士の松本洋氏が解説します。

「次回の契約更新はいたしません」マンション管理組合の理事長に届いた“契約終了通知”

「次回の契約更新はいたしません」

「管理委託費を削減できた」と喜んだのも束の間、都内の分譲マンションで理事長を務めるAさんの元に届いたのは、管理会社からの契約終了通知でした。

ある日突然、管理会社からこう告げられたら、管理組合はどうすればよいのでしょうか。

これまで、管理会社は管理組合から「選ばれる側」と考えられてきました。しかし近年は、人手不足や人件費の上昇、採算性の悪化、組合員からの過度な要求やハラスメントなどを背景に、管理会社側が管理を継続するマンションを選ぶ時代へと変わりつつあります。

4棟に1棟が変更…管理会社から「捨てられる」時代へ

国土交通省の『令和5年度マンション総合調査』によると、分譲時に分譲会社から提示された管理会社を、別の管理会社へ変更したマンションは24.5%にのぼります。平成30年度調査の20.9%から3.6%増加しており、およそ4棟に1棟が管理会社を変更したことになります。

これまでは、管理委託費や対応への不満から、管理組合側が管理会社を変更するケースが中心でした。しかし最近は、Aさんのマンションのように管理会社側から契約終了を申し出るケースも見受けられます。

あるフロント担当者は、次のように話します。

「以前は、理事会からどのような要求をされても、応じるしかありませんでした。しかし今は、無理な要求を受け入れてまで管理を続けるより、契約を見直して社員の雇用や働く環境を守るという判断ができるようになりました」

管理員や清掃員の確保が難しくなり、フロント担当者の負担も増えています。採算が合わず、過度な要求も続くマンションについて、「無理をしてまで契約を継続しない」という判断が現実のものとなっているのです。

管理費削減を優先した結果…管理会社が「撤退」を決断したワケ

なぜ、Aさんのマンションは撤退を通告されてしまったのでしょうか。実は、理事長であるAさんは「管理会社は利益ばかりを追求する存在だ」という考え方を持つマンション管理士の助言を強く信頼していました。

管理費を削減するため、管理会社に委託していた業務を大幅削減。点検や工事なども、そのマンション管理士と関係の深い建築事務所へ発注するようになりました。

その結果、管理会社の収益は大きく低下した一方で、対応の負担や責任は重いままです。さらに、Aさんたち理事会の運営にも外部業者が深く関与し、管理会社の業務と責任の範囲が不明確になっていきました。

最終的に、管理会社は「この条件では管理を継続することは困難」と判断し、契約を終了しました。

その後、別のデベロッパー系管理会社が、利益率の低い条件でも管理を引き継ぎましたが、現場の担当者からは「業務負担が大きくなりすぎるのではないか」と心配する声が上がっていました。

後任会社が見つかっても、採算の合わない契約条件や管理組合の姿勢が変わらなければ、再び撤退を申し出られる可能性があります。

「3ヵ月で後任を探す」という難題

国土交通省の『マンション標準管理委託契約書』では、「管理組合と管理会社のいずれも、相手方に対して少なくとも3ヵ月前に書面で解約を申し入れることにより、契約を終了できる」とされています。

撤退を通告されたAさんたち管理組合は、この短期間で後任候補を探し、見積もりや管理仕様を比較したうえで、理事会審議、総会決議、契約締結、業務の引き継ぎまで進めなければなりません。

しかし、すべての管理会社が見積もりに参加するとは限りません。採算性や人員配置に問題があると判断され、見積もりを断られることもあります。十分に比較しないまま後任を決めれば、新たな問題が生じるおそれもあります。

【マンション管理士の助言】管理会社の変更は“対症療法”…資産価値を守るために必要な視点

このマンションの資料を確認すると、管理会社の撤退以前から、Aさんたち管理組合自身が多くの課題を抱えていました。

長期修繕計画は15年前のまま更新されず、修繕積立金も国土交通省のガイドラインを下回っていました。管理規約は竣工以来、一度も改正されず、必要な工事も「費用がかかる」という理由で先送りに。その結果、建物や設備の劣化が進み、管理計画認定制度の認定基準も満たしていなかったのです。

こうした問題は、管理会社を変更しただけでは解決しません。必要な修繕を実施するか、修繕積立金を見直すかを最終的に決めるのは管理組合だからです。

管理組合自身の意思決定に問題があれば、管理会社の変更は一時的な「対症療法」に終わってしまいます。

管理会社を長期的な協力相手に

もちろん、管理委託費や業務内容を検証し、不要な支出を見直すことは必要です。しかし、価格だけを基準に必要な業務まで削れば、管理の質が低下し、建物や設備の劣化につながります。

管理会社が管理員や清掃員、フロント担当者を配置し、安定したサービスを提供し続けるには、適正な利益が必要です。管理会社の利益を削ることが、そのまま管理組合の利益になるとは限りません。

マンション管理の主体は管理組合ですが、管理会社は日常管理や会計、設備点検などを担う重要な協力相手です。

管理会社に何をしてもらうかだけではなく、管理会社とどのような関係を築き、協力してマンションを維持していくか。管理会社の撤退が現実的な問題となった今、こうした視点を持つことが、マンションの管理水準と資産価値を守るうえで、ますます重要になっています。

松本 洋

松本マンション管理士事務所代表