東京・蒲田の2駅結ぶ蒲蒲線、大田区と地元を取材して分かった実現のハードルと地元の思い
東京・大田区の繁華街である蒲田には、2つの駅がある。1つはJRと東急が接続する蒲田駅、もう1つはJRの東口から徒歩で10分ほど離れたところにある京急蒲田駅だ。かねて2つの蒲田駅を結ぶ計画が議論されてきたが、ここにきて実現に向けて動き出そうとしている。本当に可能性はあるのか。
蒲田駅「京急蒲タコハイ」騒動のその後…看板は外されてもポスターや音声はそのままだった!
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■国交省が一部事業認可
2つの蒲田駅を結ぶ路線は新空港線、通称「蒲蒲線」と呼ばれる。全体としては東急多摩川線矢口渡駅から京急空港線大鳥居駅を結ぶ路線で、矢口渡駅を越えたあたりから地下にもぐり、新設されるJR蒲田駅の地下駅と京急蒲田駅の地下駅である蒲田新駅(仮称)を通って、京急空港線糀谷駅を越えたあたりで地上に出て大鳥居駅に至る構想だ。それが実現すると、京急空港線に接続し、東急東横線方面から羽田空港まで一本で行けるようになる。東京メトロ副都心線を通じて東横線とつながる東武東上線や西武池袋線方面からのアクセスも格段に向上する。
その蒲蒲線をめぐって動きがあったのは昨年10月。矢口渡から京急蒲田までの区間1.7キロを第1期整備事業として国土交通省が認可したのだ。その部分の整備を担うのは、東急と大田区が共同で出資し、設立した第3セクターの羽田エアポートラインで、地下トンネルの概略設計や環境影響評価、測量調査などを委託する事業者もすでに決定している。
現在は、関連するすべての路線が地上を走り、中でも京急蒲田駅は線路も高架化されている。2つの蒲田駅間の800メートルを結ぶことで利便性が確実に高まることは理解できるが、これらを地下化するのは簡単ではないだろう。第1期整備事業の後には、第2期整備事業として京急蒲田から大鳥居までの整備事業が控える。第2期を担うのが京急側だ。
東急と京急で異なる線路の幅
実は整備計画を2つに分けるのには、ワケがある。鉄道の線路は2本のレールで一対をなす。その幅を軌間(ゲージ)と呼ぶ。東急と京急では、ゲージが異なるのだ。
東急やJRの在来線のゲージは1067ミリなのに対し、京急のそれは新幹線と同じ規格の1435ミリと東急より368ミリ広い。基本的にこれを統一しない限り、東急の車両が京急空港線を走る可能性は低いだろう。
世界的には異なるゲージでも走れるフリーゲージトレインも開発されているが、日本では実用化されていない。
また、東急の1067ミリでも、京急の1435ミリでも走れるように、レールを3本にする三線軌条という方法もあるが、現状では何も決まっていないため、ゲージ問題の解決策は見えないのだ。
蒲蒲線は実現に向けて高いハードルがあるにせよ、一歩一歩前進しているのも事実。総事業費は1248億円を見込み、令和20年代前半、すなわち2040年前後の開業が予定されている。
開業後は朝の混雑時に1時間20本、それ以外は同10本程度を運行するとされている。
東横線から直通運転する列車は多摩川、下丸子、蒲田、蒲田新駅の各駅に停車することを想定。たとえば、開業前に乗り換えと徒歩で36分かかった中目黒駅-京急蒲田駅は13分短縮されて23分で結ばれる。自由が丘駅からは同22分短縮されて15分で到着するという。
駅ビル2階のデッキから東西南北を回遊
そんな効果が予測される一方、地元では蒲蒲線の実用化で「蒲田をパスして東横線方面に流れる人が増えるのではないか」と懸念する人も少なくない。大田区鉄道・都市づくり部拠点整備第2担当課長の蔵方博史氏が言う。
「蒲田は、戦災復興の区画整理事業が行われてから、機能更新がほとんど行われていません。そのためJR蒲田駅周辺地区は全体的に老朽化が進んでいます。そのため、新空港線の整備をチャンスとしてとらえ、駅周辺の整備も一体的に進めていく方針です」
JR蒲田駅東口では現在、駅前の整備工事が進む。将来的には、駅ビル2階部分にデッキ広場が設けられる。西口も同様に整備され、デッキの両端を結ぶことで、東西が結ばれる。駅の利用の有無にかかわらず、24時間利用可能だ。
東西の連絡通路が混雑し、中央改札付近から東急方面にかけてクランク状になるため混雑し、動線も混線しやすい上、終電後は通路そのものが途絶える。こうした現状のデメリットを克服するのが、デッキ設置による安全な回遊性の確保と災害時などの東西の移動の確保だ。
さらに西口では、デッキから地下の蒲蒲線のホームをつなぐタテの動線としてエスカレーターやエレベーターなども整備される計画だという。
では、地元の人は蒲蒲線や駅周辺の整備工事をどうみているのか。蒲田西口商店街振興組合の森田充浩理事長に話を聞いた。
「蒲田にとって蒲蒲線の開通はひとつの起爆剤ですから、これによって蒲田の新しい姿をつくっていこうということに対しては当然期待しています。人の流れも変わるでしょうから。ただ、地元の人が蒲蒲線ができることで便利になるかというと、決してそんなことはないでしょう。利便性が向上するのは、田園調布をはじめ東急沿線に住む方々ではないでしょうか。再開発による利便性の向上はともかく、もっと大事なのは蒲田らしさです。蒲田はいい意味ですごく親しみやすい、庶民的な街で、この商店街もほかの街に比べて安くて、フレンドリーな店ばかり。ですから、再開発で駅前が新しくなっても『蒲田らしさ』はいつまでも失わないでほしいですね」
蒲蒲線が一部開業する40年前後、安くて親しみやすい蒲田はどうなっているのか。蒲田らしさを残しつつ、新たな魅力が見つかると、蒲田の人気も蒲蒲線とともに爆発するかもしれない。
