7月26日、リブゴルフ第10戦(英国)でのスコット・オニールCEO

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今年4月から始まった「消滅危機」

 サウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」の支援を受け、2021年に創設されたリブゴルフ。翌2022年から試合開催を開始し、これまでの4年間は毎年、派手で賑やかなチーム・チャンピオンシップ(チーム選手権)でシーズンを締め括ってきた。

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 しかし、PIFからの支援が2026年いっぱいで打ち切られることが今年4月に突然発表されると、リブゴルフはいきなり消滅の危機に瀕し、今季の大会開催も危ういと言われ始めた。

 スコット・オニールCEOは「今季の大会は予定通りだ」と、すぐさま強気で言い切った。しかし、ルイジアナ大会は早々に延期・中止され、8月27日から30日に開催が予定されている最終戦のチーム・チャンピオンシップは「開催されないのでは?」「開催したくてもできないのでは?」という噂が6月ごろから広がり始めた。

7月26日、リブゴルフ第10戦(英国)でのスコット・オニールCEO

 というのも、試合会場である米ミシガン州デトロイトのザ・カーディナルでは、選手たちが歩く大がかりなブリッジや大規模なコンサートのためのビッグステージ、ファンサービスのためのホスピタリティテント、巨大な観覧席といったインフラの設営が、本来なら開催2か月前ぐらいから開始されているはずだったからだ。

選手たちにメモで伝達

 そうでなければ試合開催に間に合わないと見られていたが、2か月前どころか、1か月前になっても、2週間前になっても、設営工事は何ひとつ始まらなかった。それなのに、オニールCEOからは、大会開催の可否に関するアナウンス等々が一切行われないという曖昧な状態が続いていた。

 だが、今週のインディアナポリス大会(8月20日から23日)の開幕を控えた17日、オニールCEOは選手たちにメモを渡し、最終戦のチーム・チャンピオンシップは行わないことをようやく伝えた。

 メモの中には、インディアナポリス大会が今季のチーム優勝を決めるチーム・チャンピオンシップを兼ねることも併記されていた。

 いずれにしても、このインディアナポリス大会がリブゴルフの今季の最終戦となることが、とうとう明らかになった。

「今季は予定通りだ」と豪語したオニールCEOだが、画策してきたリブゴルフの生き残り策は、どうやら失敗だったと言わざるを得ない。

会場設営の工事は行われず

 それにしても、オニールCEOは、チーム・チャンピオンシップの中止をなぜこれほどまでにひた隠しにしてきたのか?

 言うまでもなく、その答えは、その事実を「認めたくない」「言いたくない」「知られたくない」というオニールCEOの気持ちや考えの反映だったに違いない。

 本来のチーム・チャンピオンシップの開催予定日が目前まで迫っても、試合会場では設営工事が何一つ行われていなかったという事実は、大会が中止されることを明らかに示していた。「この状況では、最終戦は開催されないはずだ」「設営が間に合うはずがない」といった噂は、地元のデトロイトをはじめ、全米中、世界中にすっかり広がっていた。

 しかし、それでもリブゴルフの公式ウェブサイト上では、チーム・チャンピオンシップの入場チケットが販売され続け、8月に入ってからも購入できる状態だった。チーム・チャンピオンシップ開催を伝えるページは、「更新されていない状態のまま、ずっと公開され続けていた。意図的に放置されていた」と報じた米メディアもあった。

 一方で、PIFからの支援打ち切りが決まって以来、オニールCEOはPIFに代わる新たな出資者探しに奔走し、8月5日には「リードインベスター(筆頭投資家)を得た」と、誇らしげに発表した。さらには、そのリードインベスターに続く「マイナー投資家の候補にたくさんの企業が名乗りを上げている」と、思わせぶりなことも口にした。

「ラーム離脱報道」がダメ押し?

 これにより、「リブゴルフは2027年も生き残ることができるようになった」と報じられた。だが、その直後には、リブゴルフの顔的存在となってきたスペイン出身選手のジョン・ラームが「今季限りでリブゴルフから離脱し、2027年からはDPワールドツアーを主戦場とする模様だ」と英紙テレグラフに報じられた。

 リブゴルフが来季も生き残ることができたとしても、ラーム無きリブゴルフに、どこまで魅力があるのか。そう考えて、出資を検討していた企業や投資家が、挙げかけた手を下ろす可能性も指摘され始めていた。

 そんな状況下、オニールCEOとしては、ネガティブな事実や事情は「明らかにしたくない」「できる限り、隠したい」「伏せたい」と思ったことだろう。

 だからこそ、チーム・チャンピオンシップ中止の発表は、ぎりぎりまで行わなかったのだと考えられる。とはいえ、ビッグ・イベントの中止は、いつまでも隠し通せる話では、もちろんない。

 8月13日には、リブゴルフの公式サイトに、「チーム・チャンピオンシップのチケットは、もはや販売されません」という記述が唐突に登場し、翌14日にはサイト上での販売が完全に中止された。

 そして17日、チーム・チャンピオンシップが中止され、開幕を控えたインディアナポリス大会が今季の最終戦となることが、ついに選手たちにメモ書きによって伝えられた。

デシャンボーは我が道を進む

 リブゴルフの苦しい台所事情を、オニールCEOが外部に対してどれほどひた隠しにしたとしても、内部の首脳陣やスター選手にどこまでも隠し切れるものではない。

 リブゴルフの「ビッグ2」の1人であるブライソン・デシャンボーは、リブゴルフに忠誠心を抱いており、たとえリブゴルフが消滅するとしても、「PGAツアーやDPワールドツアーに戻るつもりはない」と言い切っている。そして、自身がすでに着手して人気を博しているYouTubeチャンネルを活用し、自ら大会を開催していく意向を以前から口にしている。

 それゆえ、デシャンボーはリブゴルフに最後まで残った上で、そこから先は我が道を進むと見られている。

 しかし、「ビッグ2」のもう1人、ジョン・ラームには、デシャンボーのような忠誠心は無いと思われている。

 というのも、リブゴルフの窮状が明らかになった途端、ラームはこれまで頑なに拒否してきたDPワールドツアーからの罰金を全額支払い、「リブゴルフ消滅に備えて、早々に次なる戦いの場の準備に入った」と言われているからだ。

「今季最後」の大会どころか

 前述の通り8月5日にオニールCEOが「新たな出資者を得た」などと発表した際は、リブゴルフに2027年シーズンが到来する模様だと報じられたものの、リードインベスターの名前も投資額も契約期間もすべて伏せられていることは、何やら謎めいている。

 そのあたりに「何か」を感じ取ったのか。ラームが今季限りでリブゴルフから離脱し、2027年からDPワールドツアーで戦う意向を固めたことが、英紙によって報じられた。

 昨年末にブルックス・ケプカが去り、今年初めにはパトリック・リードも去り、4月にはPIFという唯一で最大だった後ろ盾を失ったリブゴルフ。8月にはラームを失うことが報じられ、リブゴルフを象徴する大会でもあった最終戦のチーム・チャンピオンシップも、ついに中止せざるを得ないところまで追い詰められた。

 もはや、リブゴルフの崩落は止まりそうもない。リブゴルフの終わりは近いと、ゴルフ界の多くが感じ始めている。

 今週のインディアナポリス大会の開幕前日、オニールCEOは会見に臨んだが、そこでもリードインベスターに関する詳細はやっぱり明かされなかった。噂されている破産申請に関しても「あらゆる可能性を除外しない」と、曖昧な返答をするばかり。

 それでもオニールCEOが口にした「前へ進むべきときだ」という強気の発言は、もはや空虚な響きに感じられる。

 インディアナポリス大会は、今季最後の大会どころか、「リブゴルフとしてのラスト大会になるのではないか?」。そんな声も、聞こえている。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部