今月からNetflixで配信が始まった『ラヴ上等』シーズン2が波紋を呼んでいる。元不良たちの恋愛を描く同作だが、出演者の一人が過去を振り返る場面で「人に火をつけた」と告白したことがきっかけとなった。ネット上では「一線を越えた人を面白がって使うのは駄目」「番組に起用するのはおかしい」といった批判の声が相次いだ。

【映像】「刺青に小指なし」法務省とのコラボポスター

 さらに波紋を広げたのが、「更生上等」という見出しのもと法務省が同番組とタイアップしたポスターだ。法務省はホームページで「本作品をきっかけに広く『更生保護』の取り組みを知っていただきたい」と説明したが、「公的機関として更生保護の捉え方が軽すぎる」「被害者に対する配慮がなさすぎる」との声が広がり、批判はさらに強まった。

 『ABEMA Prime』では、過去の「悪自慢」は許されるのか、不良をエンタメ化することの是非、そして「更生」とは何かについて考えた。

■武勇伝か、後悔の告白か

 司会の小松靖アナウンサーは、この出演者が「人に火をつけた」と独白したシーンについて、「武勇伝として語ったわけではなく、直後に『後悔している』と口にしていた。家庭の事情などで非行に走った経緯を説明する中で、極端な行動を取らなければ自分がいじめの標的にされるため、許されないことだと理解しつつもやってしまった、という文脈だった」と補足した。

 元文部科学副大臣で「ヤンキー先生」としても知られる義家弘介氏は、「視聴者からすると、どういうシチュエーションでそういうことになったのか全く分からない。人に火をつけたら殺人未遂にもなりかねない相当な事件だ」と述べた上で、「何かを守るために自分の過去を語ることと、自慢するために語ることの間に私は一線を引いている。過去の武勇伝を胸を張って語るのは相当ダサいと思う」と語った。

 組織的な詐欺事件で懲役8年の判決を受け、現在は複数の会社を経営する「懲役社長」こと草間清隆氏は、「自分がやった犯罪行為を具体的に公言することは間違っている。被害者が見ている可能性が高い中で『火をつけた』などと言えば、当時の記憶がフラッシュバックする可能性もある」と否定的な見解を示した。

 一方、過去に『ラヴ上等』への出演オファーを受けたこともあるというTikTokerのYunaは、「悪事を働いている時、それを誇りに思っているわけではない。私も喧嘩をしていた時期もあった。他に居場所がなく、一人で更生するのは難しい。でも『ラヴ上等』のように人を傷つけた人たちが更生する姿を見れば、『私でも更生できるんじゃないか』と思う人は多いと思う。結果的に将来の被害者が減るのなら素晴らしいコンテンツなのでは」と述べ、ヤンキーにスポットライトを当てること自体には賛成の立場を示した。

 学生時代に不良からいじめを受けた経験を持つ丸刈り坊主さんはここまでの議論を受けて「あり得ないと受け止めている」と述べ、自身の経験を明かした。「サンドバッグにされたり、毎日自転車で送り迎えさせられたり、ボコボコにされたりしながら、受験勉強もしていた。その後も誰かの顔色をうかがい、怒られないようビクビク生きてきた根底には、ヤンキーに虐げられた経験がある」と語る。その上で、「先ほどヤンキー先生が『弱き者をいじめるのはダサい』と言っていたが、私の見てきた景色は全然違う。加害者が傷を舐め合っている姿を見せられる側の気持ちになって考えてほしい。想像力が欠如したコンテンツだ」と批判的な見方を示した。
 

■法務省とのコラボは何が問題だったのか

 法務省は番組からの取材に対し、「作品の完成後にNetflix様からタイアップのお話をもらい、できあがった作品を事前に確認した上で決定した」と経緯を説明。「『ラヴ上等』は出演者が過酷な生い立ちや過去の罪など生きづらさを抱えながら自分と向き合い葛藤し成長する姿が描かれている。この点が犯罪をした人などを地域の中で立ち直りを支え再び歩み出せるようにする『更生保護』にも通じると考えた」とその目的を明かした。

 しかし義家氏は、「更生上等」というキャッチフレーズそのものに強い違和感を示す。「不良の世界で『上等』は、『喧嘩上等、お前やってやるぞ』という時に使う。『ラヴ上等』は、『堂々と愛してやるぜ』というポジティブな使い方だ。だが更生は、過ちを犯して、それを償い、社会の中で自分を生かしていくことだ。『更生上等』という組み合わせは、ちょっと的が外れている」と率直に述べた。さらに「『更生上等』と聞いたら、丸刈り坊主さんのような被害に遭った人たちは相当傷つく。法務省にはよく考えていただきたかった」とも語った。

 草間氏は「入れ墨が入って小指がない人が写ったポスターを法務省が公認するのは、“容認”しているように映るのでよくない」と指摘した上で、「あの発言は編集でカットする判断もあったはずだ。数字を狙いすぎたのではないかと感じる」とも述べた。

■被害者の傷と加害者の居場所の問題

 Flags Niigata代表の後藤寛勝氏は、「居場所は誰にでも必要だ。加害者にもそれなりの理由があって、傷があって、居場所がなかったはずだ。悪事で名を馳せるよりも、こういう形でSNSで人気者になって次の道に進めることの方が重要だと思う。居場所としてあればいい」と語り、コンテンツそのものには賛成する立場を示した。

 一方で後藤氏は「丸刈り坊主さんのように、心の傷を負わされた人たちが立ち直る際、邪魔するものがあってはいけない。加害者側の立ち直りのコンテンツがあるなら、その逆、被害者側のコンテンツもNetflixは制作すべきだ」と提言した。

 丸刈り坊主さんは最後にこう語った。「今日はずっとアウェイになると思っていたが、寄り添ってくださる方のお話を聞いて、明るい気持ちで終われそうだ」。

(『ABEMA Prime』より)