伊東前市長の卒業証書「金庫に保管」は証拠隠滅か職務か? 刑事告発された弁護士は「暴論」と真っ向反論
静岡県伊東市の前市長、田久保眞紀氏が在宅起訴された学歴詐称問題をめぐり、田久保氏の弁護人が「卒業証書」とされる文書の押収を拒み、保管し続けているのは証拠隠滅にあたるとして、伊東市在住の女性が8月19日、東京地検に刑事告発した。
告発されたのは、福島正洋弁護士(東京弁護士会)。告発人の女性は同日、福島弁護士について東京弁護士会に懲戒請求もおこなった。
●弁護人は「押収拒絶権」を行使した
田久保氏は2025年5月の伊東市長選で初当選したが、その後、東洋大学を卒業したとする経歴をめぐって学歴詐称問題が浮上した。
田久保氏は当初、市議会議長らに「卒業証書」とされる文書を見せたものの、その後、大学を「除籍」されていたことが判明した。
告発状によると、静岡県警が今年2月、有印私文書偽造・同行使などの容疑で田久保氏の自宅を捜索した際、福島弁護士は刑事訴訟法105条に基づく「押収拒絶権」を主張した。
告発側は、その後も「卒業証書」とされる文書を東京都港区にある自身の事務所の金庫内に保管し続けた行為が、刑法上の「証拠隠滅」にあたると主張している。
●告発した女性「市民の知る権利奪った」
告発した女性らは8月19日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、告発に至った経緯を説明した。
告発した関川永子さんは「福島弁護士は、公人であった田久保前市長への説明責任を回避するアドバイスをし、市民の知る権利を奪ったと私は思っています」とうったえた。
弁護人が依頼人の利益を守る立場にあることには理解を示しつつ、次のようにも語った。
「公人の責務より依頼人の利益を優先させることが、はたして社会正義を維持するための弁護士の職務として許されるのか、大いに疑問に思っています」
関川さんの代理人をつとめる浦川祐輔弁護士は、刑事訴訟法105条に基づく「押収拒絶権」について、制度そのものに問題があるわけではないと説明する。
一方で、今回の「卒業証書」とされる文書について、押収拒絶権の行使という名目で捜査機関への提出を拒み、保管し続けることは「制度を利用した脱法行為である」との見解を示した。さらに「強制捜査を妨げ、ラインを超えた」と批判した。
●福島弁護士の回答(全文)
弁護士ドットコムニュースの取材に対し、福島弁護士は8月19日、以下のように回答した。
1 そもそも弁護人は、検察官の捜査に協力する機関ではなく、被告人の防衛権を徹底的に保障するために存在する。重要証拠を捜査機関に差し出さないことは、刑訴法105条に裏付けられた弁護人の正当かつ義務的な職務遂行であり、これを『証拠隠滅罪』と呼ぶことは、憲法が保障する弁護人依頼権や不利益不供述権を根本から否定する暴論である。
2 なお、刑事弁護人による裁判外の行為が、正当な業務行為(刑法第35条)として違法性阻却されるかという論点について、メルクマールを示した丸正名誉毀損事件(昭和51年3月23日第一小法廷決定)によれば、「その行為が法令上の根拠をもつ職務活動であるかどうか、弁護目的の達成との間にどのような関連性をもつか、弁護を受ける被告人自身がこれを行つた場合に刑法上の違法性の阻却を認めるべきどうかの諸点を考慮する」と 判示されたところ、証拠資料を預かり続ける行為は、)[畩紊虜拠があり、依頼者の無罪を主張するという弁護目的と直接的な関連性があり、H鏐霓佑遼標羝△鯏法に代理・代行しているに過ぎないのであるから、当然に違法性が阻却される。
3 告発者は、元伊東市長の事件について、事案の真相を何一つ知らない。報道されたニュースを元に勝手な思い込みで騒いでいるだけである。元伊東市長の刑事事件は否認事件であり、これまで報道された内容は必ずしも真実ではない。検察官の主張がすべて正しいわけでもない。未確定の曖昧な事実ばかりを前提に、弁護活動の是非を論じること自体がナンセンスである。
4 否認事件において、あくまでも依頼者を信じて戦うことは、刑事弁護人としての矜持であり、最低限の資質である。これを欠く弁護士こそ、早々にバッジを外すべきであろう。

