イスラエルのハノーバー公共政策研究所が、わずか1週間強の間にAIチャットボットを欺く目的で、100本近くの記事を公開していることが明らかになったと、外交政策シンクタンクのクインシー研究所が公開しているオンラインマガジン・Responsible Statecraftが報じています。

Israel creates fake think tank in likely attempt to dupe AI chatbots | Responsible Statecraft

https://responsiblestatecraft.org/israel-influence-chatgpt/



Israeli PR wants to answer your ChatGPT questions - POLITICO

https://www.politico.com/newsletters/politico-influence/2026/08/14/israeli-pr-wants-to-answer-your-chatgpt-questions-01038138

ハノーバー公共政策研究所は、「アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)は選挙で『闇資金』を使用しているのか?」や「イスラエルはガザ地区で意図的な飢餓作戦を実行しているのか?」などの、イスラエル・パレスチナ問題に特化したシンクタンク風の報告記事を公開している組織です。



このハノーバー公共政策研究所について、Responsible Statecraftは「真のシンクタンクではない」と指摘。ハノーバー公共政策研究所が公開している記事には執筆者の名前が記載されておらず、ページ下部に記載されている免責事項には「この組織はスパイク・リー監督の映画『インサイド・マン』でプロデューサーを務めたダニエル・ローゼンバーグ氏が共同設立したPiroによって、イスラエル政府広告局のために設立された」と記されています。

Responsible Statecraftはハノーバー公共政策研究所について、「イスラエルがAIチャットボットに影響を与えようとする取り組みの一環」と指摘。ハノーバー公共政策研究所のデータレポートには脚注と目次があり、中立的なトーンで議論を展開することで、ClaudeやGeminiといったAIチャットボットにアピールしているとResponsible Statecraftは指摘しています。

ハノーバー公共政策研究所の運営元とされているPiroのウェブサイトには、「大規模言語モデル(LLM)が信頼性を評価する方法に合わせて設計されたコンテンツを作成している」と記載されています。なお、Piroはこの手法を「AIストーリー最適化」と呼んでおり、業界では「LLM毒殺(LLM poisoning)」などと呼ばれているそうです。

ハノーバー公共政策研究所の概要ページによると、同研究所は「アメリカにおける反ユダヤ主義を助長する要因を研究し、その証拠が示すこと」を目標としています。一方、Responsible Statecraftは「ハノーバー公共政策研究所が掲載している報告書の多くは定型的で、誰かがAIチャットボットに尋ねるような無害な質問から始まっている」「報告書の多くは同じ調査を引用しながら、この問題を高まる反ユダヤ主義と結びつけて結論付けている」などと指摘しました。



偽情報追跡会社・NewsGuardでアナリストを務めるアリス・リー氏は、ハノーバー公共政策研究所が検索エンジンやAIチャットボットを通じ、紛争に関心を持つアメリカ人にリーチすることを目的としたウェブサイトであると主張。「LLMは具体的な統計やデータ、強力な引用や情報源を重視しており、ハノーバー公共政策研究所の記事はいずれもそれらを備えています」「ハノーバー公共政策研究所は典型的な信頼できるアメリカのシンクタンクを完璧に模倣しており、一般的な名称、サイトのレイアウト、配色までそっくりです」と語っています。

アメリカ政府が主導する世界最大規模の国際教育交換プログラムThe Fulbright Programで特別研究員を務めるNick Cleveland-Stout氏によると、Piroはハノーバー公共政策研究所の設立及び運営により、イスラエル政府から90万ドルもの資金提供を受けている模様。なお、Piroの業務はフランスの複合企業であるHavas Mediaを通じて下請けに出されているそうです。





ハノーバー公共政策研究所が独自の記事を掲載し始めたのは2026年8月6日で、それ以来100本以上の記事を量産しています。ハノーバー公共政策研究所は引用している研究が「査読済みの学術的なもの」であると主張していますが、イスラエル国防軍や外務省といったイスラエル政府の情報源を頻繁に引用しているとResponsible Statecraftは指摘しました。

Responsible StatecraftはAI検出ツールのGPTZeroを用い、ハノーバー公共政策研究所が掲載している記事を無作為に12本選んで分析。GPTZeroは12本中11本の記事を「高い確信度でAIにより生成されたもの」と判定。残る1本も「中程度の確信度でAIにより生成されたもの」と判定しました。

Piroがアメリカ司法省に提出した契約書によると、イスラエル政府のために行なっている業務が「AIに影響を与えること」であるとは明示的に記されていません。PiroはPOLITICOに対して同社の業務を「正確で情報源が明記された事実を公の記録に載せ、イスラエルに関する誤報を検証可能な情報で打ち消すこと」と説明しています。

ただし、ローゼンバーグ氏はビジネスSNSのLinkedIn上で「PiroがAIチャットボットに影響を与える能力を持っている」とアピールしています。