実際のマーキングの事例(警視庁生活安全部Xより@MPD_yokushi)

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自宅の郵便ポストに付箋が貼られていたり、玄関扉の前に石が置かれていたり…そんな経験はないだろうか。さほど気にも留めず、放置していたら、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあり、注意が必要だ。

警視庁生活安全部は、こうした見知らぬ印が、窃盗や強盗といった犯罪の下見をしたことを示す、いわゆる「マーキング」である可能性があるとして、公式Xで画像とともに公開し、注意を呼びかけている。

警視庁が注意喚起する「マーキング」とは

警視庁生活安全部生活安全総務課は、以下のような印を「要注意」として挙げている。

「A」と記載のテープが貼ってある ポストに「付箋」が貼ってある ポスト付近に「文字」が書かれている 玄関扉の前に石が置かれる

これらは、犯罪の下見活動の可能性がある印とされている。

たとえば、文字が記載されていた場合、「M」は男性、「W」は女性、「S」は一人暮らしなどといわれ、犯罪者がターゲットにする際の“メッセージ”的に使われていたりするという。

警視庁は「必ずしも犯罪に直結するとは言えないものの、防犯対策の観点から注意が必要」と説明したうえで、不審なマーキングを見つけたら「取る・剥がす・消す」こと、そして消す前に写真を撮って警察に通報するよう呼びかけている。

マーキングとは何か、どこに残されるのか

セキュリティ・防犯対策大手のALSOKによると、マーキングは空き巣や強盗が下見の際に目印として残すことがあるサインのことだという。自分のメモとして残しているだけでなく、複数人の犯行グループが情報共有するために利用しているケースがあるとされる。

一方で、すべてのマーキングが犯罪目的とは限らない点にも注意が必要だ。訪問販売員や新聞販売員などが営業の目印としてつけていることもある。見慣れない印を見つけた際は警戒しつつも、冷静に対応することが求められる。

マーキングされやすい場所は、玄関ドア、表札、郵便ポストなどが代表的だが、空き巣の侵入口となる窓やベランダ周辺も狙われるケースがあるという。見落としやすい底面や裏側も定期的に確認することが推奨されている。

発見したらどう対応するか

ALSOKは、マーキングを発見した場合の対応として3つのステップを示している。

まず「証拠として撮影する」。消す前にスマートフォンなどで撮影し、日時や場所とともに記録しておくことが重要だ。

次に「警察に相談する」。最寄りの警察署・交番に写真を持参して相談することで、地域の防犯パトロールを強化してもらえる場合がある。

そして「すぐに消す」。そのまま放置していると、「書かれたことに気づかれていない=防犯意識が低い」と思われ、ターゲットにされやすくなるためだ。

素材別マーキングの消し方

マーキングを消す方法は、種類や素材によって異なる。

油性マジックには、無水エタノールや除光液が有効だ。布やコットンに少量含ませ、インクを溶かすように優しく拭き取る。木材など吸収性の高い素材は強く擦らず少しずつ処理するのがポイントで、塗装面へのメラミンスポンジの使用は避けるべきとされる。

チョークは水溶性のため、濡らした雑巾や布で拭き取ることができる。油性のチョークマーカーの場合はアルコールや専用の落書き落としが有効だ。

シールやテープは、ドライヤーで30秒~1分ほど温めて端からゆっくり剥がす。残った糊はシール剥がし剤やアルコールで除去できる。

刃物などで意図的につけられた傷は、軽微なものは補修ペンや補修シートで、深い傷はやすりで周囲を整えてから補修材を充填する方法で対応する。

マーキングを消した後も油断は禁物

ただし、マーキングを消しただけで安心してはいけない。一度ターゲットとして見られた可能性がある以上、「侵入しにくい家」「狙いにくい家」に変える対策を組み合わせて行うことが求められる。

具体的には、窓や玄関ドアの補助錠設置や防犯フィルムの貼付け、センサーライトや防犯カメラの設置、郵便物を溜めないといった生活習慣の見直し、そして近隣との日頃からの関係構築など、複合的な対策が有用だ。

マーキングは犯罪になるのか

ではそもそもマーキングをすること自体の犯罪性はどうなのか。刑事事件に詳しい堀田和希弁護士に聞いた。

玄関ドアや表札、ポストなどに勝手にマーキングをされた場合、器物損壊罪などは成立し得るのですか。

堀田弁護士:「成立し得ます。ビラなどであれば軽犯罪法違反もあり得ます。程度については、物理的に除去できない(傷がついている、塗料が落ちない等)場合や、頻度ないし数量が多い(何度消してもマーキングされている、シールが何枚も貼られている等)場合は実際に立件され得るかと思います」

どういうケースから犯罪といえる境界線になるのでしょうか?

堀田弁護士:「初期段階で直ちに立件とはならないかと思います。器物損壊等で立件するためには防犯カメラ映像等のマーキング行為時の確たる証拠がある場合や、何度もマーキングがなされたり、シールが何枚も貼られていたりするなど頻度や数量の程度が酷い場合でないと立件されにくいかと思います」

証拠として残しておくべきものはどんなものですか。

堀田弁護士:「まずは状況を残しておくために写真を撮影することです。写真撮影は家屋全体(マーキング等されている場所も含む)、マーキング等がされている家屋部分(玄関ドア等)の全体を撮影し、そのうえでマーキング等の内容がわかるように至近距離で撮影します。

そのうえで警察に相談しに行き、地域で空き巣や特殊詐欺のマーキング等がされ得る事件が連続して発生していないかどうかを確認したうえで、場合によっては被害届を提出した方が良いです。

併せて、いつマーキング等に気付いたか、いつまではマーキング等がなかったのかなど、マーキングがされたおおよその時期を特定したうえで相談すると、話を真剣に聞いてもらいやすくなるでしょう」

頻発する場合、どのように対処するのがいいのでしょうか。

堀田弁護士:「防犯としては警察に相談することが一番です。頻発する場合は証拠を残すためにマーキング箇所付近に防犯カメラを設置すること、また再犯対策としては犯人に警告するために防犯カメラを設置している旨の貼り紙なども考えられます」

SNSでマーキングを注意喚起した警視庁も「ご家族やご近所にもお知らせください」と呼びかけている。単独でなく、周辺エリアが結束し、ターゲットにしづらい地区と認識させることも重要だ。

犯罪の予兆となり得る怪しげな印ひとつを見逃さないというミクロの目。そして、地域全体で防犯意識が強いことを知らしめるマクロの視点と意識。その両輪で向き合うことが、地域に犯罪を寄せ付けず、被害を未然に防ぐ大きな一歩となる。