JR錦糸町駅

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「20年以上、客引きやっています。よかったら、お安くしますよ。キャバクラ、ガールズバー、おっぱい、ヘルス、裏スロ。インカジ。なんでもあります…」

東京・墨田区の錦糸町で男(66歳)が、夜の飲食店街で客引きをしていたが、私服警察官に声をかけた。そのため、東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(不当な客引行為等の禁止)に違反するとして行われた裁判は、東京地裁(多田裕一裁判官)で17日に開かれた。

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週3日の客引きで月10~20万円の収入

男は累犯前科があり、前回の裁判では「生活の立て直しのために、生活保護を受けることを検討する」と話していたというが、ビデオボックスで寝泊まりし、客引きの生活をしていた。なぜ、生活保護を受けなかったのか。

男は、白髪でやや小太り。白いフレームのメガネをし、上下黒のジャージ姿で法廷に現れた。

起訴状によると、男は高校を中退した後、職を転々として客引きの仕事をするようになった。住まいはなく、ビデオボックスで寝泊まりしていた。20年以上、城東エリア最大の歓楽街である錦糸町で客引きをしていた。客引きの報酬は、客が支払った額の20~30%。週3日、客引きをし、月10~20万円の収入を得ていたという。

今年に入ってから、JR錦糸町駅南口周辺の飲食店街で、客引きをしていたところ、私服警察官に声をかけた。その際、警察官に客引きをしている男の音声が録音されて、迷惑防止条例違反で現行犯逮捕された。

男はこれで7回目の逮捕。2025年7月に出所し、今回も客引きをしていた。「生活費を稼ぐためです。私は、毎回、何の仕事をしてもうまくいきませんでした。お金がないなかで神奈川県から東京へ出てきました。野宿をしたこともあります。そのため、客引きをしながら、食いつないできました」と過去を振り返る。客引き以外の仕事をしたこともあるというが、住居がなかったために、なかなか雇ってくれる会社はなかった。

そんななか、前回の同様の裁判で「生活保護を受けることを検討する」と話していたというが、刑務所から出てきた後、生活保護を検討しなかった。

「行政に頼りたくなかった。できれば、自分で頑張りたかった」

世代的にも、できるだけ福祉に頼りたくないという気持ちはわからなくはないが、生活保護を受けることで住居を確保でき、生活を立て直すことはできる。ただ、行政に相談に行くことはしていた。生活保護を受けながら、更生施設での生活を提案された。

人生で唯一、仲間ができた夜の錦糸町

「『(更生施設に)おいで』と言われたこともありました。でも、『1カ月間、寮に入らないといけない』と言われました。その決断ができませんでした。東京に来て、客引きをしているなかで友だちができました。その友だちとお客さんの笑顔を見たいと思っていました。そうした環境である錦糸町にいたかったのです」

男にとっては、高校中退後、孤立しているなかで、比較的に充実していたのが夜の錦糸町でできたネットワークだったのだろう。60年の人生の中で唯一、仲間ができた居場所だった。人間関係を捨ててまで、生活保護を受けることはできなかった。

しかし、今後も客引きを続けていたら、逮捕・起訴を繰り返されてしまいかねない。今後はどうするのか。そう検察官に聞かれた男は「これまでは生活を立て直すことはしなかったかもしれません。どうして他の仕事を探さなかったのかはわからない。しかし、今回はかなり参っています」と述べた。夜の錦糸町を離れることができるのだろうか。

また、裁判官は「なぜ生活保護を受けられなかったのか」と、再度、質問した。男は「錦糸町から離れたくなかったから。でも、今回の裁判もあったことで、もう懲り懲りです」と話した。

証言台から被告人席に戻ると、メガネを外し、涙を拭った。はっきりと涙を流しているように見えた。果たして、涙は本当なのか。本当だとして、行動の変化につながるのだろうか。

検察側は拘禁刑10カ月を求めた。判決は26日に下される。

文/渋井哲也 内外タイムス