「米空母が不在」の太平洋、今後の中国との兼ね合いはいかに―仏メディア
米AP通信の8月15日付報道によれば、米国海軍空母のジョージ・ワシントンが太平洋海域を離脱し、中東地域に向かっている。太平洋で「米空母の不在」は永続するわけではないが、中国の動きとの兼ね合いもあり、米国の同盟国に与える影響、特に心理面での影響は大きいと考えられる。フランスメディアのRFIが伝えた。
ジョージ・ワシントンは中東に展開中の空母のエイブラハム・リンカーンと交代する見通しだ。現在の状況は、トランプ政権によるイランへの軍事行動が、米国の空母部隊に大きな圧力を与えていることを示している。同時に、中国がインド太平洋地域で日増しに強硬な態度を示し、挑発的な行動を頻繁にとっていることは大いに注目に値する。
空母「ワシントン」がアジアを離れて中東へ向かい「リンカーン」と交代する背景には、「リンカーン」があまりにも長期にわたり配備されてきた事情がある。空母内で乗組員の精神上の問題や物資供給の問題が出ているとされる。「リンカーン」は本来ならば5月に帰航する計画だったが、イランに対する軍事行動を引き続き支援するため、海上での配備を大幅に延長せざるを得なかった。
今後数カ月以内に再び太平洋に別の空母が配備されれば、この地域に米国の空母がない局面は長くは続かないかもしれない。しかし事情通からは、米国とイランの長期化する軍事行動が米海軍将兵を疲弊させているとの指摘が出ている。このことは、トランプ政権がアジア太平洋地域への投入をさらに減らし、より多くの関心を西半球に向けていることも示している。
米国戦略国際問題研究所のグレッグ・ポーリング東南アジアプロジェクト主任は、「(米国)政府はずっと、西半球を除けば太平洋が最も重要な地域だと言ってきた」「米国は、これまでの目標とは完全に相反する行動をとっている」と指摘した。ポーリング主任はさらに「アジア太平洋の同盟国にとって米国は予測困難な国に見えるようになっている。中国政府は米国が他地域に気を取られる状況を喜んでいる」と論評した。
中国当局は、米国のアジア太平洋地域における軍事的な存在は、中国の台頭に対する脅威であり、台湾奪取という目標を実現するための障害と考えている。一方で米国は、経済的な観点から、太平洋地域の重要性が失われることはないと強調してきた。
米ハドソン研究所の防衛アナリストであるブライアン・クラーク氏は、「米空母の離脱により、中国がすぐさま台湾に侵攻するとは誰も考えない」と述べた上で、米空母の不在が中国に実力を誇示する絶好の機会を与えたとの考えを示した。中国はこの状況を利用し、「米国はもはや西太平洋地域で最強の力を持つ国ではなく、米国はすでに安全を保障できなくなった」と、フィリピンや日本、インドネシアなどの国々に認識させることを望んでいるのだという。
中国は日本とフィリピンに対してますます強硬な姿勢を示している。この両国はいずれも米国の重要な同盟国であり、どちらも中国と領土問題を抱えている。中国は今月、南シナ海の黄岩島付近で軍事演習を実施し、7月には中国のミサイル駆逐艦1隻が日本最南端の沖ノ鳥島周辺海域で実弾演習を行った。
米特殊作戦軍司令官のフランク・ブラッドリー大将は、米国はこの地域を放棄しないとアジア太平洋の同盟国に保証しようと努めてきたと表明した。ブラッドリー大将はマニラでフィリピンの政府当局者と会談し、特殊作戦部隊は両国の同盟関係をさらに強固にするため、合同軍事演習を強化する準備ができていると説明した。ブラッドリー大将は日本も訪問する予定だ。
米国の対中政策を研究するケイトー研究所のエヴァン・サンキー政策アナリストは、「航空母艦は米国の同盟国に重要な心理的安心感をもたらすことができる」と指摘した。サンキー氏は、米国の空母がアジア太平洋地域に不在であるという現実は、米国が中東情勢に足止めされている印象をさらに強固にしたと述べた。
一方で、クインシー研究所のマイケル・スウェイン氏は、空母に強く依存し続ける必要性に疑問を呈した。戦争の方式が急速に変化するに伴い、スウェイン氏は、中国のような敵対国に直面した場合、空母は無人機やミサイルの標的になりやすくなっていると指摘した。目標の攻撃については、小型軍艦や潜水艦も同様の役割を果たすことができ、大型空母に頼る必要はないかもしれないという。米国海軍上層部もすでに、例えば米国海軍作戦部長のダリル・コードル大将が2026年2月、巨大な空母に毎回依存するのではなく、より小型で新しい軍艦やその他の軍事資源をより多く使用するよう軍の指揮官を説得したいと表明した。(翻訳・編集/如月隼人)

