ディー・エヌ・エー南場社長が「AIオールイン」に自信を見せるも業績への効果は道半ば
「AIオールイン」を掲げるディー・エヌ・エーの株価がさえない。5日に2027年3月期第1四半期の決算を発表し、最終利益が前年同期比で3倍と好調だった。しかし、翌日の株価の終値は前日比で1.79%下がっている。
国がディー・エヌ・エーのゲーム開発に15億円支援することへの違和感の正体
市場が、AI戦略の具体的な成果を見極めようとしている可能性もある。2026年6月、創業者の南場智子氏が、約15年ぶりに社長に復帰した。南場氏はAIで生産性を高め、新規事業創出で収益を生む戦略を打ち出した。
ディー・エヌ・エーは第1四半期に74億円の営業利益を出しているが、そのうちの半分以上をゲーム事業が稼ぎ出している。2024年10月にリリースした「Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)」の貢献が大きい。
5日に開催した決算説明会において、質疑応答では7つの質問が寄せられた。そのうち4つはゲーム事業に関連するものだ。投資家の関心がゲーム事業に強く向いていることがうかがえる。
モバイルゲームの国内市場が冷え込むなか、ディー・エヌ・エーがAIという成長産業へと軸足を移そうとするスタンスは理解できる。しかし、サイバーエージェントのようにゲーム事業“も”伸ばしている会社があるのも事実だ。ディー・エヌ・エーはAI戦略を前面に掲げる一方、ゲーム事業の中長期戦略は見えにくい。
ディー・エヌ・エーは「AIネイティブ組織の実現」を進めているが、これはAIの生産性向上によって生まれた人的リソースを、新規事業創出や収益を生み出す活動に回すという構想だ。ステップが2つに分かれているうえ、タクシーアプリ「GO」などを見ても立ち上げから収益化までに時間がかかる。「AIオールイン」戦略は、投資家を納得させるのに十分な材料が必要だ。
「AIでコスト削減」見えない効果
AIによる生産性向上の効果も、疑念が拭えない。
南場氏はAIに全振りすると宣言した約1年後、講演にてその成果を強調した。例えば、人気配信アプリ「Pococha」の配信内容の審査に関する業務は、AIによって従来の4割にまで削減できたという。
Pocochaを含む「ライブストリーミング事業」の2026年4月~6月の売上は、前年同期比で微減、利益は横ばいだった。売上がやや減少する中でも利益水準を維持できた点は、一定の効果と言えるだろう。
しかし、決算の数値からは、AI戦略が業績を大きく押し上げたと判断できる段階ではない。取り組みの開始から約1年が経過しても、決算上で劇的なコスト削減効果が表れているとは言い難く、新規事業創出への期待材料もまだ乏しい。
AIは仕事の生産性を高める技術として注目を集め、企業・個人でAIアシスタントを業務効率化に使う動きが広がっている。しかし、工数を削減しただけでは、新規事業の創出につながるとは限らない。
ディー・エヌ・エーは、社員のAI活用度合いを数値化する独自指標「DARS(DeNA AI Readiness Score)」を2025年8月に導入している。踏み込んだ取り組みを進める一方、成長を期待させる具体的な材料には欠ける印象がある。株価が伸び悩むなか、投資家からAI戦略の具体的な業績貢献を求める視線は今後さらに厳しくなりそうだ。
文/不破聡 内外タイムス

