「政治家も相撲を見習ってほしい」外国人受け入れは“相撲型”がヒント 「2600年の男系男子」は神話と混同?土俵の女人禁制から考える皇室典範 相撲1500年史に学ぶ伝統と変化
OBSラジオのコーナー「加藤秀樹が語る、日本の未来構想」にて、構想日本の加藤秀樹代表が取り上げたテーマは「相撲」。一見すると政治や経済とは無関係に思えるが、相撲には今の世の中の参考になることが数多く詰まっていると指摘する。
【写真を見る】「政治家も相撲を見習ってほしい」外国人受け入れは“相撲型”がヒント 「2600年の男系男子」は神話と混同?土俵の女人禁制から考える皇室典範 相撲1500年史に学ぶ伝統と変化
1500年の歴史に見る「伝統と変化」の絶妙なバランス
相撲の歴史は古く、古事記や日本書紀に登場する力比べの神話にまで遡り、1500年以上とも言われている。
当初は収穫を占うための大切な儀式であったが、次第に天皇や貴族の前で行われる宮中行事へと変化していった。
その後、鎌倉時代や戦国時代といった強い者が尊ばれる武士の世界を経て、江戸時代には興行が始まり、庶民の娯楽として定着した。幕末には力士を描いた浮世絵も残されている。
長い歴史の中で、土俵入りや番付、まわしを締めてちょんまげを結うといった様式やルールが固まり、洗練されてきた。
一方で、相撲は決して古いものを守るだけではない。2025年に行われた大相撲ロンドン公演が大人気を博したように、世界に通用する魅力も持ち合わせている。
「ここを守る」という伝統の継承と、「ここは変えていく」という変化のバランスが「社会の対外的な開放や経済の自由化にとって参考になる」と加藤氏は語る。
外国人受け入れのヒントとなる「相撲型」と「柔道型」
加藤氏は、経済の自由化や外国人の受け入れ方には「相撲型」と「柔道型」の2つのアプローチがあると独自の視点を提示する。
「柔道型」とは、ルールなどを国際的な場で協議・決定し、国際的なスポーツとして発展していく形である。オリンピック競技にもなっているように、世界の中で国際基準が作られていくアプローチだ。
一方の「相撲型」は、土俵、まわし、ちょんまげ、部屋の制度といった「日本のルールやマナー」は決して変えない。しかし、そのルールに従うのであれば、どこの国から誰が来ても受け入れるという自由化の形である。
戦前にも日系人の力士は存在したが、テレビコマーシャルなどでも活躍した高見山以降、容貌が「外国人」の力士へのドアは大きく開かれた。
近年、横綱に外国出身者が多く名を連ね、最近ではウクライナ出身の安青錦の活躍が日本のファンから大きな声援を浴びている。
外国人が入り、横綱など強い力士として活躍したからこそ、海外での相撲人気が高まったという側面もある。
現在、日本社会では介護、建設現場、スーパー、コンビニ、飲食店、さらには農業や漁業に至るまで、技能実習生をはじめとする外国人の存在なしには成り立たなくなっている。
加藤氏は、こうした外国人の受け入れにおいては「相撲型」の自由化が適していると語る。かつて日本人が海外でベランダに洗濯物を干して怒られたように、文化の違いによる摩擦は「知らなければやってしまう」ものだ。
だからこそ、日本のルールやマナーをしっかりと教え、共有していく「相撲型」の姿勢が、共に仲良く暮らしていくための鍵となる。
土俵での救命行為と皇室のあり方
伝統の中で「何を変えず、何を維持するのか」、そして「何を変えるべきか」を見極めることは容易ではない。加藤氏はその重要性を示す例として、約8年前に京都府での巡業中に起きた出来事をあげる。
土俵上で市長が倒れた際、観客席にいた女性医師らが土俵に上がって救命行為を行い、事なきを得た。しかし、会場からは「女性は土俵から降りてください」とのアナウンスが繰り返され、議論を呼んだ。
加藤氏は、女人禁制という伝統そのものはあっていいとしつつも、その根底にある「穢れ(けがれ)を持ち込まない」という昔の感覚や目的を見失ってはいけないと指摘する。
もし、あの場で市長が亡くなるような事態になれば、それこそが最大の「穢れ」である。守るべきは「目的」であり、本来の目的を見失ってルールを優先するのは本末転倒だと訴える。
この「本質を見極めたうえで伝統を重視する」という視点は、先の国会で行われた皇室典範の議論にも通じるという。
自民党の幹部が「2600年の男系男子の歴史」と言及したことに対し、加藤氏は、相撲では神話の世界と歴史を区別しているのに、政治の世界では神話と歴史と科学、さらには皇室という日本にとって大事な存在の意義までもが混同されていると指摘する。
相撲が長い歴史の中で外国人の横綱を受け入れるなど柔軟に変化してきたように、皇室の議論においても「本当に残すものは何なのか」を整理する必要がある。
現在の皇室が国民から身近に感じられ、愛子さまを含めて広く愛され、敬われている現状を踏まえれば、象徴として残すべき本質は「国民との距離」や「敬愛の念」にあるのではないかと加藤氏は提起する。
本質を見極める柔軟性が未来を拓く
外国人力士が増えれば、彼らが普段食べるちゃんこ鍋の具材や食材も自然と変わっていく。
このように、守るべき本質(日本のルールやマナー)を維持しながらも、状況に応じて柔軟に中身を変化させていく相撲の姿勢には、日本社会がこれから良い方向に進むためのヒントが豊富に詰まっている。
「政治家も相撲を見習ってほしい」と加藤氏。
相撲の世界でも不祥事が起きるなど問題は少なくない。しかし「何が本質か」を常に考え、良識を持って柔軟に対応していくこと。相撲の歴史と現在地は、これからの日本の未来構想において、私たちに多くの学びを与えてくれている。

