「コーヒー」を突然やめると潜む“落とし穴”をご存じですか? 『離脱頭痛』の症状と原因【医師監修】

コーヒーが手放せない毎日を送っている方は、少なくないのではないでしょうか。

ふとした理由でコーヒーを飲めない日に、頭痛や倦怠感が出た経験はありませんか?それは「カフェイン離脱頭痛」かもしれません。

このセクションでは、カフェインが脳に与える影響と、コーヒーをやめたときに頭痛が起きるメカニズムについてわかりやすく解説します。

監修医師:
伊藤 規絵(医師)

旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

カフェイン離脱頭痛とコーヒーの関係:なぜ頭痛が起きるのか

カフェイン離脱頭痛は、日常的にコーヒーを飲んでいる方が突然摂取をやめると現れやすい症状です。このセクションでは、カフェインが身体にどのような影響を与えるのか、そしてコーヒーとの関係においてどのようなメカニズムで頭痛が引き起こされるのかを解説します。

カフェインが脳に与える影響とは

カフェインは、コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれる成分で、飲んでから約30~60分で血液中の濃度がピークに達するとされています。脳には「アデノシン」と呼ばれる物質があり、これが受容体(アデノシン受容体)に結合すると、眠気や疲労感を引き起こします。カフェインはこのアデノシン受容体に先回りして結合することで、アデノシンの働きをブロックし、眠気や疲労を感じにくくする作用があります。

この作用によって、カフェインを摂取した後は覚醒感が高まり、集中力が上がったように感じる方が少なくないです。また、カフェインには血管を収縮させる作用もあり、血流のバランスにも影響を与えます。日常的に摂取することで身体がカフェインの存在に慣れ、アデノシン受容体の数が増える方向に適応していくことが知られています。

この「適応」が積み重なることで、カフェインなしでは身体がうまく機能しにくくなる状態、すなわち依存状態に近い状態が生まれます。特にコーヒーは1杯あたりのカフェイン含有量が少なくなく、毎日数杯飲む生活習慣がある方では、この適応が生じやすいといわれています。

コーヒーをやめると頭痛が起きる理由

日常的にコーヒーを飲んでいる方が急に摂取をやめると、アデノシンのブロックがなくなり、増えたアデノシン受容体にアデノシンが一気に結合するようになります。その結果、脳内の血管が広がり(血管拡張)、この急激な変化が頭痛の原因になると考えられています。

カフェイン離脱頭痛の特徴は、頭全体が締めつけられるような痛みや、こめかみのあたりが脈打つような拍動性の痛みです。頭痛に加えて、倦怠感、集中力の低下、気分の落ち込み、イライラ感、吐き気などが伴うこともあります。症状はカフェインの摂取をやめてから12~24時間後に現れ始め、ピークは24~51時間後とされ、最長で9日間ほど続くケースも報告されています。

コーヒーはカフェインを多く含む飲料の代表格であり、1日に複数杯飲む習慣がある方ほど、やめたときの離脱症状が出やすい傾向があります。週末だけコーヒーを飲まない、旅行中に飲めない、仕事が忙しくてランチを抜いたなど、意外な状況でもカフェイン離脱頭痛は起こりえます。この頭痛が「カフェインを補給すると短時間でよくなる」という経験をお持ちの方も多く、それがカフェインへの依存を強める一因にもなりえます。

まとめ

カフェイン離脱頭痛は、コーヒーなどによるカフェインの習慣的な摂取をやめたり急に減らしたりすることで起こる、比較的よく見られる症状です。メカニズムを理解したうえで、1日の摂取量を適正な範囲に保ちながら、段階的に量を調整することが予防と対処の基本となります。頭痛が起きたときは、水分補給・休息・段階的なカフェイン調整を心がけ、生活習慣全体を整えることが長期的な改善につながります。症状が長引く場合や、日常生活への支障が大きい場合は、神経内科や内科などの医療機関に相談されることをおすすめします。コーヒーとの上手な付き合い方を見直し、頭痛の少ない毎日を目指してみてください。

参考文献

食品安全委員会「食品中のカフェイン」

日本神経学会「頭痛の診療ガイドライン2021」

欧州食品安全機関(EFSA)「Scientific Opinion on the safety of caffeine」

厚生労働省「水」