楽天モバイル、KDDI通信網「ローミング」縮小へ…品質低下なら転出増も「顧客獲得合戦が激しくなる」
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は10日の決算記者会見で、KDDIから通信回線を借りる「ローミング」契約について、10月以降はエリアを縮小する方向で協議していることを明らかにした。
楽天は携帯大手3社を上回る勢いでユーザーを獲得し、昨年末には契約数が1000万回線を突破している。ローミング契約の終了によって勢力図がどのように塗りかわるかが注目される。(須永光、小林泰裕)
低価格プラン

三木谷氏は10日、KDDIとの契約について、「楽天がカバーできているエリアについてはローミングを順次縮小していくことで合意している」と説明した。地方など基地局の整備に時間を要するエリアでは、10月以降もローミングを継続する方針だという。
ローミングは、契約している通信会社以外の通信網を利用して、携帯電話がつながる仕組みのことだ。
楽天は2020年4月に国内携帯電話市場に最後発で本格参入した当初から、基地局が整備されていない地域ではKDDIに利用料を支払って回線を借り、低価格を武器に利用者を伸ばしてきたが、現行の契約は26年9月末が期限となっていた。
楽天はKDDIの通信網を基盤に低価格やデータ無制限のプランを提供し、利用者は26年6月末時点で約1075万回線に達している。26年3月時点の契約数はNTTドコモが約9300万、KDDIが約7300万、ソフトバンクが約5700万に上る。大手3社には大きく及ばないものの3社がシェア(占有率)を徐々に落とす中、楽天は契約数を順調に伸ばしてきた。
ただ、10月以降は関東や関西など全国各地の市街地を中心に、楽天モバイルの利用者がKDDIの通信網を利用できなくなり、楽天の通信品質は低下する恐れもある。
KDDI「副回線として」
楽天とKDDIとのローミング契約の終了について、ITジャーナリストの石川温氏は「10月以降、楽天から他社への転出が増え、顧客獲得合戦が激しくなりそうだ」と指摘する。
KDDIの松田浩路社長は7日の決算記者会見で、基本料金ゼロで利用できる自社の低価格ブランド「povo(ポヴォ)」に言及し、「副回線としてポヴォを利用してもらうことで、お手伝いできないか」と述べ、楽天モバイルのユーザーに対し、自社に乗り換えるよう秋波を送った。
KDDIはこれまで、通信網の貸し出しによって楽天モバイルから年数百億円の収入を得てきたとみられるが、貸し出しをやめることで自社サービスの品質を高め、顧客獲得につなげる狙いがあるとみられる。
大手3社では通信品質の低下でシェア低迷に苦しむNTTドコモはポイント還元策などを強化して巻き返しを図っている。ソフトバンクはセブン&アイ・ホールディングスとの資本業務提携をてこに、セブン―イレブンの店舗網を生かした販促やポイント還元を行うなどして、顧客の囲い込みを強めるとみられる。
一方、楽天は自前で基地局の整備を進めることが急務になる。
楽天グループが10日発表した26年6月中間連結決算(国際会計基準)は、携帯電話事業の赤字幅が縮小し、営業利益が504億円の黒字(前年同期は66億円の赤字)と、中間決算では7年ぶりに黒字を確保した。それでも携帯電話事業の営業赤字は922億円に上る。
25年3月末の基地局数はドコモやKDDIなどが30万〜40万前後なのに対して、楽天は約10万にとどまる。楽天は26年度に通信設備向けに2000億円を投資する計画だが、人手不足の影響などで半年間の進展は約3割の655億円となっている。どこまで基地局をスムーズに整備できるかが今後の鍵を握りそうだ。
