(※写真はイメージです/PIXTA)

写真拡大

孫の誕生日や入学祝いにお金を渡したり、遊びに来たときに小遣いを渡したりする祖父母は少なくありません。しかしそうした支出が重なれば、年金生活の家計を圧迫することもあります。家族との付き合いを大切にしながら、自分の老後資金も守るには、どこまで負担するのかを考える必要があります。

「孫が喜ぶなら」…続けてきたお祝いとお小遣い

「今度の日曜日、子どもたちを連れて行ってもいい?」

長女の由佳さん(仮名・43歳)から連絡が来ると、真理子さん(仮名・72歳)はいつも孫たちの好物を買いに出かけていました。

真理子さんは夫を7年前に亡くし、現在は一人暮らし。年金は月約20万円、預貯金は約1,400万円あります。住宅ローンを完済したマンションに住んでいます。

由佳さん一家は車で30分ほどの場所に住み、小学生と中学生の子どもがいます。

孫が来る日は、昼食や菓子を用意し、帰り際には一人3,000円ほどのお小遣いを渡すのが恒例でした。誕生日には1万円、入学や進級の節目には数万円。家族で外食をすれば、真理子さんが会計を済ませることも珍しくありませんでした。

「孫が喜んでくれるなら、それでよかったんです。年に何度もあることではないと思っていました」

ところが、孫が成長するにつれて金額も大きくなっていきます。

中学校への入学時には制服代の足しとして5万円。部活動で使う道具にも3万円を渡しました。下の孫にも同じようにしてあげなければと思い、支出は毎年増えていきました。

由佳さんから直接頼まれることもあります。

「塾の夏期講習が高くて。少し助けてもらえない?」

「今度の誕生日、本人が欲しがっているものが3万円くらいするんだけど」

断ったことはありませんでした。

しかし、真理子さん自身の生活にも出費があります。マンションの管理費と修繕積立金は値上がりし、給湯器やエアコンも近いうちに交換が必要です。通院する回数も増えていました。

家計を整理すると、孫や娘一家のために年間50万円近く使った年もあったといいます。

総務省『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得が月11万8,465円である一方、消費支出は14万8,445円。平均では毎月の支出が手取り収入を上回っています。真理子さんの年金は平均より多いものの、将来の医療や住まいの維持まで考えれば、預貯金を自由に使えるわけではありません。

そんななか、由佳さんから上の孫の高校入学について相談されました。

「入学祝い、今年は10万円くらいお願いできる?」

真理子さんは初めて、「今回は難しい」と答えました。

「お金を出さない」と伝えると…週末に変化

「これからは、お祝いもお小遣いも今までみたいには出せないの」

真理子さんがそう伝えると、由佳さんは驚きました。

「急にどうしたの? お金に困っているの?」

「今は何とか暮らせているけど。でも、これから自分にいくら必要になるか分からないから」

由佳さんは「分かった」と答え、それ以上は何も言いませんでした。

高校の入学祝いには1万円を渡しました。それまでと比べれば少ない金額ですが、真理子さんは無理のない範囲で祝いたいと考えたのです。

ところが、そのころから娘一家が訪ねてくる回数が減りました。

月に1、2回あった訪問は、数ヵ月に一度ほどに。真理子さんから「今度遊びに来ない?」と連絡しても、「部活が忙しい」「予定がある」と断られることが増えました。

孫が成長し、祖母の家へ遊びに行く機会が減ること自体は不自然ではありません。それでも真理子さんには、どうしても気になることがありました。

「以前は誕生日が近くなると娘から連絡があったんです。それが、お金を出せないと言ってから、ほとんどなくなりました」

一度だけ、真理子さんは由佳さんに尋ねました。

「私がお金を出さなくなったから、来なくなったの?」

由佳さんは否定しました。

「そんなことじゃないよ。子どもたちも大きくなったし、みんな忙しいだけ」

その答えが本当なのか、真理子さんには分かりませんでした。

内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は、2025年の推計で男性18.3%、女性25.4%。高齢期には、家族との交流だけを生活の支えにするのではなく、日常的に人と関われる場所を持つことも重要になります。

真理子さんはその後、友人に誘われて地域の体操教室へ通い始めました。以前は「孫が来るかもしれない」と週末の予定を空けることもありましたが、今では自分の予定を先に入れるようにしています。

孫への誕生日プレゼントもやめたわけではありません。予算を決め、本人が欲しいものを聞いて選びます。ただし、高額な商品や現金を当然のように渡すことはしなくなりました。

家族への援助は、余裕のある範囲で続けるのであれば大きな問題にはなりません。しかし、会えることへの期待から無理をしてお金を出し続ければ、自分の生活を圧迫することもあります。孫との関係と金銭的な援助を切り分け、自分の老後に必要な資金を確保したうえで付き合い方を考えることが大切です。