「帰宅しようとした瞬間、後ろから抱き上げられた」小1で誘拐未遂、いじめも経験…女優・麻木玲那(32)が「マスクを外せない」ほど自信を失くしたワケ〉から続く

「自分にまったく自信がなくて……周りの視線が本当に怖かったんです」

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 そう静かに語ったのは、2016年の映画『イタズラなKiss THE MOVIE』でヒロイン・相原琴子を演じた麻木玲那(旧芸名:美沙玲奈)さん(32)だ。

 明るく前向きな主人公・琴子とは対照的に、学生時代の彼女は自分の容姿に自信が持てず、登下校中も教室でもマスクが手放せなかったという。

 誘拐未遂やいじめ、誹謗中傷――。さまざまな経験を経て、「今も自分を好きだとは言えない」と話す麻木さんは、それでも少しずつ前を向き、現在は芸能活動を続けながらも実業家や裏方としての顔も持っている。

 ここでは、自身の想いとは裏腹にたくさんの視線を投げかけられてきた麻木さんが体験した数々の“怖い出来事”と、安心して生活を送るための“サバイバル術”について伺った。(全5回の2回目/最初から読む)


麻木玲那さん ©細田忠/文藝春秋

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盗撮、露出行為、ストーカー…受けた数々のハラスメント

――幼少期の誘拐未遂やいじめの経験が原因で、「私の顔はかわいくない」とコンプレックスを抱くようになったということですが、周囲から向けられる視線は、また違うものだったのでしょうか。

麻木玲那さん(以下、麻木) 自分ではずっと自信がありませんでしたが、学生時代から芸能活動をしていた頃までは、本当に毎日のように知らない方から声を掛けられていました。突然体を触られたり、イヤホンをつけて歩いていると「何を聴いているの?」とイヤホンを勝手に外されたり。

 家までついて来られたり、駅の改札を入っても追い掛けられたり、連絡先を書いた紙を無理やり渡されたこともあります。腕をつかまれたり、引っ張られたり盗撮されたことも。

 ほぼ毎日のように誰かにあとをつけられる時期もありましたし、露出行為をされたこともありました。振り返ると、「怖い」と感じる出来事は数え切れないほど経験してきたように思います。

――ご苦労されてきたんですね。

麻木 旅行先のホテルでも怖い出来事がありました。部屋へ戻ろうとしていた時に、エレベーターで一緒になった見知らぬ男性が「おやすみなさい」と声を掛けてくださって、私が先に降りたんです。

 ところが、部屋のドアを開けようとした瞬間、さっき挨拶をしたその男性が後ろからついてきていて、無理矢理部屋へ入ろうとしてきました。必死にドアを閉めて何とか防げましたが、本当に危なかったです。

 ホテル部屋にもその男性から電話がかかってきて、警察相談しましたが、捕まりませんでした。それ以来、エレベーターで男性と二人きりになることは避けるようになりました。昔に比べると落ち着きましたが、今でも周りにはすごく気を配っています。

 そうした経験を重ねるうちに、自分なりに身を守ることを常に考えるようになりました。知らない方に声を掛けられても、聞こえないふりをして目を合わせず、そのまま通り過ぎることが当たり前になりました。「自分の身は、自分で守るしかない」。そんな思いが、少しずつ身についていったんです。

「自分の身は、自分で守るしかない」と気づかされた出来事

――その思いが、ご自身の中で決定的になった出来事はあったのでしょうか。

麻木 18歳の頃、お世話になっていた方が車で家まで送ってくださることになって、女友達と二人で乗せていただいたんです。でも、途中で二人とも寝てしまって……。ふと目が覚めて運転席を見ると、まったく知らない男性が運転していたんです。

――まさか、運転席に知らない男性がいるなんて……。

麻木 隣では友達がパニックになっていて、大声を出して助けを求めたので、その男からスマートフォンを取り上げられ、彼女だけ無理やり車の外に引きずり下ろされてしまったんです。それを見て、パニックになったら私も何かされてしまうと思い、運転席の男性に「まず、あなたは誰なんですか」と、できるだけ冷静に聞きました。

 その後も意思疎通ができず、赤信号を無視して猛スピードで車を走らせていて、普通の精神状態ではないように見えました。できるだけ刺激しないように、「警察には言わないから、お願いだから解放してください」と説得しました。

 最終的には車から引きずり下ろされた友人が警察を呼んでくれたおかげでパトカーが来て助かりましたが、その犯人も結局捕まっていません。

――それは怖い思いをしましたよね。その事件はなぜ起きてしまったのでしょうか。

麻木 あとから聞いた話では、車を運転していた方が、寝ていた私たちを起こさないようにと、借りていたDVDを返却するために少しだけ車を離れていたそうなんです。そのわずかな間に車ごと盗まれて、私たちはそのまま連れ去られてしまいました。

――これだけの出来事を経験されて、恐怖と向き合いながら日常を送ること自体、本当に大変だったと思います。どのように対処されましたか。

麻木 小学校から高校まで約10年間続けた空手が役に立ちました。弟が先に習っていて、見学へ行った時に「私も強くなりたい」と思い、空手を始めました。本当はダンススクールへ通う予定だったので、空手を始めたいと言った時に母は驚いていました。

――空手は、麻木さんにどんな変化をもたらしましたか。

麻木 男性に力で勝てるとは思っていませんが、体が小さい私のような人でも逃げる方法や、腕をつかまれた時の対処法など、自分の身を守る術を学ぶことができました。

 何より、空手を通して精神的にも強くなれたことが一番大きかったですね。今でも当時の道着は、お守り代わりに大切に残しています。

安心な生活を手に入れるために服装や髪型を変えた

――安心して生活するために、ご自身なりに工夫されてきたことはほかにもありますか。

麻木 10代の頃は、ミニスカートやショートパンツ、肩が出る服や体のラインが分かる洋服を着ることが多くて、ヒールも大好きでした。でも、いろいろな経験を重ねるうちに、何かあった時にすぐ逃げられることを一番に考えるようになったんです。

 芸能のお仕事では衣装として鮮やかな色のものを着ることもありますが、普段はできるだけ目立たない色やシンプルな服装を選ぶようになりました。 

 一人で出掛ける時は露出を控え、体のラインが分かりにくいゆったりとした服に、デニムにスニーカーやヒールのないブーツなど、いつでも走れる服装を心掛けています。

 一番大きかったのは髪型ですね。昔はずっとロングヘアだったので、切る決断には本当に勇気がいりました。でも、思い切って髪を短くしてから、不思議なくらい知らない方から声を掛けられることが減ったんです。「髪型だけで、こんなに変わるんだ」と、自分でも驚きました。

――『イタズラなKiss THE MOVIE』で琴子を演じられていた頃を思い浮かべると、ロングヘアも麻木さんの印象の一つでした。その髪を手放すことに葛藤はありませんでしたか。

麻木 ファンの方からは「またロングにしてほしい」と言っていただくこともあります。それでも、私にとっては安心して外を歩けることの方が大切ですし、もっと早く決断していれば良かったと思うくらいです。

 今でも、いざという時に逃げられるよう体力づくりを続けていますし、防犯は特別なことではなく、私にとっては日常の一部になっています。

〈「毎日粉ミルクを飲んでいました」初主演のプレッシャーで激痩せ、点滴も…『イタズラなKiss』ヒロイン女優が明かす、撮影中に体験した“極限状態”〉へ続く

(佐藤 ちひろ)