「キャンプブーム後は8〜9割が去っていった」アウトドアブランド『コールマン』現在の“意外な売れ筋商品”とは?《テントでも、BBQコンロでもなく…》
「売り上げをベースに考えると、(中心は)キャンプじゃなくなっちゃってますね」
【写真で見る】テントでもコンロでもなく…コールマンの「意外な売れ筋商品」とは?
アウトドアブランドとして知られるコールマンの現況について聞いたとき、ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社コールマン事業部のマーケティング本部でディレクターを務める根本昌幸さんは、そう笑った。
コールマンといえば、ランタン、テント、寝袋、クーラーボックスとキャンプ場で見かける道具を思い浮かべる人は多いだろう。サウナ好きなら、外気浴スペースに置かれた「インフィニティチェア」でその名を知った人もいるかもしれない。そのコールマンに今、変化が起きている。

アウトドアブランドのコールマン。コロナ禍を経て、人気商品にも変化が生まれているという ©深野未季/文藝春秋
最初は「キャンプグッズの会社」ではなかった
コールマンの始まりは、室内用のランプだった。
「創始者であるウィリアム・コフィン・コールマンは目が悪く、夜中に勉強する際にろうそくのゆらゆらした炎ではなく、明るいものがほしいとガソリン式ランプの貸し出しを始めたのがビジネスのルーツです」
当時はランプにも粗悪品が多かった。そこで掲げたのが「機能しなければ支払い不要」という言葉。やがてランプの特許権を買い取り、自社開発を始めた。
その後もランタン、コンロ、アイロンを開発。今のアウトドアブランドのイメージとは違い、最初にあったのは、日常の不便さをどう快適にするかという発想だった。
第一次世界大戦、第二次世界大戦時には、屋外用のランタンやバーナーは軍需品としても認められてニーズが拡大したが、平和がやってくるとその需要は減っていく。そこでコールマンは、アメリカに訪れたレジャーブームに舵を切り、本格的なキャンプ用品のブランドになっていった。
日本では1976年からブランド展開を開始し、2026年で50周年を迎えた。大きな転機になったのは、1990年代前半から後半にかけての第1次キャンプブームだった。
当時は三菱・パジェロ、トヨタ・ハイラックスサーフといったRV車が人気となり、スキーやアウトドアへの関心が高まった時代だ。車を買った人たちが行き先を考えたとき、キャンプが選択肢の1つになった。
日本のアウトドア文化を変えた
その際、コールマンが日本のキャンプ文化に与えた影響は、道具の普及だけではない。キャンプ場での過ごし方そのものも変えた。
「それまで日本のアウトドアでのレジャーは、レジャーシートを敷いて、みんなで車座になって食べるというものでした。そこにツーバーナーなどを使って調理し、テーブルと椅子で食べるという文化を紹介したのはコールマンが最初と認識しています」(根本さん、以下同)
コールマンはこの頃、テントなどのキャンプ用品だけでなく、意外なところでも注目を浴びた。
「ちょうどその時期に、ダイエーさんがカンザスビーフを日本で初めて大きく仕入れて売り出したんです。コールマンの本社はカンザス州のウイチタなんですが、そこを引っ掛けたのか、うちのツーバーナーをダイエーさんが一気に並行輸入してくれて。それもすごいインパクトが大きかった」
1997年ごろにピークを打ったキャンプブームは、その後しばらく低迷する。再び関心が高まったのは、2000年代後半だ。「山ガール」ブーム、リーマンショック後の手軽なレジャー需要、そして2011年の東日本大震災がきっかけだった。
「当時は震災時にキャンプ用具が役に立ったという記事がいっぱい報じられました。クーラーボックスは冷蔵庫の代わりになりますし、ランタンは明かりに、テントは避難場所になります。今までアウトドアに興味がなかった方が、防災用品としてアウトドア専門店に足を運ぶようになりました」
そして2010年代にはお笑い芸人ヒロシやアニメ『ゆるキャン△』などの影響でソロキャンプブームがやってくる。
テントでもBBQコンロでもない、現在の「意外な売れ筋」とは?
根本さんによればアメリカではソロキャンプというのは珍しく「1人でやるキャンプだと意味は分かってくれるんですが『でも、何が楽しいの? アメリカではやらないよ』と言われます(笑)」という。
近年で最も大きかったのが、新型コロナウイルスの流行によるキャンプブームだ。キャンプはソーシャルディスタンスが取れる、人と近づかなくていいレジャーとして一気に注目を浴びた。
「コロナの時にはテントが一番売れました。しかも値段の高い高価格帯から売れていったんです。2022年を過ぎたあたりからはテントの在庫が足りなくなり危機感を持ちました。ただ、うち以上に危機感を持ったのが小売店さんで『来年分の発注もしていいですか』となってきたんです。
結果的には供給過多になってしまって、今でもテントの在庫が残っています。結局テントは基本的に各家庭に1個あればいいので(笑)」
現在、コロナで盛り上がったキャンプブームは一旦落ち着いている。その状況を根本さんは次のように分析する。
「コロナ禍にキャンプに参加された方の中には、今まで興味なかったのにコロナで『これしかレジャーがないから』と買われた方もいたのではないでしょうか。そうした方の場合、やっても多分、続かない。こうしたブームで残る人は全体の10%と言われていて、残りの8割、9割の方は離れていってしまったのだと思います。一時期はキャンプ場が駐車場のようになるほど混んでいましたが、今は予約も取りやすく、経験者の方にとっては楽しみやすくなったと聞きます」
ブームが去ったというより、熱狂の後に「本当のキャンプ好き」が残ったと言えるのかもしれない。
コールマンの売れ筋商品も大きく変化している。ここ数年、好調なのは寝る時に使う「ハイピーク」というマットレス商品だという。厚さは約10センチ、空気を抜けば丸めて持ち運べる自動膨張式のマットだ。
「もともとはキャンプ用として開発したものですが、あまりに寝心地が良いので、単身者の方であったり、来客用のマットとして家での需要が増えているようです。ここ最近は安眠への需要も高まっていますよね。1万円を超えるようなマットですけれど、うちのランキングの上位に入る人気商品です。さらに猛暑対策で自転車のカゴに入れられる小型のクーラーボックスやシェードの売上が一気に伸びてきています」
コールマンは暮らしの中で使う室内用ランプからスタートし、軍需品、そしてキャンプ用品へと展開していった。そして今、そのキャンプ用品が機能性の高さから再び暮らしの中へと戻ろうとしている。
〈「サウナでの利用は想定外」コールマン“ととのい椅子”が生まれた意外な経緯〉へ続く
(徳重 龍徳)
