【小川 匡則】「食料品の消費税1%」をめぐって自民党内で繰り広げられた情報戦…!ウソまで飛び交った密室会議の発言記録を公開する

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「減税」に反対した9名の議員

高市政権が衆院選の目玉公約として打ち出した「食料品消費税の2年間1%」。自民党内での合意形成を図るため、税制調査会のいわゆる「平場」の2回目の会議が8月3日に行われた。この日は75人もの議員が発言し、賛成した議員は60名を超えた。この中で、明確に反対したのは9名。最終的には小野寺五典税調会長に一任されたが、反対派との溝の大きさを窺わせた。

会議で口火を切ったのは反対論の急先鋒である河野太郎氏だ。

「年間5兆円とも言われる財源が示されていない。日米が協調介入しても長期金利は上がっている。日本の経済のファンダメンタルズがこのままでは円安、金利高にならざるを得ない」

この日の論点のほとんどは「財源論」に終始した。

「10兆円もの大きな財源をどうするのか示してほしい。そうしないと議論が深まらない」(谷公一氏)

「目の前のポピュリズムに流されないでほしい。選挙の後に中東の戦争、熊本の地震があり、これから財源はいくらあっても足りない。党として(賛成の)結論が出たのであれば、財源は法案と一緒に提出するようにお願いしたい」(臼井正一氏)

「あまりにも中身が詰まってなさすぎる。一番は財源だ。農業、外食産業にどのくらいの対策をして予算を入れるのか。中小企業、小規模事業者にはシステム変更にどんな対策をしてどのくらいかかるか。(2年間の減税で必要とされる)10兆円では済まないと思う。それで一任と言っていいのか」(小渕優子氏)

これに対して、賛成派からは財源はあるとする意見が出た。

「今年ほぼ達成したプライマリーバランスを考え、来年はどのくらいプラスになるかを考えるべき。補正予算をこれまでは10兆円以上組んでいたが、これがなくなる。税外収入もある。それに合わせて歳出を重ねていけば、財源が見つからないということはない」(柴山昌彦氏)

「税収が過去最高だ。十分対応できる」(若林健太氏)

「外為特会がある。我々はこれだけキャッシュがあるというエビデンスをつけるのが役割」(斉木武志)

賛成派と反対派の間で繰り広げられる「情報戦」

もっとも、財源論に固執せず、一定程度は国債の発行で財源をまかなうことを厭わないというのが、高市首相の唱える「積極財政」論だったはずだ。自民党内で積極財政論をリードしてきた「責任ある積極財政を推進する議員連盟」に所属する議員はこう語る。

「財源がなければやれないというのは、国の財政を一般家庭の家計のように考える発想であり、間違っている。新聞も含め、反対派はこれが理解できないから議論にならない」

新聞など多くのメディアの反対論も財源論の域を出ないものばかりであり、それでは高市政権の「責任ある積極財政」が選挙で信任されたことの意味を無視した議論になってしまう。

7月31日に行われた1回目の平場の議論では発言した28人中、賛成18人、反対10人だったが、日本テレビはその前に行われた税調幹部による賛否が「賛成4:反対6」だったことを受けて反対派が多いという報道を行った。

「これは情報戦だ」

賛成派の議員の一人は、「前回以上に反対派を数で圧倒しようと、賛成派の議員それぞれが週末もいろんな議員に連絡して、『会議に来て賛成や議長一任の意見をするように』という呼びかけをした」と語る。

そうした水面下の攻防もあり、発言した多くの議員が賛成や一任を表明するに至ったが、最も多い意見は「公約だったから」というものだった。

「選挙公約がどうなるか注目されている。(賛否を)議論していること自体がおかしい」(高鳥修一氏)

「国民が見ているのは公約を守るのかどうかだ。公約が守れなかったらこれから自民党が打ち出す公約は信用できないとなってしまう」(渡嘉敷奈緒美氏)

「公約への国民の受け止めは減税をするということであり、重く受け止めるべきだ。特に総理は『公約を実現していく』ということを強く言われているのでこれは非常に重い。消費税の減税は日々の買い物だ。値札を見れば日々、負担軽減を実感する。実現しないといけない」(磯崎仁彦氏)

反対派の大岡敏孝氏は「私たちが公約したのは『国民会議で検討を加速する』ということだった。その結果、やっぱりまだ財源が見つからないということだ」と語った。

しかし、これに対しても、「『検討を加速』と言っているというのは屁理屈だ」(山田宏氏)、「公約には『検討を加速』の前に『実現に向けた』と書いてある。この公約は絶対に守らないといけない」(鈴木英敬氏)と反論が出た。

「小林政調会長から出席するなと言われた」の真偽

この日の会議でもっともざわついたのは自民党内では財政規律派の権化のような存在になりつつある古川禎久幹事長代理の発言だった。

「冒頭、小野寺会長から役員会の様子を小林(鷹之)政調会長からの報告ということでご紹介いただきましたが、大変驚きました。役員会でそうなった、総理がそう言った、総裁が言った、その時に小林政調会長は唯々諾々と帰ってきたのか。その話を聞いた時に税調会長は何も言わなかったのか。今までの税調での議論は何だったのか。議論はいらないんだったら、こういう党の部会や調査会はいらないじゃないか」

これに対して議長を務める小野寺税調会長は、「役員会ですから、古川先生も幹事長代理でその場にいるはずです。役員会で議論されるのが基本だと思います」と指摘した。すると、古川氏は「小林政調会長から出席するなと言われた」と暴露したのだった。

「今その話を会長がおっしゃいましたので、私は言うつもりがなかったけどあえて言いますけど、役員会に欠席したのは理由がある。役員会には出席するつもりだったが、事前に小林政調会長から『高市総理が緊急役員会で静謐に決めたという形を取りたい。反対意見の人は出ないでほしい』ということがあったので、それを重く受け止めた」

古川氏はさらに、全会一致にしないよう求めた。

「同時に私は『私はこの消費税減税には反対だ。それは貫くが、いいですね』と確認した。だから、『あなた役員だろ』と言われても到底承服できない。党内には多くの異論があるということをきっちりと形にして示してほしい。全会一致ではないことは確認したい。全議員にアンケートを取って示してほしい。私は(減税した)結果に責任持てない。あなたたちの議論は求めてないというなら結構だが、一緒に決めたとなるのだけはごめんだ」

この古川氏の「出席するなと言われた」発言には、大ベテランの鈴木宗男氏が苦言を呈した。

「自民党には伝統があって、円満にしたい時に『お引き取りいただきたい』という。小林政調会長が親切で言ったことをこういう場所で言ってはいけない。政治家の矜持として言っていい場所と悪い場所がある」

古川氏はさらにこの後、小野寺氏に宛てて議論のやり直しを求める意見書を送った。ところがこの夜、党内に衝撃の情報が出回った。この古川氏の「小林政調会長から出席するなと言われた」という発言が虚偽で、小林氏が猛烈に抗議し、古川氏は虚偽を認めて謝罪撤回したというのだ。

鈴木宗男氏は小林政調会長から直接電話を受けたと明かす。

「小林政調会長から『鈴木さん、ああいう発言をしてくれてありがとうございます。ただし、私はそのようなことは言ってないんです』と言われた。政調会長は抗議して古川は虚偽だと認めたということだった」

党内随一の「積極財政派」が反対した理由

なぜ古川氏がここまでのことをしたのか理解に苦しむが、反対派は古川氏同様に、熱を帯びていた。出席議員の一人は語る。

「反対派の多くはひな壇から向かって右前方に固まって座っていた。かねてよりこの減税案に反対を表明している石破さんは発言こそしなかったが、退席する際に『反対の署名活動をするか』と吐き捨てるように周囲の反対派議員に述べて去っていった。前総理の取る態度かと驚きました」

意外な意見を述べた議員もいる。その筆頭格が、以前から党内随一の積極財政派として知られる西田昌司氏だ。かねてより消費税の減税を訴えていたが、今回の案には反対だと語った。

「私は誰一人『減税』を言う前からずっと『消費税はやめるべきだ』と言ってきた。その私が何で1%に『ちょっと待て』と言っているかというと、減税すると負担は全て事業者になるからだ。熊本の大震災の現場の皆さんにそんなことさせるのか。その時にそういう話を言ってくること自体が大きな間違いだ。減税をするのはいいが、仕組みを考えないといけないから時間がかかる」

さらに、消費税の根本的な問題点に目を向けて抜本的な解決を図るべきだと訴える。

「減税する方向で話を決めて、2年間は給付、その間に消費税減税、法人税引き上げ、さらには法人の損金算入を一年で認める、といったことをやれば必ず消費は増える。そういうことをやるチャンスなのに、何か今の(他の議員たちの)話を聞いていると全く違う方向だ。それは衆愚政治だ」

一方、財務省出身で、財政規律派として知られる北神圭朗氏は自虐も交えつつ、条件をつけつつも賛成の意見を述べた。

「ザイム真理教の北神圭朗です。私は敬虔な信徒ですが、公約は公約です。高市さんの公約ではなく自民党の公約です。ただし、慎重派の意見も傾聴に値する。2年後に必ず税率を戻す、国債の発行額を増やさないようにすること、など、公約の履行と市場の信任を両立してほしい」

2時間を超える議論の末、小野寺税調会長に一任されることが了承された。

これまで上がることしかなかった消費税率が「下がる」という政策を実行する意義は大きい。一方で、西田氏が主張するように「消費税の根本的な問題点」について議論を深めることもまた必要だろう。

「公約だから」というだけでは有効な経済政策にならず、かえって積極財政自体の支持を失いかねないからだ。その上で、秋の臨時国会では高市首相自身が野党からの国会での質疑にどれだけ誠実に答弁できるかが問われる。

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