殺虫剤と虫よけは来年の分まで備蓄して!またデング熱が流行って品薄になってもすぐには増産できない理由
2014年8月に首都圏で起こった“デング熱騒動”を覚えているだろうか?代々木公園周辺で蚊に刺された3人(海外渡航歴なし)がデング熱を発症。その後2カ月ほどの間に都内を中心に160人を超える感染者が次々に見つかり、大騒ぎとなったのがこの騒動だ。過去の出来事のように思っている人もいるかもしれないが、デング熱が国内で再流行するリスクがゼロになった訳ではない。害虫駆除の専門家である足立雅也さん(808シティ代表)は、もしもに備えて殺虫剤と虫よけの備蓄を勧めている。その理由とは?
再流行の可能性はゼロではない
デング熱とは、蚊(主にヒトスジシマカと日本には生息していなネッタイシマカ)が媒介するウイルス性の感染症で、デングウイルスを保有する蚊に刺されると、4〜10日の潜伏期間を経て、高熱や頭痛、関節痛、発疹などの症状を発症します。
とはいえ刺されたからといって必ずしも症状が現れるわけではなく、多くの場合は無症状、あるいは軽症で済みます。ただし、ごくまれに重症化してデング出血熱等、命に関わる病へと発展することもあるので油断は禁物。東南アジアや中南米など熱帯・亜熱帯エリアに旅行に出かけて帰国後に突然熱が出た場合は、必ず専門医の診断を受けてください。
デング熱騒動収束後の日本にはデング熱は存在しないと思われがちですが、じつは毎年、国内でデング熱感染症報告があります。その数は、コロナ禍を除いて約160〜約450件にのぼります。その大部分は海外で感染した輸入症例ですが、国内感染(海外渡航歴のない人の感染例)が疑われる例もわずながら報告されています。
つまり、いつデング熱が再び流行しても不思議はない状況が今も続いている、と私は考えています。
感染しても無症状の人も
デング熱は、急速に感染拡大しやすいことで知られ、これまでも世界各地で大規模感染が幾度も起こっています。じつはこれにはデングウイルスに感染しても無症状のケースが多いことが関係しています。
症状が現れない人は、まさか自分が蚊に刺されて既にデング熱に感染しているとは思わないから、普通に外出するし、旅行や出張にも平気で出かけてしまいます。
無症状であっても、デングウイルスを持つ蚊に刺された人は感染者となり、刺されて数日たつと感染力を持ちます。そしてその人をまた別の蚊が刺し、さらにその蚊が別の人を刺せば、どんどん感染が広がっていくことになるのです。なお一度デングウイルスに感染した蚊は、一生体内に保有します。
予防は殺虫剤と虫よけしかないが…
デング熱には国内で承認されたワクチンや特効薬が存在しないため、感染から身を守るには、殺虫剤や蚊取りを使って、できるだけ蚊に刺されないようにするしか方法はありません。
そのためデング熱騒動が起こった年、首都圏では殺虫剤や蚊取りを購入する人がドラッグストアやホームセンターに押し寄せて、品薄状態が起こったことがありました。
もし今後、全国各地で同時多発的にデング熱が流行した場合は、同様の状況が各地で起こりパニックが生じることも予想されます。
本来、殺虫剤需要が高まり品薄になった時は、メーカーが追加生産すれば済む話なのですが、殺虫剤の場合は追加生産がなかなか難しいのが現実です。
各メーカーは「今年はこの商品をこの時期にこれだけ生産する」という綿密な年間計画を立てて生産スケジュールを組んでいるため、急に増産をすることができません。仮に増産をできたとしても、製造中の他の商品のラインを止めて薬剤を一度きれいに洗い流してから、あらたに製造ラインを組みなおさなければなりません。
さらに、殺虫剤原料によってはヨーロッパや諸外国からの船便になるため、原料を追加注文しても到着するまで1カ月程度はかかってしまいます。それを待ってから増産に取りかかっていては、商品が店等に並ぶ頃には蚊の季節は終わってしまいますよね。
一般家庭でも殺虫剤と虫よけの備蓄を
厚生労働省もこうした状況を重くみて、国や自治体をあげて殺虫剤の備蓄強化に乗り出してはいるようですが、まだまだ安心できる状況ではありません。
できれば一般の家庭でも万一の場合に備えて、殺虫剤や虫よけをある程度は備蓄しておいたほうがいいでしょう。
一般的には殺虫剤の使用期限は製造してから3年なので、今年の夏に購入したものを来年使用することは十分可能です。必要以上に大量に備蓄して使用期限を過ぎてしまっては意味がないので、とりえあえずは来年の分を備蓄しておいて、使った分だけ順次補充していくスタイルがおすすめです。
蚊が媒介する感染症の発生や拡大を食い止めるために最も必要なのは、「自分の身は自分で守る」という個人の意識です。殺虫剤の備蓄だけでなく、ふだんから身の回りに蚊を増やさないよう、庭やベランダを清潔に保つといった環境づくりにも気を配ってください。蚊に刺されると痒いだけでなく、感染症にかかるリスクがあることをお忘れなく!
足立雅也(あだち・まさや)
害虫駆除や鳥獣対策を手掛ける「808シティ」代表取締役社長。
構成=中村宏覚

