81回目の原爆の日 池上彰が「核の現状」を解説
長年、被爆者が訴え続けてきたのが「核兵器のない世界」の実現です。ここからは、世界の核兵器の現状についてお伝えします。
アメリカとイランの軍事衝突が続く中、核軍縮をめぐる国際社会の議論は難航しています。
【VTR】
■アメリカ・トランプ大統領
「戦闘作戦は現在も全勢力で継続中で、我々の目標が全て達成するまで続ける。」
2月に始まった、アメリカによるイランへの攻撃。イランの核開発阻止を目的に、大規模な戦闘へ発展しました。そんな中、国連本部で始まった、NPT=核拡散防止条約の再検討会議。
「今こそ真の平和への唯一の道である、軍縮と核不拡散への取り組みを改めて誓うべき時だ。」
しかし、イランの核開発問題を巡り各国で意見が対立。ぎりぎりまで協議が続けられましたが、最終文書の採択にはいたりませんでした。決裂は3回連続です。
■県被団協 箕牧智之 前理事長
「最後までなんとかまとめ上げて欲しかったというのが、私たちの気持ち。世界の平和がだんだん崩れていくのではないか。」
6月、アメリカとイランは戦闘終結に向けた覚書に署名しましたが、衝突は続いています。トランプ大統領は、イランとの協議が進行中だとしたうえで、「これが最後のチャンスだ」と圧力をかけています。
【スタジオ】
(MC)ここからは、核兵器をめぐる世界の現状について、池上さんに解説していただきます。
【世界の核弾頭】
(池上さん)まずは、世界に今、核兵器がどれくらいあるか見てみましょう。スウェーデンの研究機関の調査によると、ことし1月時点で、核保有国は9か国。あわせて1万2187発の核弾頭を持っていると推計されています。
全体のおよそ9割を保有するロシアとアメリカが古くなった核弾頭を解体したため、全体では54発減りました。その一方で、実戦配備された核弾頭は100発増えたんです。
(MC)全体の数は減ったのに、ですか?
【実装配備数】
(池上)そうなんです。その数は4012発と推計されています。つまり、「すぐに使える状態の核兵器」は増えているということなんです。インドも新たに実戦配備を始めたとみられています。
そして今、新たな核兵器保有国となるのではないかと、国際社会が警戒しているのが、イランです。
(MC)なぜイランがそこまで警戒されているのでしょうか?
【中東情勢】
(池上)ウラン濃縮という言葉を聞いたことがあると思います。これは原子力発電にも必要な技術ですが、濃縮の度合いをさらに高めると核兵器にも使えるんですね。
イランは原発など、「平和利用のために行っている」と主張しています。一方でアメリカは、核兵器の保有につながるとして、ウラン濃縮をやめさせるため、攻撃に踏み切りました。その結果、ホルムズ海峡が封鎖されたり、燃料や物資の輸送が滞って、私たちの日常生活にも影響が出ています。ただ、核問題は、中東だけの話ではありません。ヨーロッパや日本国内でも、核を巡る動きがあったんです。
【VTR】
3年前のG7広島サミットで平和公園を訪れ、「平和のために行動する」と誓った、フランスのマクロン大統領。2026年3月、核による抑止力を強化することを理由に、保有する核弾頭の数を増やす方針を表明しました。さらに今後は核兵器の保有数を公表しないとしています。
一方、核をめぐる動きは日本でも…。7月、小泉防衛大臣が核兵器についてタブーなく議論することの必要性に言及。波紋が広がりました。
■佐藤栄作首相(1968年)
「我々は核兵器の絶滅を念願し、 自らもあえてこれを保有せず、 その持ち込みも許さない決意である。」
佐藤総理によって提言された非核三原則。アメリカとソ連による冷戦の真っただ中で、核の使用への不安が高まる中、示された政策でした。
半世紀以上にわたり守られてきた原則の見直しにつながるのではないか… 被爆者は危惧しています。
【スタジオ】
(西名)池上さん、核を巡る議論は日本でもつい先日ありました。
【小泉大臣】
(池上)そうですね、小泉防衛大臣は核兵器について、タブーなく議論する必要性に言及しました。本人は「あらゆる選択肢を排除せず議論する趣旨」と説明しています。ただ、被爆者にとっては、「議論する」という言葉自体に強い危機感があるんです。非核三原則の見直しにつながるのではないかと受け止めているんです。
(小野)改めて非核三原則とはどういうものなんでしょうか?
【プラズマ】
(池上)「持たず、作らず、持ち込ませず」という、日本の核政策の基本です。1967年に当時の佐藤栄作総理が打ち出して国会でも決議されました。
(西名)半世紀以上守られてきた原則ですよね?
(池上)そうです。歴代総理も平和記念式典で「非核三原則を堅持する」と繰り返してきました。それだけ、日本の平和政策の柱になってきたということなんですね。
(小野)一方で、高市総理は以前から「持ち込ませず」の見直しにも言及してきました。
(池上)背景にあるのは安全保障です。中国や北朝鮮の脅威が高まる中、日本はアメリカの核の傘に依存しています。高市総理は、「持ち込ませず」が核抑止と矛盾する面があると考えているんですね。
(小野)今後も議論になりそうですね。
(池上)そうですね。今後は安全保障関連3文書の改定に向けた議論も控えています。安全保障と被爆地・広島の理念。その両立をどう図っていくのかが、これから問われます。
2026年8月6日 放送

