記事のポイントベストバイは、Ray-Ban Metaを試着、体験できるメタAIショップを年末までに50店舗へ展開する。店舗の正面に体験スペースを設け、将来のAI製品やポップアップにも素早く対応できる売り場へ刷新する。300人のスタッフを研修し、顧客別の提案やプライバシーへの説明を含む接客体制も強化している。
Ray-Ban Metaグラスの正規販売店である家電量販大手のベストバイ(Best Buy)は、AI時代における「体験型リテール」の届け方とは何かを、あらためて問い直している。7月末に配信のModern Retailのpodcastでは、特別企画担当エディターのメリッサ・ダニエルズが、ベストバイのエグゼクティブバイスプレジデント兼最高収益責任者(CRO)であるパトリック・マギニス氏に話を聞き、一部店舗で展開がはじまる30フィート×30フィート(約9メートル四方)の新しいメタAIショップ・イン・ショップの開発の舞台裏に迫った。これは、ベストバイが最先端テクノロジーの「目的地」としての地位を築こうとしていることを示す最新の事例であり、同時に、既存の大手小売業者が新たな顧客層に向けて店舗体験をどう作り直せるかを示すケーススタディでもある。マギニス氏によると、ベストバイは年末までに50店舗で新しいRay-Ban Metaのフレームを販売する計画で、2027年末までにはその数を最大200店舗超へと増やしたいと考えている。同社は、実物を確かめたいという需要があることを把握している。自社の調査データによれば、ベストバイの顧客の50%超が、購入前にメタのグラスを実際に見てみたいと答えている。さらに、同社が2025年10月に100店舗で小型ディスプレイを初めて展開して以来、17万5000人を超える顧客がベストバイ店舗でデモ体験を終えている。

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店舗を「遊び場」に変えるショップ・イン・ショップ

だが、最先端テクノロジーを実際に試せる「目的地」を作るということ以上に、このショップ・イン・ショップは、ベストバイにとって店舗レイアウトを刷新する機会にもなったと、マギニス氏は語る。同社は、今後登場するAI搭載製品なども含め、体験型リテールのためのより柔軟なスペースを確保することをめざしている。メタAIショップ・イン・ショップの立ち上げにあたって、ベストバイが明確に優先したことのひとつが「配置」だ。900平方フィート(約84平方メートル)のスペースを店舗の正面中央に据えることで、顧客は店に入ってすぐにRay-Ban Metaを目にすることになる。その様子は眼鏡店のようで、顧客はグラスを試着できる。また、ニューラルバンドが付属するMeta Ray-Ban Displayのような、より高度なフレームについては、スタッフにフィッティングを手伝ってもらうこともできる。「私にとってこれは、顧客がベストバイに足を運ぶ理由となる何かを生み出すということだ。そして、店舗をある種の遊び場のような場所へと再び変えてくれる」と同氏は語った。「10年、20年前を振り返ると、家電量販店やベストバイは、人々が新しいテクノロジーをただ見て、体験するために訪れる場所だった」。デジタルがあらゆるものを変えてしまったが、いま店舗は、出かけていって何かを発見し、新しいものを見る場所として戻ってきているのだと思う、と同氏は続けた。

防犯の常識を覆す「リフロー」で柔軟な売り場に

ショップ・イン・ショップを実現するには、什器を動かすだけでは済まないと、マギニス氏は言う。防犯のために商品を固定すべきかどうかといった、業務プロセスそのものを見直す必要もある。「壁面には、さまざまなスタイルや色のフレームがずらりと並んでいて、それらをテザー(盗難防止のワイヤー)なしで顧客に試着してもらえるようにしている。これは通常、リテールの現場では、とくにテクノロジー製品では、必ずしもやらないことだ」。「だからこそ、これは今回の設計にあたって我々が問い直さなければならなかった前提だった」と同氏は語った。より大きく見ると、店舗の「リフロー(reflow)」には、店舗でもっとも大きな売り場であるコンピューティング関連の商品を中心に据えることが含まれる、とマギニス氏は述べる。そして店舗の外周部は、将来のショップ・イン・ショップやポップアップ、その他の体験型リテールのディスプレイのために、より柔軟に使える状態に保たれる。ベストバイの経営陣は、同社をAI搭載製品のハブにしたいと述べており、マギニス氏は、この新しいリフローによってそれをより素早く実現できるようになると語った。「店舗に入って、何かをするために30フィート×30フィート、あるいは10フィート×10フィートの空きスペースを見つけるのは、実はそう簡単ではない」と同氏は述べた。「今回の狙いは、こうしたことを簡単に、そして素早くできるようにすることだった」。そして、そのスペースを一気に空けることで、我々はこうしたことに対して本当に素早く動けるようになる、と同氏は語った。

300人が研修、プライバシー懸念にも対応

だが、この体験のカギは、ベストバイのスタッフ、すなわち「エキスパート・ブルーシャツ(expert blue shirts)」が製品の仕組みを理解し、顧客を体験へと導けるようにすることだと、マギニス氏は語る。マギニス氏によると、この夏、300人のスタッフが本社での1週間にわたる研修に参加し、グラスについて、また顧客のニーズや関心に応じてその機能をどう見せるかについて学んだ。「顧客は一人ひとり、まったく異なる立場からこの製品に向き合っている」と同氏は述べた。「投げかける質問が、その顧客の情熱の核心(passion points)を引き出せるものになっているかを、しっかり確かめなければならない。そうすることで、製品の機能を顧客のニーズに結びつけられる」。これには、プライバシーや安全性への懸念に関わりうる疑問への対応も含まれる。着用者が人をひそかに撮影できてしまうことに懸念を示す向きもあるからだ。また、撮影した画像や情報がその後どう扱われるのかを心配する声もある。「プライバシーは、我々の顧客にとってもっとも気にかかるテーマのひとつだ」とマギニス氏は述べた。「我々の役割は、このテクノロジーをわかりやすく解きほぐし、それが何をできて何をできないのかを顧客に本当に理解してもらう手助けをすることだ」。[原文:How Best Buy is rethinking retail footprints for AI products like Ray-Ban Meta glasses]Melissa Daniels(翻訳、編集:藏西隆介)