「早くもらったほうが得」と60歳で“年金繰上げ”をした母。5年後大病を患ったら「障害年金」が“1円も出ない”と言われ絶望…! やはり「年金繰上げ」はやめておくべきだったのでしょうか?
年金の繰上げは障害年金にどう影響する?
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則65歳から支給されます。繰上げ受給を選択すると、請求した月の翌月分から年金を受け取れます。
ただし、年金額は受給を早めた月数に応じて年金額が減り、減額された金額が生涯続く点には注意が必要です。
1962年4月2日以降に生まれた人の減額率は1ヶ月につき0.4%です。60歳から受け取る場合は、65歳より60ヶ月早いため、年金額が24%減額されます。なお、一度行った繰上げ請求は後から取り消せません。
さらに重要なのが、繰上げ請求後は「事後重症」による障害年金を請求できなくなることです。事後重症とは、障害年金の基準となる「障害認定日」には障害の程度が軽かったものの、その後に症状が悪化して基準を満たした場合に請求する仕組みです。
今回の母親のように、60歳で老齢年金を繰上げ受給し、5年後に大病を患った場合、初診日や障害の状態などによっては障害年金を請求できない可能性があります。そのため、「障害年金は支給されない」と説明された背景には、繰上げ受給による制度上の理由があると考えられます。
繰上げ後の障害年金はどのように判断される?
ただし、「一度でも繰上げたら、どのような障害年金も受け取れない」と考えるのは正確ではありません。
繰上げ後でも障害年金を受け取れるかどうかを判断するには、「初診日」と「障害認定日」の時期が重要です。初診日とは、病気やけがで初めて医師の診察を受けた日を指します。
障害認定日は、原則として初診日から1年6ヶ月が経過した日です。この時点ですでに障害等級に該当し、初診日と障害認定日の両方が繰上げ請求より前にある場合は、繰上げ後でも障害認定日による請求が認められる可能性があります。
また、60歳以降も会社員として厚生年金に加入している間に初診日があった場合など、状況によっては障害厚生年金を請求できることがあります。
障害年金を受け取れるかどうかは、病名だけでは決まりません。初診日をはじめ、年金の加入状況や保険料の納付状況、障害の程度などを総合的に確認する必要があります。
そのため、「すでに繰上げ済みだから受給をしているから対象外だろう」と自己判断せず、年金事務所や社会保険労務士へ相談し、受給できる可能性があるか確認することが大切です。
年金の繰上げを判断するときに確認したいこと
年金の繰上げ受給が、必ず損になるわけではありません。収入や貯蓄が少なく、60歳からの生活費が不足する場合には、早く年金を受け取ることが生活の安定につながります。
一方、「何歳まで生きれば得か」という受取総額だけで決めるのは注意が必要です。老齢基礎年金を繰上げて受給すると、生涯にわたる減額のほか、事後重症による障害年金請求ができなくなる、国民年金への任意加入や保険料の追納ができなくなるなどの影響があります。
例えば、持病があり通院中の人や、近く精密検査を受ける予定がある人は、繰上げる前に障害年金の対象となる可能性を確認したほうがよいでしょう。また、現在は健康であっても、60代前半に病気や事故で障害が残る可能性はあります。そのため、今の健康状態だけで判断せず、将来のリスクも含めて検討することが大切です。
繰上げ受給を判断する際は、こうした健康面のリスクに加え、家計への影響も確認する必要があります。まずは「ねんきんネット」などを利用し、60歳から受け取る場合と65歳から受け取る場合の年金額を比較しましょう。
そのうえで、貯蓄や退職金、再雇用による収入、健康状態、家族の収入なども踏まえて、自分に合った受給時期を検討することが重要です。
健康状態と生活資金を確認してから繰上げを判断しよう
年金を繰上げ受給すると、年金額が生涯減るだけでなく、繰上げ後に病気やけがが悪化しても、事後重症による障害年金を請求できない場合があります。ただし、初診日や障害認定日の時期、厚生年金の加入状況によっては、受給できる可能性も残されています。
そのため、「繰上げたから障害年金は受け取れない」と自己判断せず、年金事務所などへ相談することが大切です。繰上げ受給を検討する際は、目先の受取額だけでなく、将来の健康リスクや生活資金も含めて慎重に判断しましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 障害年金ガイド 令和8年度版
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

