【塩地 優】森岡毅氏も「相当厳しい」と認めた苦境のジャングリア沖縄 生き残る唯一の道は「テーマパークでなくなる」ことだった
ジャングリア沖縄が1周年を迎えようとしている。開業直後こそ入園者が殺到したものの、それ以降は奮わず、開業から半年間のパーク単体の入園者数は55万人に留まり、現在に至るまで開業当初の勢いを回復できていない。悪評に対し、運営会社がさまざまな対策を打った、と宣伝しているにもかかわらず、である。
ジャングリア沖縄を運営する「ジャパンエンターテイメント」の筆頭株主である刀のCEO・森岡毅氏は、7月14日に発信された日経クロストレンドのインタビューにおいて、「SNS時代に、(開業して)1年目で、これほどのご批判をいただくというのは、想定したシナリオの中でも相当まずいなという意識は持っています」と率直に危機感を語っている。
こうした危機感をもとに改善を行ったにもかかわらず、どうしてすぐに集客は上向かないのか。その理由を考えていこう。
前編記事『入園者数はなぜ「半年間で55万人」止まりなのか…刀・森岡毅氏「ジャングリア沖縄」開業1年の通信簿』より続く。
アンケートの「満足度」という指標が見落とすもの
前編で見たように、ジャングリアは口コミへの対処療法的な対策に終始している。これは、目標設定そのものに誤りがあるからではないだろうか。
ジャングリアと、その計画を主導した会社である刀は、「満足度」という指標をよく用いる。これはアンケートの項目を見ると、「どの程度満足されましたか」といった漠然とした質問によって算出されていると思われる。このアンケートで見えてくる不満意見を潰し、満足度を高めようとした結果が、前述のような対策なのではないか。
しかしながら、アンケートで「満足した」と答える人の中には、「どちらかと言えば満足かな」という程度の感想の人も含まれる。「まぁ満足した」という感想が多い状態では、大手テーマパークに準じるレベルには達していない。
東京ディズニーランドは開園時、それまでにない圧倒的な質で人々の度肝を抜いた。USJも、大量の火薬や大型セットを使った演出、ド派手で迫力あるアトラクション群で驚きをもたらした。こうした圧倒的な魅力があってこそ、体験直後に「凄かったね」「ヤバかった」と言語化できないほどの感情をもって感想を語り合い、すぐにでも人に伝えたいと思ってもらえる。そうした状態を作らなければ、現代のような口コミ社会では集客につながっていかない。
そうした本来目指すべき状態と、アンケートで計測している状態との間に乖離があるために、戦略にズレが生じているのではないだろうか。
「テーマパーク」にこだわらず沖縄らしさを強化すべき
前編で議論した、ジャングリアが抱える「集客と投資額の関係」という大きな矛盾を解消することは難しい。この矛盾は、立地によって生じているものだからだ。
しかしながら、前提条件を変えてしまえば、矛盾は解消する。その前提条件とは、“テーマパーク”であることだ。一日滞在型のテーマパークから、沖縄観光の文脈に当てはまる観光施設へと変わっていくことができれば、集客数は伸ばせるだろう。
そのためには、沖縄らしさの大幅な強化と、チケット金額の見直しが重要になる。実は、ジャングリア沖縄はすでにこれらに取り組み始めている。沖縄らしさという観点では、従来、飲食メニューに沖縄県産食材こそ使っていたものの、メニュー自体に沖縄らしさを感じられるものは少なかった。
これに対し、2026年に入ってから大幅なメニュー改定を行い、じゅーしーや、黒糖まーす味のポップコーンなど沖縄らしいメニューを強化した。
さらに、沖縄の踊りであるカチャーシーを観覧者も一緒に踊る「カチャーシーパーティー」というショーも始まった。もちろん、飲食メニューやショーだけで沖縄観光の定番スポットへと変わることはできないが、重要な一歩である。
チケットにも、7月から安価なタイプが加わった。アトラクションを1つだけ体験できるもので、従来の半額以下に設定されている。従来のチケットは6930円という設定だったから、1日滞在してさまざまなアトラクションを体験しなければ「割に合わない」と感じる人が多かっただろう。
その点、安価なチケットは「沖縄旅行の貴重な1日は割けない」と感じている人を呼び込むことができる。美ら海水族館などとあわせて訪れる、まさに沖縄観光の文脈に当てはめるためのチケットだ。
イマーシブ・フォート東京を繰り返さないためにも
ジャングリアが沖縄観光の文脈にハマる施設にならなかったのは、ジャングリアブランドのチェーン展開を見据えていたからだろう。
ジャングリア沖縄がうまくいけば、アジア圏に第2、第3のパークを建設していく――そんな計画が、開業前後に公表されていた。この構想があったからこそ、ジャングリアは観光スポットではなく、テーマパークにならざるを得なかったのだ。
実は、刀が運営する施設で、テーマパークとして展開しようとしたもののうまくいかず、方針転換を迫られたのはジャングリアが初めてではない。2024年3月1日に開業し、2026年2月28日に閉業したイマーシブ・フォート東京が、もう一つの事例だ。
開業時は「ライトな体験」、つまりテーマパークらしいアトラクションが受けると見込んでいた。しかし実際には「ディープな体験」、すなわち演劇的な体験を求める層が多かったため、2025年3月1日に大きくリニューアルする。しかしながら結局は採算が合わず、閉業に至った。
ジャングリアも似た流れをたどっている。テーマパークとして開業したものの、沖縄の観光スポットとしての需要が大きいことに気づき、観光スポットとして成立し得る体験を増やしつつある。こうした事態が2度も発生していることは、刀の「市場を見極める力」に疑問符を付けるものだ。
このままでは手元資金が秋に枯渇する可能性
ジャングリアは、現状ではまだ観光スポットとしての魅力が十分ではない。各種アトラクションを、より沖縄らしいものに仕立てていく必要があるだろう。
また、観光の文脈に当てはめれば、チケット価格を下げ、滞在時間も短くしていかざるを得ないため、客単価は下がる。これに対応するには、コストカットも重要になってくるだろう。人を使ったアトラクションが多く、もともと日々のランニングコストが高い構造だからだ。加えて各アトラクションには、まるで大手テーマパークと見まがうほど多くの人員が配置されている。
例えば、3月中旬にジャングリアを訪れた際、「ファインディングダイナソー」ではアトラクションの入り口から出口まで、13人ものスタッフを見かけた。ツアー型のアトラクションのため、これ以外に他のグループを案内するガイドが数名いる他、アトラクションの制御をしているスタッフ等もいると思われる。だが、これは1時間に200人に満たないペースで運営されているアトラクションだ。遊園地の機械化されたアトラクションであれば、このキャパシティならスタッフ1〜2人でまかなえる。
地域の雇用を守ることも重要ではあるが、それ自体が目的になってしまうと、事業の継続性が失われる。地域に根ざした、長く続く企業になっていくためにも、一定の痛みは避けられないのではないだろうか。
沖縄観光コンベンションビューローが公表している人流データによると、2026年5月にジャングリアを訪れた人は約4万2000人。6、7月はここからわずかに改善しているとみられるが、多くても月に6万人程度、年率にして70万人程度の集客だろう。採算ラインが150万人から変わっていなければ、現在の手元資金は、週刊文春で報じられた半年(年末ごろ)よりも早く枯渇してしまう恐れがある。
非常に厳しい状況にあると思われるジャングリア沖縄だが、その活路が完全に閉ざされたわけではない。幸いにも、現在進んでいる方向性は間違っていないと思われる。今後は、いかに早くコストカットを進めながら、沖縄の定番観光スポットとしての地位を確立していけるか。そこが勝負の分かれ目になってくるだろう。
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