【男子バレー】石川祐希も盒桐も深津英臣の「多彩なトス」を絶賛 無傷の12連勝を陰で支えた「2本目」のパス
初日には開幕から無傷の9連勝で決勝トーナメント(ファイナルラウンド)進出を決め、2日目には5試合連続となるフルセット勝ちで10連勝の大台に乗せると、3日目には11連勝で予選ラウンド首位通過が決定──。
そうして迎えた7月19日の「ACNバレーボールネーションズリーグ(VNL)2026男子大阪大会」の最終日、日本はアルゼンチンをストレートで下し、VNL男子大会史上初、かつ日本代表初となる予選ラウンド無敗の金字塔を打ち立てた。

今大会すべての試合でスタメンに選ばれたセッターの深津英臣 photo by JVA/AFLO
その結果が示すとおり、会場を熱狂にいざなった男子日本代表が大阪で披露したのは、攻守双方のあらゆる面における高いクオリティだった。
石川祐希(ジラート・バンク・アンカラ/トルコ)や郄橋藍(ボグダンカ・LUK・ルブリン/ポーランド)の両エース対角とオポジットの西田有志(大阪ブルテオン)が高い決定力で得点を重ね、守っては前衛でミドルブロッカーのエバデダン ラリーや山内晶大(ともに大阪B)が、後衛ではリベロの山本智大(大阪B)や小川智大(ボグダンカ・LUK・ルブリン)が的確なブロックとレシーブの関係性を構築し、相手に決定機を与えない。
さらに、郄橋がアルゼンチン戦終了時点で今大会最多タイとなるサービスエース決定本数をマークするなど個人技も光らせたほか、甲斐優斗(大阪ブルテオン)や西本圭吾、永露元稀(ともに広島サンダーズ)らリザーブメンバーたちも各々の持ち味を出しながら、遜色ないパフォーマンスを発揮。大会を振り返り、選手たちはチームの現状について「誰が出ても強い」と口をそろえた。
飛躍のきっかけをつかんだ東京オリンピック以降、主力メンバーがそれほど大きく変わらず、各々の成長と積み重ねた経験値が、今の日本代表が備える強さの背景にはあるだろう。一方で、今回のネーションズリーグを紐解くと、例年と大きく違った点がひとつある。
それがセッターだ。
今大会は、日本の絶対的な司令塔と言える関田誠大(サントリーサンバーズ大阪)を欠くことになった。しかし、その穴を十分と言えるほどに埋めてみせたのが、36歳のベテラン深津英臣(ウルフドッグス名古屋)だった。
【深津のトスはスピード感が特徴】国内リーグではすでに13シーズンを過ごした深津の実力は、日本のバレーボール選手なら誰もが認めるところ。日本代表の登録は2022年以降、途絶えていたが昨年に復帰を果たすと、今年は司令塔を務めることに。ネーションズリーグでは全試合でスタメンを飾った。
郄橋は深津について、このように語る。
「間違いなくこの予選ラウンド12連勝は、深津選手のおかげだと僕は思っています。深津選手が来てくれたことによって、チームの雰囲気もとてもいいですし、僕自身も気持ちよくスパイクを打たせてもらえています」
郄橋自身、この2シーズンは大同生命SVリーグのサントリーでジャンプ力やスイングスピードの向上に励み、アタッカーとしてのクオリティを高めてきた。その成果は日本代表においても、深津のトスによって最大限に生かされているのだという。
「深津選手のトスは、スピード感が特徴です。完全に相手ブロックが2枚そろわない状況で打つことができますし、かつ僕もスイングスピードが上がったぶん、相手にブロックシャットされる場面が減りました。その点は、まさに深津選手が入ってきたからこそだと思いますし、それが今の日本代表が強い理由のひとつだと感じています」
ただ、スピード感だけが深津の特徴ではない。
たとえば、アルゼンチン戦では石川のサーブレシーブが大きく乱れた場面で、深津はネットをくぐりぬけてボールをつなぎ、そのボールを石川が決めきった。さらには、時にはアンダーハンドで、時には片手で、トスを繰り出し攻撃を演出した。この試合、驚異のアタック決定率80%超えを記録した石川は語る。
「ほしいところでボールが来ますし、大事なところは外すことなく、僕や郄橋選手、西田選手にトスを上げているからこそ、『ここで取りたい』場面で1点が取れています。その結果、チームがうまく回っていると僕は思います」
その深津自身は大阪での4試合について、「サイドアタッカーに対する自分のトスが不安定で、3人に助けられました」と受け止めていたが、そのうえで「ファイナルラウンドはさらに強いチームが相手になるので、ちょっとしたミスがないようにしていきたい」と強く口にした。
【ミドルブロッカーからのトス】3人──つまり石川、郄橋、西田という最後に決定的な仕事を果たせる存在は、やはり日本の強さの象徴だ。加えてバックアップに回るアウトサイドヒッターの大塚達宣(パワーバレー・ミラノ/イタリア)や富田将馬(大阪ブルテオン)、オポジットの宮浦健人(ウルフドッグス名古屋)らのサイドアタッカー陣についても、同様のことが言えるだろう。
その彼らに対して、「上げておけば決める選手がたくさんいますから」と茶目っ気を交えて評したのが、ミドルブロッカーの小野寺太志(サントリーサンバーズ大阪)。実はアルゼンチン戦では、小野寺がラリーの最後に石川や宮浦の得点をトスで演出した場面が見られた。
「普段の練習でも多くはないですが、僕たちが2本目(トス)を触るシーンはありますし、その時にミスをしないように心がけています。それこそ、得点につながるプレーを僕自身は強みにしていますし、今日はそれが出せました」
小野寺いわく、そこではただトスを上げるのではなく「(石川)祐希ならそれほど高くなく、テンポを意識して、(宮浦)健人はゆっくり、高いトスが打ちやすそうなので」とこだわっていたそう。
「みんなに比べたら決してうまくはないと思いますが、ああいうプレーをそつなくこなすことが、僕は日本の強みになっていくと考えています」と、小野寺はミドルブロッカーとして主に求められる部分以外のプレーの重要性を強調した。
レシーブとアタックをつなぐ、いわゆる2本目のパスは、なかなか数字で示すことができない。それでも深津は本職として、小野寺ら周りの面々も細部をさらに追求し、チームの攻撃を支えている。
ほんの一瞬のプレーにも、今の男子日本代表の強さが詰まっているのだ。
坂口功将●取材・文 text by Kosuke Sakaguchi
