(※写真はイメージです/PIXTA)

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「不倫」「浮気」「離婚」「セクハラ」……銀座さいとう法律事務所には、今日も有象無象のトラブルが舞い込みます。本連載では、齋藤健博弁護士が実際に寄せられた事例をもとに、男女の法律問題を解説していきます。

ロンドン駐在勤務に浮つく心

大手メーカー勤務に勤務するAさん(35歳)は、ロンドン勤務を命じられました。ロンドンは、日本人駐在員が多く、各種手当も手厚いため、プライベートでも頻繁に旅行へ出かけるなど、現地での生活を大いに満喫していました。

Aさんには妻がいます。帯同させようと思っていたのですが、Aさんにある思惑が生まれ、日本に置いていくことに。実は、気になっている後輩女性(28歳)がいたのです。

この女性は航空会社の客室乗務員だった経験もあり、一般職としてAさんの会社に転職してきた人でした。Aさんは彼女の気を引くため、そして日本にいる妻の監視から逃れるため、単身、ロンドン駐在を決めました。

妻は月に一回、片付けや食事、観光のためにロンドンへ通うことになります。その裏でAさんは、日本から3ヵ月に一回ほどの頻度で遊びにくる後輩女性をAさんの家に泊めるなどして、うまく交際にこぎつけました。仕事もプライベートも、すべてが順風満帆に見えました。

家族には出不精だった夫が、ヨーロッパ中を飛び回っていた不自然

しかし、妻がAさんの家の片付けに来た際、怪しいものを見つけたことで状況は一変します。それは、部屋に残されていた避妊具と、おびただしい数の観光地での写真、そして航空券の半券でした。パリ、ミラノ、ローマ、スペイン--家族旅行にはめっぽう出不精だったはずの夫が、妻の知らないところでヨーロッパ各地を飛び回っていたのです。

さらに、妻が月に一度ロンドンを訪問しても、Aさんは寝室のベッドでいつも先に寝てしまうことにも不自然さを感じました。「女性の勘」が働いた妻は、夫の一時帰国のタイミングに合わせて日本の探偵事務所に調査を依頼します。その結果、例の後輩女性との不倫関係が発覚しました。

妻はすぐに弁護士に相談し、不倫相手への慰謝料請求へと踏み切りました。同時にAさんにも事実を突きつけると、Aさんは平謝りし、関係解消を約束しました。

しかし、ここからが本当の修羅場の始まりでした。

不倫相手から届いた反論書の残酷な内容

不倫相手の女性は、会社の上席の秘書室に勤務していました。妻の弁護士が送付した慰謝料請求書面に対し、彼女から届いた反論書には、「おたく(Aさん)は数あるうちの一人だ、本命ではない、とっととこちらも別れたかった」などと記載されていたのです。

具体的には、すでにAさんとは関係を解消していること、不倫の期間や内容から見ても悪質性は低いことなどが主張されていました。

この文書に、妻以上にショックを受けたのはAさん自身でした。不倫相手が役員近くの秘書室勤務であることから、「どの役員と関係を持っているのか」「ほかにも男がいるのか」と、Aさんは社内の人間関係に対して疑いの目を向けるようになります。

不貞の重い代償

最終的に、不倫相手との慰謝料請求は100万円を支払ってもらう形で合意し、法的には解決しました。

不貞行為による慰謝料の金額は、不倫の期間や頻度、態様(悪質さ)、そして証拠の程度といった要素によって決定されます。今回のケースでは、相手の反論もありつつも、100万円での解決は一つの目安に達したといえるでしょう。

しかし、Aさんの家庭に平穏は戻りませんでした。数あるなかの一人であったことがショックで、Aさんは妻に対して心を閉ざし、夫婦関係はさらに疎遠になったそうです。

さらに、妻が支払った探偵費用は100万円以上にのぼっていました。獲得した慰謝料はすべてその費用に消えてしまったため、実質的な金銭的プラスはありません。Aさんはいまもなお、妻から責め立てられる日々を送っています。

不倫の代償は、相手を失ったり、お金を失ったりすることだけではないようです。知らなくてよかった事実まで知ってしまったAさんは、いまだに誰が彼女と関係を持っている役員なのかと、疑心暗鬼だといいます。

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容から変更している部分があります。