世界中の海洋ごみが漂着する佐賀県唐津に、海洋プラスチックの専門施設が誕生! サステナブルなグルメも要注目

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佐賀県唐津市鎮西町の「波戸岬(はどみさき)」は、玄界灘に突き出た美しい景勝地。玄海国定公園の一角にある「日本渚百選」のひとつで、美しい夕日が望める“恋人の聖地”でもある。2026年6月、そんな波戸岬に海洋プラスチック問題をテーマにした体験型ミュージアム&ラボラトリーがオープン! なんでもこの岬は、世界中の海洋ごみが打ち寄せられる場所なのだとか。さっそく、おいしく楽しく、海を守る知識を得られる「PLA PLA(プラプラ)」を訪ねた。

佐賀の岬から、世界の海を取り戻す!

佐賀県唐津市の波戸岬は、広大な水平線と玄界灘に浮かぶ島々を一望できる人気の観光スポット。「日本本土最北西端」の碑が立つ、風光明媚な岬だ。この地に誕生した「世界海洋プラスチックプランニングセンター(以下、プラプラ)」は、佐賀県が開設した世界初の海洋プラスチック専門の体験型ミュージアム&ラボラトリー。でもなぜ、都市部から離れたこの場所が選ばれたのだろう。

「アジア地域の発展が加速しはじめた20年ほど前から、日本海沿岸にプラスチックごみが打ち寄せられる被害が出始めました。波戸岬は、黒潮に乗ってやってきた海洋ごみが分流した対馬海流を進み、冬の季節風に吹かれて漂着する最前線。そこで、拾っても拾いきれない海洋ごみの現状を、漂着している現場から発信していこうと考えたのです」

そう教えてくれるのは、プラプラの立ち上げを手がけた佐賀県政策部の小山由希子さんだ。陸や川から海へたどり着いたプラスチックごみは、数百年以上も海を漂い続け、地球規模で蓄積していく。小山さんによると、唐津の湾内のごみの9割が日本のものだという。

漂着したブイがあしらわれた“プラ垣”が目印。通路のひさしやカフェのテーブル&イスには再生した海洋プラスチックが活用されている

「包装プラスチックの量は、日本が世界第2位。ハワイ沖やカナダ沖にも日本のごみが漂着しているんです。海洋ごみは他人ごとの話ではなく、私たち全員が当事者。漂着のリアルな現場を見て、一人ひとりが考えることが大切だと思っています。そこからみんなの行動が変われば、きっと未来も変わっていくでしょう」(小山さん)

館内には世界の海流を表すパネルや波戸岬に打ち寄せられた漂着ごみの展示、海洋プラスチックの現状などがわかりやすく展示されている。

「このあたりは海流と季節風の影響、さらには入り組んだ狭い海峡によって、日本一漂着ごみが打ち上げられやすいとされています」と説明するスタッフの張嘉妍(ちょうかけん)さん

直径1.2mの球体「オーシャンスフィア」は、海洋観測のデータを可視化した球体LED。海洋プラスチックが世界中の海を流れるようすが、リアルタイムで見られる

玄海の澄んだ海と漂着ごみの現実、岬を歩いて知る海洋プラスチックの今

海洋プラスチックについて学んだあとは、実際に岬に向かい、漂着ごみを見てみることにした。施設を出て、海沿いに伸びる「ルート・グランブルー」を右に進む。ルート・グランブルーは世界的なダイバーであるジャック・マイヨールが愛した、唐津の深く澄んだ海を望む絶景ルートだ。けれども海岸に目をやると、ペットボトルやブイ、網、カゴ、食べ物の包装紙、発泡スチロールなどの漂着ごみがたくさん見られた。

ペットボトルが目につく岬の海岸。小山さんによると、日時によって漂着するごみの量は異なり、この日はとても少ないそうだ

「漂着ごみの8割が、街から出るプラスチックごみ。韓国語、中国語、ロシア語が書かれたペットボトルなどのほか、漁業でつかうブイやロープ類、カゴ類などもよく打ち上げられます」(小山さん)

漂流するプラスチックは年月とともに劣化し、砕かれて5mm以下の微細なマイクロプラスチックになる。海岸にはカラフルなプラスチック片が、拾えきれないほどたくさん落ちていた

自然分解されずに何百年も海中を漂い、生態系や漁業などに大きな影響を及ぼす海洋プラスチック。日本近海のマイクロプラスチック濃度はとても高く、世界平均の27倍に及ぶとも言われているそうだ。

打ち寄せる波の音を聞きながら歩くこと10分強、海の中が観察できる施設「玄海海中展望塔」が見えてきた。こちらは水深7メートルの展望塔で、玄界灘を泳ぐ魚たちの自然な姿を見学できる。

展望塔までは、海上に伸びる86mの白い桟橋を渡ってアクセス。入場料金は高校生以上1000円、小中学生500円、未就学児は無料

海中展望室には24個の海中窓があり、約30種類の魚や貝類が見られる

展望室の海中窓の外には、玄界灘で暮らすたくさんの魚たち。クロダイやハコフグ、マダイやイサキなどが、透明度の高い美しい海を悠々と行き交っていた。この海にも目には見えないマイクロプラスチックが無数に散らばっており、増え続けるいっぽうなのだ。街で風に舞うレジ袋や放置されたペットボトルを見かけたら拾って持ち帰り、資源ごみの日に出そう! と、固く心に誓った。

ご当地の未利用魚や規格外野菜をつかった絶品グルメ

再びプラプラに戻り、大きな窓から海を望むカフェ「had COFFEE & SEA」へ。海で回収したプラスチックをつかったテーブルやイスが配され、壁には海洋プラスチックや地球温暖化、生物多様性などに関する書籍が並んでいる。

「『漂着したものを拾うだけでなく、再利用できたら』とつくった循環型カフェです。ただ海洋プラスチックは、紫外線による劣化や塩や有害物質を取り除くのが難しい。そこで海洋プラスチックのアップサイクルブランドbuoy(ブイ)にお声がけし、佐賀市諸富町の家具メーカー・レグナテックとコラボして、漂着ごみをイスにアップサイクルしました」(小山さん)

気になるメニューは、地元の旬の食材をつかった地産地消型。規格外などで市場に出回らない食材も積極的に活用している。

左から佐賀牛ミルフィーユカツサンド(2035円)、未利用魚のフィッシュ&オニオンリング(880円)、未利用魚のフィッシュサンド(1650円) ※価格はイートイン料金

佐賀牛の厳選した部位を薄くスライスし玉ねぎを挟んだカツサンドや、規格外などの理由で市場に出ない未利用魚を使用したフィッシュサンドは、どちらもボリューム満点!地元のパン屋さんによるフワフワのパンと玄海地区で採れたシャキシャキの野菜、サクサクの衣に包まれた魚や肉は相性抜群だ。

拾う→砕く→プレスする、海洋プラスチックをアップサイクル

お腹がいっぱいになったところで、オリジナルキーチャームを制作するワークショップに参加する。原料は、ここ唐津の海岸で回収された海洋プラスチック。カラフルな原料から好きな色を選んで、世界でひとつだけのイカチャームをつくるという。

唐津の海岸で回収した海洋プラスチックを色分けし、再生ラボで砕いてフレーク状にしたものを活用する

色は何色つかってもOK。イカの形にかたどられたフレームに原料を乗せ、熱を加えながらプレスして形をつくる。それぞれの色によって融点が違うため、ランダムなマーブル模様ができあがるそうだ。

白をベースに黒と青のフレークを混ぜ合わせた、オリジナルチャーム「イカスミくん」が完成!

完成したイカは名前を付けることで、より愛着を持ってもらうそうだ。一緒に参加した仲間のテーブルには、赤と緑を合わせた「スイカくん」や黒一色の「クロちゃん」などが並んでいた。

実際に浜に降りて海洋プラスチックを拾うワークショップもあり、学ぶ→拾う→再生する→アップサイクルという一連の流れを体感することもできる。アップサイクル事業は今後も育てていき、商品を販売した利益などの一部は磯焼け対策や藻場の再生に役立てていく計画だ。

まさに、サステナブルの最前線! 子どもの自由研究にもピッタリなこの施設、ぜひチェックしてもらいたい。

【著者紹介】

萩原はるな:情報誌の編集を経てエディター、ライターとして雑誌やWeb記事、単行本などを手がける。2021年に脳出血で倒れ、リハビリ入院後にSDGsサイトの編集長として復帰。おいしいものとビール、旅が大好き。後遺症など最新記事はコチラから。

取材協力:佐賀県

日本近海のマイクロプラスチック濃度は世界平均の27倍。唐津の絶景ルートで目の当たりにした、美しい海に潜む現実(10枚)