防衛省のLUUP導入でチラつく政界工作と上場の起爆剤(森岡英樹/経済ジャーナリスト)
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防衛省は公式X(旧ツイッター)アカウントで、「本日(7月1日)より、防衛省市ヶ谷庁舎に電動キックボードと電動アシスト自転車を導入しました」とし、庁舎内に設置されたLUUP(ループ)の立て看板と、ポート(乗り場)に置かれた2台の電動アシスト自転車、3台の電動キックボードの写真を公開した。
導入理由について防衛省は、「東京ドーム約5個分の広さを有する庁舎内での移動をよりスムーズにし、業務効率の向上につなげます」と説明。「今後も、職員が力を発揮できる環境づくりを進めていきます」とするが、位置情報の取り扱いを懸念する声が上がるなど、波紋が広がっている。
LUUPは、短距離の移動に利用する小型の乗り物「マイクロモビリティー(超小型移動端末)」のシェアリング(共同利用)サービスだ。スマートフォン向けのアプリに登録し、正誤選択式の交通ルールテストをクリアすれば利用でき、運転免許を必要としない手軽な移動手段として人気を集めている。
だが、一方で、悪質な利用者による逆走、信号無視、2人乗り、飲酒運転といった問題も表面化しており、6月2日には、東京都北区の路上で利用者が絡む死亡事故も発生した。こうした中での防衛省庁舎内への導入に、SNSでは「なぜわざわざLUUPを選ぶ必要があったのか」など、困惑の声が上がっている。
また、同サービスでは車両に搭載されたGPS(衛星利用測位システム)により、位置情報の取得が行われる。取得された位置情報は、周辺のポートの空き状況の把握や、行き先のナビゲーションなどに利用される。このため、個人の位置情報の取り扱いなど、機密保持の観点から慎重な運用を求める声も寄せられている。
さらに、LUUPの経営そのものにも懸念材料が残っている。「増収を続けていますが、設置箇所拡大を主体に先行投資が重なる中で赤字計上が続いている」(金融関係者)ためだ。
LUUPは2018年7月に現CEOの岡井大輝氏が東大時代のダンスサークル仲間とともに創業したスタートアップ。
「元々は介護士用移動サービスの事業化を目指していたが、その後自転車シェアリングサービス運営事業を開始。しばらくは各地自治体との連携などの地盤固めに注力する時期が続き、20年の5月ごろから自転車シェアリングサービスの提供を開始した」(金融関係者)とされる。
同社の白と緑の電動キックボードは、今や街中のいたるところで散見される。ポートは東京、大阪、京都などに約1万7000カ所あり、電動キックボードと電動アシスト付き自転車が半々ずつ、合計5万台余を配す。
LUUPの電動キックボードが急速に普及したのは、23年7月に改正道路交通法が施行されたのがきっかけ。法改正によって、それまでなかった特定小型原動機付自転車という新たな車両区分が設けられ、電動キックボードがこれに該当することになったことが大きい。16歳以上ならば免許なしで乗れて、車道は時速20キロ以下で、歩道も時速6キロ以下ならば走行できる。まるで自転車のように乗れるというわけだ。
この法改正の背景には、創業者の岡井氏の政官界へのロビーイング(政官工作)もあったとされる。「岡井氏は、霞が関では有名なロビーイングファームのマカイラ社を起用する一方、業界団体マイクロモビリティ推進協議会を立ち上げ、与党や関係省庁へ積極的な働きかけを行った」(メガバンク幹部)という。また、道交法を所管する警察庁出身の元警視総監をLUUPの監査役に招いている。
「LUUPはまだ赤字を脱していないが、上場も視野に入っている。防衛省での採用は格好の起爆剤になる」(市場関係者)とみられている。
(森岡英樹/経済ジャーナリスト)
