【野田 隆】JR東海「夜行新幹線」誕生の衝撃…全廃寸前だった「夜行列車」が復活しているのはなぜ?あえて寝台車にしない理由とは
全廃間近だった「夜行列車」が次々と復活
2015年に寝台特急「北斗星」(上野⇔札幌)が運転を終了し、60年近く全国を走りつづけたブルートレインが姿を消した。その後、青い寝台車を連ねた列車ではないけれど、寝台特急「サンライズ瀬戸&出雲」が唯一の定期夜行列車として気を吐いている。
人気はあるものの車両の老朽化は進み、いずれ日本国内からは夜行列車は全廃されるのではないかと、その存在を危ぶむ声が高まっているのが現状だ。
目下、夜を徹して走っている列車といえば豪華列車「ななつ星in九州」「トランスイート四季島」「トワイライトエクスプレス瑞風」があるが、庶民の手の届く列車ではない。
ただし、JR西日本が2020年から運行を開始した「WEST EXPRESS銀河」は、不定期運行ながら、庶民にも手が届く良心的な価格設定で人気を博し、夜行列車の新たなスタイルとして注目されている。
その後、夜行列車に関しては大きな動きがなく、夜行列車という言葉自体が死語になりつつあったが、2026年になって新たな列車の設定が相次いで発表され、にわかに色めき立ってきた。
JR東の新型夜行特急「ルナ・アズール」
まずは、JR東日本が首都圏から東北方面への夜行運転に対応する特急列車として「ルナ・アズール」を発表した。
常磐線特急「ひたち」「ときわ」に使用されているE657系電車を大改造するもので、横になれる大きなソファーなどを備えた個室で構成され、すべてグリーン車あるいはプレミアム・グリーン車。気になる料金は東北新幹線のグリーン車プラスα程度だという。
リリースを見てわかるように、これは寝台車ではない。あくまで個室内でリラックスして過ごせる夜行列車との位置づけであることに注目したい。
本格的な寝台車にすると、寝具などを取りそろえ清潔感を確保するために経費もかかるし、人件費も必要だ。これでは運行を継続すると儲けにならず、廃止された理由のひとつでもある。できるだけ簡略化しつつも夜行列車のメリットをアピールして利用者を増やすには、これが最適だと考えたのであろう。
この列車は、JR西日本の「WEST EXPRESS銀河」の成功にあやかって、JR東日本が登場させる夜行列車だと予想できたものであった。
ところが、続いてJR東海が発表した東海道新幹線の「東海道ルミエールエクスプレス」には正直度肝を抜かれた。新幹線の夜行列車はありえないと思っていたからだ。
新幹線は高速走行の安全を確保するため、夜間に線路や架線などの施設を念入りに保守点検する必要がある。また、沿線への騒音公害への配慮から、午前0時から6時までは列車の走行を行わないという「不文律」がある。
なぜ「夜行新幹線」が実現したのか?
ところが、「東海道ルミエールエクスプレス」は、このルールを破ることなく、東京から新大阪までの夜間走行を実現したのだ。
つまり、名古屋の次の駅・岐阜羽島に午前0時前に到着すると、ここで6時間停車。翌朝6時に岐阜羽島駅を発車し、新大阪に6時59分に到着するのだ。深夜時間帯は走行しないので、「夜行列車」とは言えないかもしれない。実際、JR東海のリリースをよく読むと、どこにも「夜行列車」の文字はない。あくまで、「当日出発・翌朝到着の特別列車」なのだ。
言い換えれば、最終「のぞみ」が発車した後の岐阜羽島行きが、翌朝岐阜羽島発、新大阪行きに変身するとも言える。
岐阜羽島駅では「列車ホテル」として機能すると考えれば、確かに「夜行列車」と呼ぶには違和感があるかもしれない。
まあ、そんな固い理屈は抜きにして、始発の「のぞみ」より早く新大阪に着ける列車誕生と考えれば、有難く思う人は多いのではないだろうか? 料金が「のぞみ」とほぼ同等であるので、宿泊費が節約できる。近年、ホテル代が高騰しているので、この列車の料金をリーズナブルだと思う人も多いのではないだろうか?
しかも、窓側席しか販売しないという。そうすると3人席を独り占めでき、ひじ掛けを収納すれば横になって仮眠できる。バスよりもゆったりできるので、3人掛け席は人気を呼びそうだ。
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