カナダのオンタリオ州に住む11歳の少年が、狂犬病を発症して死亡したという症例が報告されました。少年は狂犬病の発症前、顔にコウモリが止まったことに気付いて目を覚ましていたとのことです。

Fatal rabies in a child | CMAJ

https://www.cmaj.ca/content/198/25/E969

Canadian boy dies of rabies after waking to find bat on his face | Canada | The Guardian

https://www.theguardian.com/world/2026/jul/02/canadian-boy-dies-rabies-bat-on-face

11-year-old boy in Canada dies from rabies after waking up with a bat on his face | Live Science

https://www.livescience.com/health/viruses-infections-disease/11-year-old-boy-in-canada-dies-from-rabies-after-waking-up-with-a-bat-on-his-face

狂犬病は年間で約6万人もの死者を出している危険なウイルス感染症であり、一度発症すると99.99%以上の確率で死亡することが知られています。狂犬病ウイルスは一般に人から人へ感染することはありませんが、犬・猫・アライグマコウモリといった動物がウイルスを持っており、これらの動物に引っかかれたりかまれたりすると発症する可能性があります。

2026年6月29日、カナダの医学誌であるCanadian Medical Association Journalで、カナダのオンタリオ州に住む11歳の少年が狂犬病で死亡した症例が報告されました。この少年は2024年のある日、オンタリオ州北部のコテージに家族で宿泊していたところ、夜中にコウモリが顔の上に止まっていることに気付いて起きたとのこと。

父親は調理鍋でコウモリを捕まえて外に放し、子どもに目立ったひっかき傷やかみ傷はありませんでした。また、コウモリの行動にも特に異変はみられなかったことから、両親は子どもが狂犬病に感染した可能性については考えず、医療機関に受診させることもしませんでした。

確かに狂犬病コウモリは昼間に現れたり、地面で休んだり、飛ぶのが困難になったり、簡単に人間に近づいたりといった異常行動を示すことがあります。しかし、これらの行動が見られなくてもコウモリ狂犬病に感染している可能性はあると指摘されています。



コウモリとの遭遇から19日後、少年は顔の右側にチクチクとした痛みやしびれ、腫れといった症状を訴えて、地元の病院で診察を受けました。この際、心拍数と白血球数の上昇を除けばバイタルサインは正常であり、ヘルペス性歯肉口内炎だろうと診断されて退院したとのこと。しかし、医師は少年がコウモリと接触していたことを聞いたため、地元の公衆衛生当局に狂犬病予防薬を投与すべきかどうかを問い合わせたそうです。

翌日になると少年の容体は急変し、顔の右側の感覚がなくなって、ろれつも回らなくなりました。病院で待機している間にも発熱・錯乱・幻覚・嚥下(えんげ)困難といった症状がみられ、その後は狂犬病の特徴的な症状である唾液の過剰分泌も発生しました。

医療チームは狂犬病を強く疑っており、少年は集中治療室で4日間にわたり治療を受けた後に、狂犬病検査で陽性反応を示しました。なお、医療チームは狂犬病抗体を少年の脳に直接投与することも検討したそうですが、この処置は侵襲性が高く、有効性も確認されていないため断念したとのこと。

入院から5日後には脳幹反射が消失し、脳幹の機能が完全に失われたことが判明。入院から17日後、家族医療チームの協議を経て生命維持装置が外され、少年は死亡しました。



カナダにおいて狂犬病は極めてまれであり、1924年以降に記録された症例はわずか28件に過ぎず、オンタリオ州で最後に確認された症例は1967年にさかのぼるとのこと。しかし、コウモリなどの狂犬病を媒介する可能性がある動物に接触した場合は、速やかに医療機関を受診することが必要です。狂犬病ウイルスの感染には必ずしも傷が付く必要はなく、コウモリの唾液が目や鼻、口に侵入することでウイルスが感染する可能性もあるそうです。

狂犬病はいったん症状が現れると99.99%以上の可能性で死亡しますが、感染後すぐに傷口の洗浄や抗体の投与、一連のワクチン接種といった治療を行えばほぼ確実に発症を防ぐことができます。症例を報告した医療チームは、「狂犬病への暴露の早期発見と適切なタイミングでの暴露後予防は、依然として狂犬病予防の唯一効果的な手段です。コウモリとの直接的な接触があった場合、目に見えるかみ傷やひっかき傷がなくても暴露後予防の適応対象となります」と述べました。