[本田泰人の眼]森保監督の去就問題。僕は続投でいいと思う。いや続投すべきだ。もっと強くなるために。その土台は8年間で間違いなくでき上がった
あと一歩だった。本当に、あと一歩だった。
日本は世界屈指の強豪ブラジルを相手に90分以上、食らいつきながら、後半アディショナルタイムに力尽きた。
結果だけを見ればベスト32敗退。悔しい敗戦だ。ただ、この試合を見て思ったのは、「世界との差は思っていた以上に小さくなっている」ということだった。
“半歩のズレ"と選手層。この2つだった。
試合を振り返れば、日本のゲームプランは素晴らしかった。立ち上がりだけ前からプレッシャーをかけ、その後は無理をせず5−4−1のブロックを形成。中央を締め、ブラジルを外へ追いやる。ブラジルはボールこそ持っているけど、中央突破はほとんどできなかった。
29分の先制点は、佐野海舟の読みが素晴らしかった。パスコースを読んでインターセプトすると、そのまま迷わず持ち運び、低い弾道のミドルを突き刺した。
理想的な試合運びだったと言える。でも、後半になると、ブラジルは攻め方を変えてきた。中央突破ではなく、サイド深くまで運んでクロスを出し続けた。
そして56分。ヴィニシウス・ジュニオールが左サイドで時間を作り、パスを受けたガブリエウ・マガリャンイスがクロス。ファーでカゼミーロがヘッドで合わせて、同点ゴールを奪う。
完璧なクロスだった。前回のカタール大会でも、決勝トーナメント1回戦で戦ったクロアチアはクロスを増やして日本を揺さぶってきた。日本の弱点は「クロス対応」。ブラジルは試合中に相手の弱みを見つけ、迷わず修正してきたのだろう。
そして、前回のコラムでも書いたとおり、世界では“半歩”が命取りになる。この試合もまさにそうだった。クロスが上がる瞬間、日本の最終ラインは一歩だけ中央へ絞った。ただ、この状況ではカゼミーロに対してしっかり寄せないといけなかった。
クロス対応では、「ボールを見る」と「マークを見る」。この2つを同時に見続けなければいけない。ディフェンダーはボールだけを追った瞬間に負ける。相手を見失わないことが鉄則なんだ。
そのための細かなステップワーク、身体の向き、距離感。これを90分、続けられるか。そこが世界との差でもある。
アディショナルタイムの逆転弾では、田中碧がボールを奪われた流れから、決められた。田中のロストだけを責めるのは簡単だ。でも、本質はそこではない。いつ、どこで、何をすべきか。その状況判断がいただけなかった。あの時間帯では「つなぐ」ことではなかったと思う。
まずクリアすること。相手を押し返すこと。ゲームを切ること。世界の強豪は勝負どころでリスク管理を徹底する。日本はそこで少しだけ判断が甘かった。
そして、もう1つ。改めて感じたのは選手層の差だ。
ブラジルは交代選手が試合を変えた。決勝点も途中出場のガブリエウ・マルチネッリで、しかもプレミアリーグで優勝したアーセナルで活躍するFWだ。そんな選手がベンチを温めている。だから、途中から入る選手の質が落ちない。むしろギアが上がる。
対して日本は、途中から入った選手が流れを変えられなかった。もちろん責めるつもりはない。でも、これが現実だ。
久保建英の負傷によって、伊東純也を先発で使わざるを得なかった。本来なら後半勝負で投入したかったカードのはず。今大会は怪我人が少なくなかったとはいえ、ジョーカー不足でもあった。これも日本の課題だと思う。スタメンと同じ強度で試合を動かせる選手があと2〜3人いれば、日本は間違いなく、もう一段上へ行ける。

