二人のレジェンドを失った『ドラクエⅫ』は完成するのか…?ファンがそれでも待ち続ける「切実な理由」

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ドラゴンクエストからのお知らせ」は、皮肉なことに日本のゲーム史に刻まれる、終わりの見えない混迷を知らしめる結果となった。そして、『株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス』の株価の下落は止まらず、6月に入っても低迷を続けている――。

1986年5月27日に第1作『ドラゴンクエスト』が発売されてから40周年の節目となった5月27日(「ドラクエの日」)に、スクウェア・エニックス公式YouTubeチャンネルでは「ドラゴンクエストからのお知らせ」と題した動画が配信された。

しかし、5年の沈黙を破って提示されたのは、ゲームの完成でも発売日の告知でもない。明かされたのは開発体制の刷新、タイトルロゴの一新、サブタイトルの『選ばれし運命の炎』から『夢の彼方へ』への変更、そして、実質的な開発リスタートという想定外の事実だったのだ。

批判が続出した納得の理由

時計の針を5年前に戻そう。

’21年5月27日、シリーズ35周年の記念特番において最新作『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』の制作が華々しく発表された。暗闇の中で炎が赤く燃え盛るタイトルロゴとともに、ゲームデザイナーの堀井雄二氏(72)の口から語られたのは、「ダークで大人向けのドラクエになる」「選択肢によって生き方が変わり、ゲーム自体も変化する」「コマンドバトルを一新する」という、従来の王道ファンタジー路線を覆す野心的なコンセプトだった。

世界中のファンが歓喜し、最新ゲームハードでの壮大な冒険を夢想した。しかし、そこから長期間の沈黙が始まる。公開されたのはロゴのみで、対応ハードも、プレー画面も、発売時期も一切が謎に包まれたまま、何年経っても音沙汰はなく、ネット上では「開発が完全に難航している」「企画が何度も空中分解している」といった不穏な噂が囁かれ続けた。

そのあまりに長すぎる間に、音楽を手がけるすぎやまこういち氏(’21年没・享年90)、そしてキャラクターデザインの鳥山明氏(’24年没・享年68)という、シリーズを支え続けてきた二人の偉大な生みの親がこの世を去ってしまうという、ファンにとっての悲劇まで重なったのである。

そうした不安や焦燥感が極限まで高まった状態で迎えた今回の配信だったため、あまりにも中身のない告知内容にファンの落胆や批判が相次いで続出したというわけだ。

さらに、これを契機とした株価の下落インパクトはすさまじい。発表翌日の5月28日、前日比5.2%安の2565円に急落した『株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス』の株価は、その後も下げ止まることなくズルズルと後退。6月23日の終値は2392円50銭を記録し、発表前日の2704円50銭からわずか一か月余りで11.5%(312円 )も値を下げる展開を見せている。市場が容赦のない審判を下した背景には、国民的人気ゲーム『ドラゴンクエスト』の40周年という象徴的な日に告知された最新作『ドラゴンクエストXII』の新情報が、あまりにも期待外れだったからだ。

「裏を返せば、この5年間作ってきたものを実質的に一度リセットし、ほぼゼロから作り直しているということです。齊藤陽介氏(55)というヒットメーカーが新プロデューサーに就任したことは好材料ですが、仕切り直しの規模が大きすぎる。市場にとって、『また何年も待たされる』という不確実性は、企業の収益見通しにおける重大なリスクと捉えられました」(ゲーム業界関係者)

180度の方向転換に疑問も残るが……

スクウェア・エニックスのいつ発売するかわからない、という不透明さが投資家の不信感を決定的なものにした。一方で、ネットやSNSに渦巻くファンのリアクションは、単なる失望や市場の冷ややかさだけでは片付けられない、極めて複雑なグラデーションを見せている。さらに、関係者はこう続ける。

「大きな反響を呼んだのが、前エグゼクティブプロデューサー・三宅有氏の後任として、同社の人気ゲームタイトル『ニーア』シリーズなどで知られるヒットメーカー・齊藤陽介氏が新たにプロデューサーに就任したという事実です。三宅氏は長年『ドラクエ』シリーズの総責任者を務めながらも、’24年春に一部報道で、開発遅延のテコ入れとして他部署へ異動したと報じられた。

彼の突然の離脱劇は、当時『ドラクエ12開発中止か!』と噂されるほどファンに開発座礁の懸念を抱かせた。それだけに今回の齋藤氏の登板は、ネット上における『やっぱり裏でいろいろと揉めていたんだな』という、これまでの長い沈黙に対する納得と安堵の声につながっています。当初、掲げられていたダーク路線から、今回、堀井氏の口から語られた『明るくワクワクするような世界』への180度の方向転換に対しても、『完全に作り直しだ』という驚きとともに、それを受け入れようとする空気も漂っています」

同時に、ファンの諦めの溜息もまた深い。SNSには「リスタートしたのなら、発売はあと何年先になるのか」「PS5のライフサイクルが終わってしまうのではないか」といった、いつ届くかもわからない夢を待ち続けることへの疲弊感が蔓延している。

「何より、ファンの心を締め付けるのは、この5年の間にこの世を去ったすぎやま氏・鳥山氏という二人のレジェンドの存在です。お二人が生前に関わった最後の遺産を、新体制でなんとか形にしてほしい。クレジットにその名が維持されていることへの感謝と、長期化の中でも中途半端で終わらせてほしくないという切実な祈りが、タイムラインを埋め尽くしています」(同前)

迷走の末に、サブタイトルを『夢の彼方へ』と変えた『ドラクエ12』。ファンが愛着と諦めの狭間で揺れ動く中、果たしてこの“夢”は、プレイヤーの手元に無事届くのだろうか。