●ドラマと『ダウンタウンDX』兼務の4年間
注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。今回の“テレビ屋”は、読売テレビの汐口武史氏だ。

バラエティ、ドラマ、メガヒットアニメ『名探偵コナン』とテレビの中のジャンルを超えるだけにとどまらず、縦型ショートドラマ、漫画、AIドラマなどメディアを超えて新領域の開拓に取り組む同氏。その中で共通するのは、「今日初めて見る人がいる」という感覚、そして“教科書1ページ目”を作る意識だった――。

汐口武史1984年生まれ、兵庫県出身。京都大学卒業後、2007年に読売テレビ放送へ入社し、大阪制作で『週刊えみぃSHOW』『ytv新人漫才賞』などを担当。その後、東京制作でドラマ『黒い十人の女』などをプロデュースし、『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』などで演出も手がける。ドラマ制作と並行して『ダウンタウンDX』のディレクターも務めた。アニメ『名探偵コナン』ではテレビシリーズと劇場版に携わり、ytvメディアデザインに出向して縦型ショートドラマ、漫画、AI映像など、新たなコンテンツ領域を開拓。26年6月から読売テレビに帰任し、ドラマ制作を担当している。

○上沼恵美子が「VTR面白かったよ」と言って立ち去った

――当連載に前回登場したAI映像クリエイターの宮城明弘さんが、「バラエティもドラマも『コナン』もやって、何をやってもうまくいくんじゃないかという感じのある人で、面白い要素を入れるのがとても上手です」とメッセージを頂きました。

宮城さんとは、まだ1年ぐらいの付き合いなんです。生成AIで制作したSFショートドラマ『サヨナラ港区』で初めてご一緒したんですけど、その前に知人に紹介してもらって「すごいものを作るな」と思って、一緒にお仕事することになりました。

――『サヨナラ港区』の話は後ほど改めて伺いたいと思います。テレビ業界はどのような経緯で目指したのですか?

お笑いが好きで、放送作家になりたかったんです。高須光聖さんが自分のウェブサイトでいろんな作家さんやテレビマンと対談をやっていて、それを見て「こういう人たちがいるんだ!」と思いました。でも作家になるのは大変だと知って、意外とテレビ局に入るほうがルートとしては近いんじゃないかと思ったんです。

――バラエティ志望で読売テレビに入り、最初から制作に配属されたのですか?

大阪の制作に配属されて、上沼恵美子さんの番組を担当しました。当時はまだ『週刊えみぃSHOW』をやっていて、そこから『愛の修羅バラ!』、今やっている『上沼・高田のクギズケ!』と、上沼さんと長くご一緒しました。

それに加えて、『ytv漫才新人賞』などのネタ番組や、NGK(なんばグランド花月)で吉本新喜劇の座長さんたちと一緒に台本を作って月1回公演する舞台もやりました。当時は川畑泰史さんや小籔千豊さんが座長の時期で、やっぱりお笑いをやりたかったというのが基本にあります。

――上沼さんの番組では、やはりスタッフとして鍛えられた感覚はありますか?

そうですね。僕が初めてちゃんと打ち合わせをしたタレントさんが上沼恵美子さんなんです。スタートがそこなので、それが基本だと思って育っています(笑)

初めて自分が作ったVTRをスタジオで出した時、それがまあまあウケたんです。収録後、スタッフが並んでいるところに上沼さんがわざわざ来てくださって、「VTR面白かったよ」と言って立ち去っていかれた。それで周りや会社の面々の見る目が変わって、すごく助けられました。

――バラエティを経て、その後ドラマも担当されました。

先ほど話した吉本の座長さんと舞台をやるようになって、脚本を作ったり、お芝居をやったりするのが楽しいなと思ったんです。そこで「ドラマというのもあるな」と思うようになって、東京に異動してから担当することになりました。

もともとお笑いが好きで、コントをやりたいと思っていたんですけど、当時、スタジオで時間をかけてコント番組を作るというのはなかなかできない。でもドラマなら、時間をかけてコントのように作り込んだものができるなと思ったんです。

――最初にプロデュースした作品はなんですか?

完全に一人でプロデューサーを担当したものとしては、木村佳乃さん主演の『ぼくのいのち』というスペシャルドラマです。2本目が連ドラで、バカリズムさん脚本の『黒い十人の女』でした。『黒い十人の女』は、ロングコントみたいなところもあったので、自分がやりたかったことに近いところに行けた感覚がありました。

そこから、恋愛ドラマやラブコメのようなジャンルも楽しいなと思うようになりましたね。2年ぐらいドラマのプロデューサーをやって、監督もやるようになって、「ドラマはしんどいけど楽しいな」という感じでした。

ダウンタウン

○番宣アテンドと思いきやガッツリ打ち合わせ

――その頃は、ドラマ専属だったのですか?

正確に言うと、バラエティを7年やって、そこからドラマを7年やるんですが、そのうち4年は『ダウンタウンDX』と兼務していました。よく分からないですよね(笑)

ドラマは年中撮っているわけではないので、1年の中でそんなに忙しくない時期があるんです。そんな中で、僕が『恋がヘタでも生きてます』で初監督をやった後、上長と飲んだ帰りに「今週金曜空いてるか?」と言われて、『DX』の会議に呼ばれたんです。「外から見て思うことを言ってくれ」と。

翌週には「木曜空いてるか? 1回収録見といた方がええやろ」と言われて、収録を見に行きました。スタジオの前室で「こんな感じでやってるんだ」と思いながら見ていたら電話がかかってきて、(収録スタジオの)TMCの入り口にあった「今昔庵(※喫茶店)に来い」と言われて行ってみたら、浜田(雅功)さんがいたんです。

そこで「こいつ新しくスタッフになったんです」と紹介され、松本(人志)さんのところにも行って、「こいつはずっとバラエティをやっていて、ドラマに行ったけど、またバラエティに戻ってきました」って。え、そうなの?と思いましたよ(笑)。そこから、ドラマがない時期は『ダウンタウンDX』を一ディレクターとしてやるようになりました。

――ドラマと『DX』を行き来していたんですね。

「そろそろドラマの撮影が近いので離れます」と言ってドラマをやっていると、最終話を撮る頃に「いつの収録から戻れる?」と連絡が来る。そこから「じゃあこの回担当ね」となる。それが4年ぐらい続きました(笑)

もともとバラエティもやりたいし、バラエティの特番もちょこちょこやっていたので、両方できるのはいいなと思いましたね。それに、ドラマの番宣で出演者を『DX』に連れて行って、収録当日は自分が『DX』側のディレクターとして「オープニングなんですけど、この人がしゃべって…」って打ち合わせをすることもありました(笑)

――『DX』といえば、この業界を志した高須光聖さんもいらっしゃいますよね。

会議に行くと、高須さんに、倉本美津留さん、かわら長介さん、木村祐一さん、山名宏和さんというメンバーがガーッと並んでるんです。すごく勉強になりました。

――ドラマとバラエティを同時期にやることで、クリエイティブ面に生きたことはありますか?

もともとバラエティの人間なので、バラエティの編集リズムが体にあります。だから、ドラマに行く前は、ドラマに対して違和感があったんです。何もしゃべっていない顔をずっと見せるとか、ゆったりしているなというイメージがあったので。でも、そこでやっているとドラマのリズムに染まっていくんですね。

それでもたまにふと「同じ1時間の番組」として見た時、ドラマの1時間の情報量と『ダウンタウンDX』の1時間の情報量を比べると、「ドラマのほうももう少し詰め込んだ方がいいのかな」と考えて、意識するようになったかもしれません。

●『名探偵コナン』絶対に否定しない青山剛昌氏
(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996">
『名探偵コナン』読売テレビ・日本テレビ系(※一部地域を除く) 毎週土曜18:00〜(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996

――バラエティ、ドラマに続いて、今度はアニメ『名探偵コナン』も担当されました。

7年バラエティをやって、7年ドラマをやって、いろいろ企画を出してきた中で、このままだとアイデアが枯れるなと思っていた時期がありました。ちょうど二人目の子どもが生まれた頃で、仕事に対して全振りでやりきれないようなタイミングでもあったんです。

「そろそろ異動もありかな」と思っていたら、「コナンです」と言われて、あまりの大きなタイトルに「おお……」と(笑)。自分がアイデアを出して、演出するという形ではなかったのですが、やっぱり背負うものが大きいですよね。テレビと映画を3年やりました。

――メガヒットのIPから、学ぶものは大きかったですか?

まず、あれを毎週放送しているということがすごいです。原作回もありますが、多くはオリジナルで、毎週毎週、事件を30分で解決する台本を作っていく。これはなかなか大変です。映画では(原作の)青山剛昌先生とも打ち合わせするのですが、やっぱりすごいなと思いました。

――青山先生のどんなところにすごさを感じましたか?

「我々ごときの話を聞いてくれるんだ」と思いました。『コナン』は先生の世界じゃないですか。先生が「こうだ」と言えばそうなる。だって世界を作った人ですから。

でも、打ち合わせで「何か思いついたことがあったら言ってほしい」と言ってくださるんです。それで頑張って言ってみると、絶対に否定しない。「面白いね、いいね」と受け止めてくれる。でも、「それだったらこっちのほうが良くない?」と返ってくる案が、また正解なんです。

その打ち合わせはもちろん緊張感もあるんですが、本当に全員の話を聞いて、「なるほどね」と言いながら、最終的に「こうしたほうがいいよね」と出してくる。あそこまで上り詰めた人が、なぜそんなにフラットに全部受け入れられるんだろうと思いますし、そこでみんなが意見を言うから、面白いんだなと感じました。

――ほかにも『コナン』で得た気づきはありましたか?

『コナン』をやっている時、まだ小さかった自分の子どもには『コナン』を見せていなかったんです。人が死ぬ話なので。そう思った時に、「今日初めて『コナン』を見る人っているんだな」と気づきました。つまり30年続いていて、今も人気が右肩上がりということは、新しいファンが次々に入ってきているということです。僕自身も小学生ぐらいの時にアニメが始まって、しばらく離れて、また見るようになった。そうやって一度離れて戻ってくる人もいれば、今日初めて『コナン』を見る人もいる。その感覚を持たないといけないと思いました。

『コナン』はファンが多いですが、ファン向けにやりすぎると、それ以外の人が分からなくなってしまう。だから『コナン』はそれをやらないんです。映画でも冒頭に「俺は高校生探偵・工藤新一」と、結構長く説明するじゃないですか。今年初めて見る人もいるという感覚を持って、新しいファンを取りにいこうとしている。そこはテレビとしてもすごく大事なことだと思いました。

――そうした中で、汐口さんの経験を『コナン』で生かしたものはありますか?

内容的なことというよりは、今言ったようなことですね。「社会人になってずっと『コナン』を担当しています」という歴戦のスタッフもたくさんいるので、どうしても内々で「これ分かるよね」となりがちです。なので、SNSで宣伝をするときでも、「何も知らない人が見たら分かるか」「人物の相関が分かるか」ということを丁寧にやりましょう、とはずっと言っていた気がします。

『コナン』の強みは、単純な映画の面白さだけではなく、たとえば距離を縮めたい相手を「コナン見に行こう」と誘えることでもあると思うんです。その時に、全然知らない人でも「これを見ておけば分かるよ」という状況をどう作るかは意識していました。

○読売テレビ本体では手を出しにくい事業に挑戦

――その後、ytvメディアデザインに出向されました。

2年前からです。『コナン』を経て、もう一回、自分の中のクリエイティブで、何か小さくても作っていくことをやりたかったんです。

それと、まだテレビがあまり手を出していないところにどう行くか。『悪夢の不倫温泉』といった縦型ショートドラマや、映像化を目指す原作漫画、宮城さんとやったAIドラマ『サヨナラ港区』など、読売テレビ本体では手を出しにくいところをやってきました。6月15日には新しい漫画『裏社会の構成作家』をリリースします。闇落ちした構成作家が社会の裏側で「台本」を書いて事件を巻き起こしていくお話です。

――メディアを問わず、いろいろできる環境なんですね。

そうですね。パートナーになってくれそうな面白い会社があったら、ホームページの問い合わせフォームから「ショートドラマをやろうと思っていて、一度お話させてもらえませんか?」と連絡します。急にそんなことを言われたら、向こうは「何だろう」と思って、ytvメディアデザインという会社を検索して僕の名前を見ると、『名探偵コナン』が出てくる。そうすると、皆さん話を聞いてくれるんです(笑)。『コナン』のブランドを勝手に使って申し訳ないんですけど、そんな感じでいろんな会社さんと話をしながら、新しくやれることを探していました。

●関西ローカルの深夜で「何だこれ!?」を狙ったAIドラマ
『サヨナラ港区』

――宮城さんと組んだ『サヨナラ港区』は、壮大な世界観で“港区女子”というカテゴリをイジる面白さがありました。

世の中に出ているドラマの企画は、どうしても似てくるところがあると思うんです。でも物理的、予算的な制約があるので、深夜ドラマでロボットを出したいと思ってもなかなかできない。でも、AIを使ったら出すことができて、企画の制約が取り払われる可能性がある。そうやって、普通に撮れない映像がいいよね、というのが最初にありました。

AIショートドラマで不倫ものをやっても仕方ないので、六本木で飲んでいる女の子たちの話とロボットを組み合わせたらどうなるか、というところからあの形になりました。

――キャラクターがバカバカしいセリフを本気で真面目に力説するという構図は、AIが「演じていない」からこそのギャップの大きさがツボでした。

壮大なことをやっているのに、バカバカしい。しかも、誰も一切ツッコます、ただただ真っすぐ本気でやっている。あれが関西ローカルの深夜に急に流れてきたら面白いなと思ったんです。「何だこれ?」となればいいなと。

AIを使った悪ふざけではあるんですが、意外と各所で真面目に捉えられて、この作品をきっかけにいろんなところでAIの話をするようになりましたね。

――ショートドラマとはいえ全23話あるので、その尺を全編AIで作り切ったのは、かなり珍しいですよね。

全部で50分ぐらいあるので、かなり労力はかかりました。それなりの編集技術も必要だと思います。僕も1カ月くらいずっと編集をずっとやっていましたから。

ただ、別にあの作品で「AIすごいな」「AIっていいでしょう」と言いたいわけではないんです。冒頭に「可能性と限界を知るために作りました」というクレジットを入れていますが、本当にその通りです。AI信者でもないですし、できること、できないことはたくさんある。ただ、「こういうシーンやカットなら使えるな」ということは、きっとあると思います。

――今後、AIを軸にした新たな展開は考えていますか?

実はあまり考えていないんです。今クールのドラマでも、部分的にAIが使われるようになっていると聞きます。いろんな使い方をみんながするようになる中で、同じことをやっても仕方ない。

だからAI周りの情報はたくさん入ってくるようになりましたが、面白くなるために使えるところがあるなら使いましょう、というスタンスです。AIきっかけで考えるのは『サヨナラ港区』だけでいいかなという感じですね。

『裏社会の構成作家』

○ドラマの企画を先に漫画化『裏社会の構成作家』

――バラエティ、ドラマ、アニメ、そしてテレビを超えた取り組みと、様々なジャンルを経験してきたことでご自身の強みになった部分は何でしょうか?

何かを思いついた時に、選択肢があるということは大きいです。これはバラエティにしたほうがいいのか、ドラマにしたほうがいいのか、アニメにしたほうがいいのか、その選択肢をもっと増やしたいです。この幅をどれぐらい持っておけるかが、テレビをやる上では大事だと思っています。たとえば事件が一つあった時に、それを報道にするのか、ドラマにするのかという幅を持っておくために、報道やスポーツもやってみたいですね。

――『裏社会の構成作家』という漫画は、まさにバラエティをやっているからこそ生まれた作品ですよね。

構成作家が仕事を辞めて、昔のプロデューサーに誘われて仕事をするんですが、それが詐欺のプロットを考えるような、裏社会のいろんな事件を企画構成力で乗り切っていく話です。第1話は、カルト教団の教祖の恋愛相談に乗るという話で、もともとはドラマの企画としてあったものを、先に漫画にしてみました。

漫画の作り方も全然違って勉強になります。シナリオを作って、構成の方がネームを切る時に「そこは意味が分からないので変えていいですか?」と言われたりする。で、こちらは「いやいや、ここはこだわりがあって…」となったり(笑)

●テレビが最先端だったことは一回もない


――6月から読売テレビに帰任されましたが、ytvメディアデザインの2年間は、充実した日々を送られていた感じでしょうか。

性には合っている気がしました。会社としてあまりやっていないところを耕しに行くのは楽しいです。『コナン』は収穫係みたいな仕事でしたから、みんながやってきたものを、うまく収穫しないといけない。一方でAIは、鍬(くわ)を持って耕しに行っているイメージです。そこで耕したら、あとはみんなそれぞれ種を植えたり苗を植えたりしてもらえる環境を作る仕事ですね。

――ジャンルもメディアも問わず、いろいろなことをやってきた中で、一貫して大事にしていることはありますか?

『コナン』の時に話した「初めて見る人がいる」ということです。今、「テレビが最先端ではなくなった」と言われますけど、テレビが最先端だったことなんて、これまで一回もないと思うんです。そもそもドラマも映画の方が先にあって、テレビドラマは少し下に見られていたところから始まっている。自分で振り返っても、20歳ぐらいの時にテレビを見ていたかというと、見ていないんです。外で飲んでいる方が楽しいし、見るとしても自分で選んだ映画を借りて見る。若者なんてテレビから離れて当然なんです。

でも、子どもの時に最初に入るのはテレビじゃないですか。アニメなら『ドラえもん』から入って、少し経って『コナン』に行く。そこから先は、自分の気に入ったものを自分で見つけに行く。ドラマも同じで、“教科書1ページ目”のようなドラマをテレビで見て、ドラマに慣れ親しんで見る目が肥えてきたら、邦画を見たり、ハリウッド映画を見たりして、だんだん自分で選ぶようになる。

テレビには、ハイブローですごく質の高いものもあっていい。でも、入口になる“教科書1ページ目”がちゃんとテレビにあれば、そこから巣立っていって、映画を見るようになって、またいずれ戻ってくる。そういう場所でいいんじゃないかと思うんです。だから、改めて子ども番組はすごく大事だと思うんです。

――子ども番組ですか。

テレビ東京が人気なのは、子どもの時から見ているのも一因だと思うんです。どれだけ早く、局にタッチしてもらえるかが大事だと感じます。先日、子どもが初めて『サザエさん』を見たんです。長男が小学3年生なんですが、カツオが「姉さん」と言った時に、「どういうこと?」と言うんです。「おじいちゃん、おばあちゃんに見える人がいるでしょ。あの子どもはサザエとカツオとワカメまでで、一番小さい子はサザエの子どもなの」と説明したんですけど、まあ初見だとそうなりますよね。

ということは、ドラマを初めて見る日も来る。その時に、考察系のすごく複雑なものが一発目のドラマかというと、やっぱり違う気がします。「今日初めて見る人がいるかもしれない」という感覚は持っておいたほうがいい。ショートドラマも、若い人がスマホで入りやすいという意味で、入口になるといいなと思って作りました。

『コナン』がすごいと思ったのは、アニメだけじゃなくて、映画館の入口になっているんです。『コナン』を見に行くと、いろんな映画の予告編を見て、そこから他の映画を見るようになるじゃないですか。

○縦幅と横幅を少しでも持ちたい

――新しいメディアを耕していく中で、“教科書1ページ目”の意識はより強くなったんですね。

自分の中で、横幅と縦幅という感覚があります。横幅は、バラエティもやる、ドラマもやる、アニメもやるということ。縦幅は、特定のリテラシーがないと分からないものから、“教科書1ページ目”のようなものまで持つことです。この縦幅と横幅を、少しでも持ちたい。そこが大事な気がしています。

いろんなところに足を突っ込んで、何に生きるかは分からない。逆に言うと、僕は何のスペシャリストでもないという思いもあります。何一つ大成しなかったから転々としている、という見方もできる。でも、ドラマを20年やっているより、バラエティもアニメもやっていることは、めちゃめちゃ強みだなと思います。ありがたいキャリアを歩ませていただいていると思いますね。

――6月から読売テレビに帰任されましたが、どのような業務になるのですか?

主にドラマ制作を担当します。とはいえ、その時々の流れで、いろんなことをやれるといいなと思っています。

――ご自身が影響を受けた番組を挙げるとすると、何でしょうか?

すごく面白くない答えかもしれませんが、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ)です(笑)。それと、NHKでやっていた『フルハウス』のようなシットコムもめちゃくちゃ見ていた記憶があります。

日本のコンテンツとして、実写はアニメに比べると階段が少ないと思うんです。アニメは『ドラえもん』、『コナン』と行って、その先に大人向けのアニメがある。でも実写には、その階段が今なかなかない。自分の子どもに最初に見せたいドラマは何だろうと考えた時に、昔は『ロンバケ(ロングバケーション)』とか『古畑任三郎』とか、いろいろあったなーと思うんですけどね。

――いろいろお話を伺わせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…

“入口”の流れで言うと、テレビ東京で『シナぷしゅ』を立ち上げた飯田佳奈子さんです。テレ東さんは子ども番組が多いですが、「ついに0歳、1歳まで取りに行ったか!」と思って。うちの子どももその頃はめちゃくちゃ見ていましたし、今、最初に見るテレビがテレ東になっている。その戦略はすごいなと思います。

子ども向け番組は作り手のエゴを全部捨てないといけない部分があると思うのですが、それよりも下の年代の乳幼児向け番組はどのような思いで作られているのか、聞いてみたいです

次回の“テレビ屋”は…



テレビ東京『シナぷしゅ』統括プロデューサー・飯田佳奈子氏