プジョー3008はハイブリッドよりEVが似合う? 取り戻した感のある205や306の挙動【森口将之が解析】
早くから取り組んできたパワー・オブ・チョイス
マルチパスウェイというと、トヨタをはじめとする日本車の専売特許のように思っている人がいるかもしれないけれど、プジョーを含めたステランティスも、同様の取り組みを早くからしてきたグループのひとつだ。
【画像】ハイブリッドに続き追加されたEVモデル、『プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ』 全26枚
たとえば208では、日本導入当初から、ガソリンエンジンと電気モーターの2種類を用意し、『パワー・オブ・チョイス』とアナウンスしていた。208が日本で発表されたのは2020年。日本の自動車業界がマルチパスウェイという言葉を使うようになったのは、2年後あたりからだと記憶している。

ハイブリッドに続き追加されたEVモデル、『プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ』。 平井大介
ステランティス以外のフランス勢に目を広げると、同じ2022年にはルノーが、欧州では初のフルハイブリッドシステムを搭載したアルカナを日本で発売している。ルノーは5(サンク)やトゥインゴはEVにしているけれど、EV一辺倒ではない。
最近の日本人は、スイッチのように分かりやすい議論が好みで、欧州のEVシフトにハイブリッドで対抗する日本という図式を作って溜飲を下げているような感じを受けるが、欧州の中でも温度差は異なる。
フランスは昔から、国連の安全保障理事会でも米英と中露の間に立って、独自の立場を取ることが多かった。『戦略的自律』と言われる彼らなりのスタンスは、今も外交分野で貫かれているようだ。
EVシフトについても同じで、フランスは欧州委員会などEU全体の流れからは一歩引いた立場であり、むしろ日本のそれと近いことを、少なくともクルマ好きであれば理解しておいていいのではないかと思っている。
グレードは『GTアルカンターラパッケージ』
ここで紹介する『プジョーE-3008』も、昨年発売されたハイブリッド仕様の3008と基本的に同じボディにモーターとバッテリーを搭載したもので、パワー・オブ・チョイスの思想は生き続けていることが伝わってくる。
グレードはハイブリッドの最上級と同じ『GTアルカンターラパッケージ』。全長4565mm、全幅1895mm、全高1665mmのボディサイズも同一だ。ホイールベースが10mm長い2740mmなのは、パワーユニットの違いによるものだろう。

リアゲートの車名の文字が『E 3008』になり、『HYBRID』の文字がなくなった。 平井大介
外観はリアゲートの車名の文字が『E 3008』になり、『HYBRID』の文字がなくなったことと、ホイールのデザインが異なることに気づく。よく見るとフェンダーやサイドシルのブラック部分は塗装仕上げになり、タイヤ幅はワンサイズ太い235/55R19になっていた。
プジョーのおしゃれ番長と言いたくなる大胆な造形のインテリアはそのまま。ハイブリッドとの違いは、メーターパネルにイラストを使った充電容量の表示が入り、スライド式のドライブセレクターからM(マニュアル)が消えたことなどだ。ただしパドルは3段階の回生ブレーキレベル調節のために残されている。
床の高さやラゲッジスペースの深さなどは、ハイブリッド車と変わりなし。確かに520Lの荷室容量は同一だ。ラゲッジスペースのフロアが、斜めに立て掛けた状態で固定できるのは、相変わらず便利そうだった。
航続距離はWLTCモードで604km
プラットフォームは、シトロエンC5エアクロスやDS No8などにも使われる『STLAミディアム』。EVということではNo8と同じだが、こちらはAWDではなく前輪駆動。モーターの最高出力/最大トルクは157kW/343Nm、バッテリー容量は73kWh、満充電での航続距離はWLTCモードで604kmと、十分な値だ。
車両重量はエンジン車より500kg以上重い2160kg。これはリアサスペンションがトーションビームからマルチリンクになったことも関係しているが、加速に不満はない。発進停止のマナーも違和感はなく、このグループの電動車経験の長さを実感した。

メーター内のバッテリー残量を示すイラスト(写真は停車時のもの)。 平井大介
面白かったのはメーター内のバッテリー残量を示すイラストで、加速時はブルー、回生ブレーキではイエローで、前輪が仕事をしていることを示す。ちょっとクスッとさせる、こういう演出はフランスならでは。そしてパドルを弾くと、Dレンジの脇にレベルを示す矢印が追加されていく。
フローティングしたメーターパネル、助手席側から橋を架けるように後方に渡したセンターコンソール、8 色から選べるアンビエントライトの絶妙な色調などが織りなす、おしゃれな空間に身を置きながらのクルージングには、急加速では3気筒の唸りが気になることもあるハイブリッドより、こちらのほうが似合っていると思った。
ハイブリッドそれより、はっきり上級
ハンドリングはやはり前輪駆動っぽさがなくなって、ニュートラルに近づいた。かつての205や306あたりが備えていた挙動を取り戻したような感じもした。乗り心地は重量増のためだろう、かなり重厚になった。
直前に乗ったDS No8と比べると、タイヤの硬さが目立つようなことはなく、固めながらしっとりした、プジョーっぽい乗り味が体感できた。シートも固めであるが、サポートがしっかりしていて、アルカンターラのおかげで滑りにくい。これもプジョーらしい配慮だ。

E-3008の走りは、ハイブリッドのそれより、はっきり上級だと感じられた。 平井大介
E-3008の走りは、ハイブリッドのそれより、はっきり上級だと感じた。それでいて気になる価格は760万円で、国のCEV補助金を使えば、ハイブリッドの同グレードとの差は100万円以内になる。
自治体によってはさらなる補助金も用意されるので、充電設備が用意できるユーザーなら、十分比較対象になるだろう。パワー・オブ・チョイスの思想は今も生きていることを実感した。
