プルデンシャル生命

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 前代未聞の不祥事だ。プルデンシャル生命保険の社員100人超が、約500人の顧客から、詐欺などに当たる不適切な金銭受領を繰り返していたという。総額は約31億円。背景には、業績に応じて天と地ほど異なる給与体系があったとされるが、そんな同社の営業マンの特異な生態とは。

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被害総額は31億円

 プルデンシャルの設立は1987年。世界最大級の金融機関、米プルデンシャル・ファイナンシャル傘下の日本法人として、都市部の高所得者層を中心に顧客を獲得してきた。

 不祥事を公表したのは1月16日。元社員が2024年、詐欺容疑で逮捕された事件を受け、金融庁の指導の下で大規模な調査を実施した結果だ。

プルデンシャル生命

 経済紙記者によれば、

「架空の投資話を持ちかけたり、元本保証をうたう違法な金融商品を紹介したりと、社員が顧客から不正に金銭を受領していた数々の事例が、明らかになりました。調査対象となったのは91年以降で、約35年もの長きにわたる。被害総額は約31億円にも上り、その内の約23億円はいまだ返金されていません」

契約が取れなければ最低賃金に

 同社は不祥事の原因に、格差の激しい報酬制度を挙げた。日本の企業では考えられない、驚くべき社員たちの生態を知れば、なぜ不適切行為が頻発していたのかが分かる。

「全体で10人もいないと思いますが、トップレベルの営業マンは2億円超の年収を誇ります。その少しだけ下の年収1億円台については、およそ数十人いるといわれていますね」

 と、プルデンシャルの社員は語る。全国に約4300人いる同社の営業マンは、ライフプランナーと呼ばれており、雇用形態は正社員。もっとも、給与体系はおおむねフルコミッション(完全歩合)制で、実態は個人事業主とさして変わらないという。

「給与の上限がない代わりに、契約が取れなければ、国が定める最低賃金しかもらえません。経費も全て自己負担です。この仕事は人脈を広げるための接待交際費など、持ち出しが多い。経済的に豊かな生活を送れるようになる目安は、少なく見積もっても年収2000万円以上でしょうか。そのレベルに至っている営業マンは、ざっと上位3割前後だと思われます」(同)

やさぐれていく営業マン

 厳しい競争を勝ち抜く猛者がいる一方、会社を去る営業マンも多いという。

「最初の2年間は各人の経歴を踏まえ、初期補給金という固定給が支払われます。ただし、月を追うごとに減額され、最後は0円になる。それまでに自分が食っていけるだけの顧客数を確保しなくてはいけませんが、経験が浅いゆえに、なかなかハードルが高い。約半分の社員がこの2年間で辞めていきます」(前出の社員)

 何とか辞めずにとどまったとしても、思うような営業成績を上げられず、やさぐれていく営業マンも存在する。プルデンシャルの元社員はこう言う。

「不正に手を染める社員の多くは、成績の良くない営業マンでしょう。そもそも、稼ぐ人間は高度な金融知識を有している場合がほとんどで、悪事を働く必要がありません。例えば、相続対策で生命保険の活用法を指南するなど、真っ当な営業方法で信頼を得られるからです。そうした勉強をしていないにもかかわらず、一攫千金ばかり狙うふらちな社員が欲に溺れ、最後は顧客の金銭に手を付けてしまうのだと思います」

殺人容疑で逮捕された元社員も

 その極め付きは、元社員が殺人容疑などで逮捕された事件。プルデンシャルの営業マンだった男は大阪府高槻市の資産家女性と出会い、退職後に養子縁組を結び、生命保険をかけた末の2021年、彼女を殺害したとされる。相続した預貯金で散財し、ランボルギーニを乗り回した後の22年に逮捕されたが、留置所内で自殺を遂げた。28歳だった最期、所持金は約13万円しか残っていなかった。

「今回の不祥事は、これまでプルデンシャルが不良社員について見て見ぬ振りを続けてきた結果、膿が噴出したということです。営業成績が悪いのに、ベンツに乗るなど派手な暮らしをしている人間を、本来は事前に調査しなくてはいけなかったのです」(前出の元社員)

徹底した出来高制

 外資の生命保険会社は数あれど、プルデンシャルのように全ての営業マンに対して、徹底した出来高制を敷いている会社は珍しいそうだ。他社は多くの場合、固定給とフルコミッション制のいずれかを選択できたり、その中間のような給与体系になっていたりするという。

「不祥事を受けて今後、固定給が保証される給与体系を取り入れていく可能性があります。しかし、日本中から苛烈な競争に挑む人間が集うことが、プルデンシャルの強みです。仮にフルコミッション制がなくなれば、不良社員は減るかもしれませんが、優秀な営業マンは軒並み転職してしまうでしょう」(前出の社員)

 志半ばで夢破れ、闇へと堕ちていく営業マンを根絶できるのか。

「週刊新潮」2026年1月29日号 掲載