【アニメ大先生】切ない青春が大爆発!劇場版『チェンソーマン レゼ篇』
本コラム『アニメ大先生』は、「人生で大切なことはすべてアニメが教えてくれる」をテーマに、アニメを通じて得られる学びや気づきを綴る連載である。
早くも第9回。今回は、アニメを語らせたら止まらない! アナウンサー・八木美佐子が6度目の登場。今回取り上げるのは、ついに劇場公開を迎えた『チェンソーマン レゼ篇』。緊張感と切なさが交錯するエピソードに、八木アナがどんな想いをぶつけるのか? その熱量に、今回もご注目。
みなさんは、好きな食べ物を先に食べる派ですか? それとも最後まで取っておく派でしょうか? 私は断然、最後まで取っておく派です。ショートケーキは苺を最後に食べ、中華丼はうずらの卵……ではなく、ヤングコーンを最後に口にします。最後に取っておいた苺は、食べるまでは永遠にそこにあるのです。
そんな”最後派”の私にとって、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は公開前から悩みの種でした。原作を読み、「少年ジャンプ+」で連載中の第2部も追っています。だからこそ、楽しみにしていたレゼ編は、あの最後に残した苺のように――すぐには口にしたくない特別な存在だったのです。
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しかし、米津玄師さんの主題歌「IRIS OUT」の劇場映像MVを観た瞬間、私の覚悟が決まりました。なんと格好いい映像と音楽でしょう! 「映画館で観るのが正解! 正解!」と、心の中の魔人ビームが叫びました。思い立ったが吉日。特別編を観て気持ちを高め、その足で映画館へ。――結果は大正解。迷っている方がいたら、迷わずおすすめしたい作品です。
『チェンソーマン』のヒロインたちは皆、一筋縄ではいきません。マキマさんの底知れぬ雰囲気、パワーの自由奔放さ。そして今作のレゼは、まさに”魔性の女”。主人公デンジは彼女に翻弄され、「確定でオレのコト好きじゃん」と思うのですが、観客席からも「異議なし!」と叫びたくなるような存在感でした。
レゼは、デンジの「学校に行ったことがない」という異常な環境を浮き彫りにします。夜の学校に忍び込むシーンでは、静まり返った教室に漂う背徳感に胸が高鳴りました。雨で湿気のこもった教室の匂い……プール、お祭り、花火――夏に体験したかった青春がスクリーンに爆発していました。もっとも、私自身にそんな経験はなく、夜の学校に足を踏み入れたのはホラーゲームの中だけ。不思議なことに共学だったのにそんな記憶すらないのです。とはいえ、甘美な時間は長くは続きません。 そこからは物理的な爆発、怒涛のアクションが押し寄せます。
ジャンプ作品を振り返れば、主人公が”欲”に突き動かされるのは珍しいことではありません。悟空の戦闘欲、ルフィの冒険欲、両津勘吉の金銭欲――。デンジの「満腹になりたい」「胸を揉みたい」「普通に暮らしたい」といった願いは、どれも小さく等身大。でも、それこそが彼を動かす原動力であり、行動にリアリティを与えています。人間は、立派な大志よりも、ささやかな欲望によって前へ進めるのかもしれません。
作中では、マキマさんが「映画は十本観て一本面白かったと思えればいい。その一本に人生を変えられることもある」と語ります。私にとって『レゼ篇』は、まさにその一本でした。小さな反省も込めて言うなら――、だから私は、熱に浮かされたように、映画を題材にコラムを書いてしまうのかもしれません。
映画館を出たとき、私は”最後に残しておいた苺”を食べ終えたような、甘酸っぱさと、ほのかな寂しさを感じていました。
『チェンソーマン レゼ篇』は、儚い青春を通して、等身大の欲望さえ抱きしめたくなる作品です。
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