パワハラ・セクハラ被害を防ぐ第一線に立つ産業医・朝長健太からの提言【ガバナンスと産業医の関係】
したがって、パワハラ対策で一番重要なのは、このギャップをどう埋めるかということになります。そこで私が担当している企業では良好事例が書かれているハウツー本を会社で購入し、回し読みをしながら良好事例の共有化を図ってもらっています。
良好事例とは、上司が部下に対しての言い方をこれまでの言い方からこう言い換えましょうといった事例のことです。この積み重ねしかありません。
─ パワハラのような事案は昔からあったと思うのですが、パワハラという言葉が登場してから社会問題化しましたね。
朝長 ええ。起きている現象は昔から変わっていません。むしろ昔より改善されています。ところが、自分が嫌だと感じることを言語化するツールとして、ハラスメントという言葉が生まれ、非常に便利になってしまったのではないでしょうか。
言葉が生まれて皆が今まで感じていたことを言語化するようになってきたと言えるでしょうね。
情報提供と対策がポイント
─ 言語化されたことで誰もが意識するようになったと。
朝長 そうです。言語化された以上、国としても対策をせざるを得なくなったのです。そして、国が会社に対してパワハラ対策を義務付けるようになったのですが、そのポイントは2つ。
1つは情報提供。もう1つが訴えがあったときの対策です。この2つが義務付けられています。
ですから経営者は会社としてのパワハラ対策を情報発信し、相談窓口を設置する。相談が来た場合は素早く早期対応して再発防止を講じることが責務です。その際、先ほど申し上げたように良好事例を参考にしながら解決するのが一番好ましいです。
─ 企業では定期検診を行っていますが、ストレスで悩む人にはどんな傾向がありますか。
朝長 私の場合は定期健診で異常があったときに個別で面談をするのですが、ストレスを感じている人は食事の量が増えて血糖値などの数値が上がっているケースが多いです。逆に食が細るケースは病院に行くことを勧めています。
食べられる人はエネルギーを摂取できているという点でまだ大丈夫なのですが、食べられない人は注意が必要です。身体にエネルギーが入ってこないからです。
─ 大企業と中小企業との対策の差は感じますか。
朝長 特に中小企業の場合は、何をしていいか分からないというケースが多いです。総務の担当者が国の資料を読んでも何をすべきかが分からず、他にも仕事があって結果として対応が後手になる。ですから、産業医の仕事はそういった部分をしっかりフォローすることになります。
