三井住友銀行が開発した新・融資手法、「日の丸半導体」復活の流れの中で
「新しい発想や手法で一段踏み込んだリスクテイクを行い、日本の半導体産業の再興に貢献する」と話すのは三井住友銀行(SMBC)副頭取(ホールセール部門統括責任役員)の金丸宗男氏。
日本は今、半導体業界の復活に向けて動いている。1980年代に世界を席巻し、デバイスで世界シェア5割にまで達した日本の半導体だが、米国との貿易摩擦や、市場の変化への対応遅れ、韓国などライバルの台頭といった複合要因で凋落。
それを今、政府は2030年度までに半導体とAI(人工知能)領域に10兆円規模の公的支援をすると同時に、それをきっかけに今後10年間で官民合計50兆円を超える国内投資を実現すべく旗を振っている。
そんな中、2024年12月に悲願の上場を果たしたのが半導体メモリー大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリHD)。同社は東芝の半導体部門だったが、本体の経営危機を受けて分離・独立し、17年に発足。20年頃から上場を計画していたが、米中貿易摩擦やコロナ禍などで延期が続き、今回4年越しの上場となった。
キオクシアはこれまで、メガバンクなどの融資を受けて設備投資や研究開発などを手掛けてきた。上場はその資金調達の多様化を目指してのもの。 このキオクシアの事業を支援するために、これまでにない新たな融資手法を開発したのが、メガバンクの一角・SMBC。
一般的に法人向けの融資というと、企業そのものへの融資の他に、その企業の事業の収益性を評価して融資する「プロジェクトファイナンス」などがあるが、今回開発したのは「半導体製造設備」を対象にしたファイナンススキーム。これを三菱UFJ銀行などと設定した1200億円の融資枠に活用する。
SMBC、グループの三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の子会社・SMFLみらいパートナーズ、設備や在庫などの「動産」の価値評価に定評のあるゴードン・ブラザーズ・ジャパン(GBJ)の3社で連携する。
SMFLみらいパートナーズとGBJが共同で設備評価をし、SMBCはその価値評価を受けてファイナンスを組成する。さらに、そのファイナンス期間中はSMFLみらいパートナーズが設備のモニタリングを行う。
キオクシアは前述の政府の方針もあり、高性能メモリーへの設備投資に対して約2400億円の補助金を受けている。企業としては助かるわけだが、設備が補助金の対象となると、リースファイナンスに取り組めなくなるという課題が一方で浮上。
しかし、キオクシアにとって設備に対するファイナンスはどうしても必要なもの。そこでSMBCはリース以外の融資手段を探ると同時に、SMFLも参加できるスキームはないか?と知恵を絞った。
だが「『補助金が付いている設備はファイナンスの担保にできない』という話が、銀行業界では〝都市伝説〟のように伝えられていた」(SMBC担当者)。そこで、その真偽を確認すべく経産省に赴いたところ「条件さえ揃えば可能」という回答。
その「条件」を揃えるための実務面では、2つの重要ポイントがあった。それは半導体設備という「動産」の評価と、担保に取った場合の期中管理。そこに設備は本当にあるか、といったことから始まり、きちんと稼働するか、改造されていないかなどチェックすべき項目は多い。
SMBCには評価や期中管理のノウハウはなかったが、SMFLみらいパートナーズは半導体製造設備の中古売買事業を手掛けており、動産ビジネスで定評のあるGBJとは他の事業ですでに連携していたことが幸い。
