在日中国人は「日本の中華」に満足していない…日本に移住した富裕層たちが本格帰国を始めていた…!
日本では昨年ごろから富裕層が日本に「潤」(ルン=移住、移民などの隠語)してくることがメディアを賑わせるようになったが、それは富裕層だけにとどまらず、すでに中間層の会社員や公務員などにまで広がってきており、中国から逃げ出す人が次から次へと増加している。
中国人に限らず、海外から日本に移り住んだ在日外国人と近隣の住民(日本人)のトラブルも取りざたされるようになり、国内の不安は高まっている。
そんな中、最近では、それとは逆の現象も起きていると感じた。つまり、中国から日本に移り長年住んだ後、再び中国に本格帰国するケースだ。
前編『いま中国に本格帰国する「在日中国人」が増加していた…日本に長く住む中国人が抱える「意外な悩み」』で紹介したように、都内の大手企業を定年退職したばかりの男性、王さん(仮名)は1年に3〜4回のペースで中国に帰国するようになり、改めて、故郷のよさを感じるようになった。長らく日本生活をしてきた王さんにとって、中国と日本の暮らしは大きく異なっていたという。
日本とも中国とも異なる存在に
王さんは都内でも、中国人の仲間と、いわゆるガチ中華に足を運ぶことがあるが、「味は全然違う」と断言する。むろん、日本風の味付けの中華料理よりはマシだが、日本で今もてはやされているガチ中華は、上海の中華のレベルの足元にも及ばない。
今の中国の料理のレベルは非常に高く、上海近郊の寧波など、他の地方都市にも出かけて、地方の海鮮料理にも舌鼓を打っているそうだ。
私は以前、『「スーパーの野菜は解毒作業が必要』…在日中国人が帰省して衝撃を受けた「劣悪な食品事情」』という記事で、中国のスーパーの劣悪な食品事情について紹介したことがあったが、この記事は吉林省の話だった。
王さんが住む上海とは距離的にかなり離れており事情は異なるかもしれないが、王さんは気にならないようだ。それよりもむしろ、中国の野菜や果物、新鮮な海鮮の種類の多さ、新鮮さに喜んでいるようだった。
38年前に来日したときには、日本のスーパーはきれいで、食品は整然と並べられていると感じた。種類が少ないのも、路上の市場がないのも、中国とは違う国なので、「これが当たり前。こんなものだろう」と思っていたし、日本での生活に満足していた。
しかし、自分が60代後半になり、母国に頻繁に帰れる立場になると、徐々に考え方が変わったようだ。
私は『日本のなかの中国』で、在日中国人の生活ぶりなどを多く取り上げているが、長年、日本に住んでいる彼らは「日本人」とも「中国人」とも異なる存在になりつつあるのだと痛感させられる。
最後に、王さんは、最近の富裕層の日本移住についても語り出した。王さんが住む都内のマンションは、比較的戸数の少ないタワーマンションで、住民の中には中国人もいるという。とくに深いつき合いはしていないが、他のタワマン同様、住民の中国人同士、中国のSNSであるウィーチャットでグループを作り、そこで、中国語で情報交換しているので、王さんもそれを見ているようだ。
内容は主に東京での生活情報が中心で、来日間もない彼らが日本での慣れない暮らしについてグループチャットで聞くことが多いそうだが、王さんは彼らを見ていて、感じることがあるという。
「彼らは、お金はあるでしょうね。お金があるから、日本に移住してくることができる、恵まれた立場です。でも、お金はあるかもしれないが、故郷を捨ててきているわけですね。故郷を捨てて日本に移住しようと決断する気持ち。そこには複雑なものがあると思います。
それに、都内には中国人が大勢いて、ガチ中華もあって、生活に不自由はしないかもしれないけれど、もちろん、故郷の中国とは違うわけで、いろいろ我慢していること、ストレスもあるのでは、と勝手ながら想像します。屋台の安い揚げパンも、日本では食べられない。故郷を捨てる必要がない日本人には理解できないことかもしれませんが、やはり故郷は恋しいものではないでしょうか。いま、私はそれをひしひしと感じているところです」
最後に王さんはこう語ってくれた。