パクリと揶揄された「やっぱりステーキ」が急成長。大量閉店で打撃の「いきなり!ステーキ」と明暗分かれたワケ
売上・利益とも前年を大きく上回っており、売上が13.8%増、利益が69.3%と順調に伸ばしている。物価高騰の中、なかなか値上げに踏み切れずに原価圧迫で苦しむ店が多い中、適切な価格政策と原価管理の徹底強化で原価率を2.3%抑制している。営業利益率は2桁台(10.1%)と大型店ながら極めて収益性は高い。財務の安定性においても、自己資本比率81.5%と盤石である(2023年度決算)。
時間帯別客数構成比(1月〜9月平均)はランチ60%、ディナー40%である。ファミリー客をターゲットにしている店だけに、夏休みやゴールデンウィークなど長期連休がある月は、ディナー客の比率が高くなっていた。
炭火焼きによるステーキやハンバーグを提供される時のシズル感がワクワク感を持たせてくれる。また、各店にかまどを設置してあり、そこで炊き上げ提供される新潟県魚沼産のコシヒカリは最高の味で、ご飯を大かまどで炊きあげ、顧客に提供しており、これもまた人気だ。
店舗スタッフによれば、かまどならではの強い火力と高い保湿性が味の違いを生んでいるという。確かにご飯が見た目でも光っており美味しい。加えて、競争優位は何といっても、自慢の常時20種類ある新鮮サラダバーだ。営業開始時間の早い時間帯に行くと、お客さんが一気にサラダバーに向くので、サラダバーには長蛇の列ができている。
女性だけでなく、健康志向の男性にも人気で、価格と内容のバランスから見てもコスパが高い店である。 オープンキッチンを店舗に設置して、調理するコックさんの華麗なる仕事ぶりが客席から見られ、演出にも力を入れており楽しい雰囲気を醸成している。
◆“悪ふざけ投稿”騒動で閉店した店舗も
一斉休業がある店は業績を伸ばしているとの定説があるが、ブロンコビリーも全店の一斉休業を設けている。全従業員の働きやすい環境づくりのためにも様々な努力をしている。そのきっかけとなったのは、過去(2013年)に当時相次いだSNSでの“悪ふざけ投稿”騒動だ。ブロンコビリーではアルバイト男性がキッチンの大型冷凍庫に入り、結果としてその店舗は閉店せざるを得なくなった。
そこから社長が、人材育成の大切さを思い知り、人が会社の未来を決めることを改めて確信したそうだ。企業理念が現場に浸透していなかったことへの反省からも、現場の若手社員の悩みを直々に聞く目的で、酒を酌み交わしながらの合宿研修を毎月実施。賃金以外での労働意欲も喚起し、店内の一体感を醸成して従業員満足=顧客満足度を徹底させている。
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贅沢で豪華な食事とされたステーキは、お祝いごとなどハレの場でしか食べる機会がないのが普通。それを日常食にしようと業態開発してきたファストステーキ店やステーキファミレス店は、微妙に業態が異なる中、切磋琢磨して市場に競争と刺激を与えている。
外食を取り巻く環境に逆風が吹く中で、お客さんに美味しいステーキをリーズナブルに食べられる努力を重ねている各店の今後の成長に期待したい。
<TEXT/中村清志>
【中村清志】
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan